第64話 学園祭 その1①
学園祭の準備が始まった。学園祭は中等部と高等部が同時に行われる。なので一大イベントだ。
新山学園の学園祭は、中高合わせてクラスが54クラスある。各クラスある程度の重複を許容しても出し物のネタにも限度がある。
ましてや高等部は各部活も出し物を準備するため出し物は相当な数になる。なので、
——— そして今年の学園祭は私達、中等部の話だ。
ホームルーム。Aクラスの教室にBクラスの生徒が椅子を持って入って来た。
皆、後ろの出入り口から入って来て、入って来た者から順に前から椅子を置いていくのだが、藍はそれを無視して前の出入り口から入り、私の隣に椅子を置く。
私の席は席替えで一番前になった。しかも教卓の真ん前だ。因みに真後ろはアホ翔馬だ。
今回のようなクラス合同の授業では、私と藍は必ず隣の席に座る。
体育では身長が同じだから常にペアを組む。
私達の仲の良さは両クラス周知の事であり、今回の藍の単独行動を誰も咎める者は居ない。
それに私達が違う子とペアを組むと、「何であの子真壁さんと組んでんの?」と、組んだ子が後で周りから何を言われるか分からないし、当然、言われたくも無い。なので私と藍がペアを組む事は周りも望んでいる事なのだ。
今年の学園祭の中等部二年A・Bクラスの出し物は『ダンボールアート』だ。これは前回のホームルームで決まった。
出し物も決まって準備が始まる。
「それじゃあ今日は班を決めて何を作るかを決めて下さい。三案出して重複しないか確認します」
班の数は一班六名の計十班だ。
一つの教室で二クラス分の人数が一斉に打ち合わせるのは流石に窮屈だ。なので打ち合わせは二つの教室を使う。
班の決め方はその場にいた周辺の人達で組まされたのだが、私と藍、そして成宮と滝沢君は一旦班編成から除外された。
私達は四人はソフトテニスの地区大会で優勝したので十一月の上旬に県大会が控えていた。なので部活に専念する為、放課後は文化祭の準備にあまり顔を出せないのだ。
班は一つの班にAクラス三名、Bクラス三名、且つ、男女の数も半々になるようにしている。
その条件を満たすように、私達も各班に一人ずつ割り振られた。
そして打ち合わせが始まった。
藍と滝沢君の班はBクラスに移動だ。
そして私の班も机を寄せて打ち合わせを始めるが皆ソワソワしている。何となくテンション高めだ。
「やった! 真壁さんと同じ班だ。宜しくね」
Bクラスの子が早速話しかけて来た。
「宜しくお願いします。でも御免なさい。放課後あんまり協力出来なくて……」
私はいつものように『壁』を作った外面のいい対応をする。
隣のグループには翔馬がいた。ちょっと横目……と言うか座席の位置的に真正面なんだけど、見ると翔馬は同じクラスの男子にボヤかれていた。
「お前かよ……何で、真壁さんじゃなくて成宮なんだ……」
「ま、俺を真壁っちと思って……な」
「『な』じゃねぇって、お前自身、真壁さんと組みてぇんじゃねぇのか?」
「いや、俺はもう心が通じてるから……心のパートナーってやつだ。だから同じ班じゃ無くてm「アホしょーまー!」
私は遠くから翔馬の言葉を遮った。
私の怒号に私の班と翔馬の班にいるBクラスの子達が目を丸くした。
「お前いつ私が心のパートナーになった!」
「え? 新人戦優勝してから?」
「はぁ? お前のパートナーは滝沢君だろ! 私じゃ無い!」
「え? だってアベック優勝だよ? 十分パートナーじゃん。それにこの前、愛のラリーも済ませたし……」
「アホー! 何がアベック優勝だ! それに『昨日結納済ませました』みたいな感じでラリーの話してんじゃねー! アホ翔馬! またコート上で
一気に沸点が下がった。同じ班のクラスメイトの子が私を宥める。当然、周囲にいるBクラスの子は驚く訳で……。
「あの……『アホ翔馬』って、彼の事だよね? って、真壁さんのこの剣幕……」
この言葉に翔馬が説明するが……
「そう。真壁っちホントは俺の事『翔馬♡』って呼びたいんだけど、照れちゃって頭に『アホ』付けて誤魔化してんだよ。可愛いだろ?」
やっぱりアホだ。何故煽る! アホはアホだからアホなのだ!
「お前馬鹿か! いや、アホか! 言葉のまんまだよ! アホ翔馬! アホだからアホって付けてんだ! アホか! お前はアホなのかー! ——— ンフーッ! ンフーッ!」
私の声は教室中に響き渡った。
Aクラスの生徒は聞き慣れた言動に無反応……っていうか笑ってる。
Bクラスの生徒は目を丸くして一斉に私を見る。Aクラスの子に小声で私と翔馬の事を聞いている子もいた。
「あのぉ……真壁さんって結構……怖い子?」
班内でも同じく問い合わせ殺到中だ。
「ううん、成宮君にだけだ。ちょっと前まで『成宮』って呼んでたけど、最近『アホ翔馬』に昇格したみたい」
「昇格じゃ無い! 降格! コイツのアホさ加減に呆れてんの」
「って言いながらも成宮君、真壁さんの連絡先、唯一知ってる人だもんね」
「ちょっ、それは言わないで……」
人の口に戸は立てられないとは言うけど、隣のクラスにまで伝播しちゃった。
「え! そうなの?」
「ちょっとした事情で……」
「弱み握られたとか?」
「えーっと……逆……かな? 弱み握られそうになったの助けられたって言うか……」
「あれは理由を知れば誰が見ても正当な報酬だから……尤も皆は羨ましがってるけどね。しかも成宮君、全然連絡してないみたいだし……彼は甲斐性無しかな?」
「……そうなんだ」
すると隣から翔馬が『だりぃ』感出して口を挟んできた。
「用事もねぇのに連絡なんてする訳ねぇじゃん。大体、メッセージって何話せばいいんだよ。『今日も可愛かったよ』なんて当たり前の事書いたってスマホにログが残るだけで真壁っちの記憶に残る訳でもねぇ。違うか?」
「まぁ、確かにね。成宮君って口では色々言う癖に行動は結構控えめだよね」
「まぁ……そこは……甲斐性無しでいいや」
答えるのが面倒になったのか、翔馬は最後、自分を卑下して言葉を締めた。
でも確かに翔馬は私を揶揄する事は言っても何かを要求してくる事は無い。誘う事すらしてこない。
そして私自信の事で今気付いたが、私はコイツに対して『否定』はするが『断る』と言う行為をした事がない。
そう思うとコイツの言動と私の行動を考えた時、ちょっと不思議な感じになった。
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