第63話 謎の二人②

 ——— 土砂降りに見舞われた翌日。

 私達はびしょ濡れになりながらも風邪を引く事なく、いつもどおり学校に来ていた。

 そして、朝、いつもどおり席に座ると私の周りから気になる話が聞こえて来た。


「ねね、メッセ来た?」

「来た来た、写真でしょ?」


 答えた女子はスマートフォンを取り出して何やら操作している。どうやら届いた写真を表示させてるようだ。


「これ凄いよね……何この二人。この子メッチャ可愛いし男の子の方も前髪チョンマゲにしてるけど凄いカッコいいし……うちの制服着てるけど、こんな人、うちの生徒に居た?」

「居ないよ。居たら学園中の有名人だよ。だってこの二人、どう見ても学園内……この世のイケメン美少女超えてんじゃん」

「この女の子の髪の色って栗色? 茶髪なの? なんか顔立ちハーフっぽいけど……染めてんのかな?」

「ハーフの子何人か居るけど……確かにその子ら可愛いけどここまで可愛くは……いや、十分可愛いよ。でも流石にこの写真の子は次元が違うって」

「うん、何だろ……この子を表現する言葉が無いね」

「しかし二人とも綺麗……(うっとり)」

「ホント……(うっとり)」


 私は当然『写真見せて』と言う事は出来いけど、話の内容から自分と宗介の事だと直ぐに分かった。


 ——— お昼休み。私はおかずトレードをしながら宗介に話しかける。


「宗介聞いた? 私達の写真」

「騒いでたな。写真は見てないけど……あ、それ持ってく?」

「思いっきり見られてたね……はい、これと交換」

「それ? まいっか……ただウィッグ外してからの写真しかないみたいだから大丈夫っぽいぞ」

「こういう時、ボッチって情弱なんだよねぇ……」

「妹達も誰ともID交換して無いから自分らにメッセージ届いてないだろ。多分、周りの人に見せられてる感じか?」

「だろうね。奈々菜ちゃんなら、スマホに映した写真をスマホで撮って来そうだけど……期待は薄い ———」


 ——— ピコン♪

 二人のスマートフォンにメッセージが届いた。


「流石奈々菜ちゃん出来る子。って、あれ? 普通にメッセージで受け取った写真みたい。誰かとID交換したのかな?」


 写真は何枚かあって、どれもウィッグを外してからと、髪を纏めてからのものしかなかった。どうやら立ち往生していた車から撮ったものらしい。

 家に帰ってから奈々菜に油断しすぎだと怒られた。



 ※  ※  ※



 ——— 最近、『深川芹葉』って女が俺の周りをチョロチョロしてて鬱陶しいんだが……まぁ、綺麗な子だわな。

 悪い気はしない。

 ただ、俺はどんな女でも俺がやる事を邪魔する奴は嫌いだ。嫌いなんだが……深川は全然俺のやる事を黙って手伝う。

 黙ってだ。

 ニコニコしてるだけで一言も喋らねぇ。

 何なんだ! いい子じゃねぇか! 

 しかも気付いたら俺から声掛けてた。思わずメッセージアプリのID交換しちまったぞ。

 何なんだあの女!


 ——— ま、今日も部活が終わって家で一人寛いでいる訳だが……すると一通のメッセージが入った。

 俺にメッセージ寄越す奴なんて深川しか居ない。というより深川しか俺のIDを知らない。

 どうせ『お疲れ様』か『おやすみ』の一言なんだろ?

 いつも思うが端的でだ。

 ただ、今日は珍しく写真が張り付いていた。


「あん? ……なんだこの写真……」


 俺はタップして画面を表示させる。

 写真には二人の男女が写っているが……。


「珍しいな、こんなのよこすなんて」


 送られて来た写真はうちの制服を着たメチャクチャイケメンな男と、深川よりも綺麗な……いや、可愛い……ん? なんか日本語で表現できねぇな……兎に角可愛い女の写真なのだが……。


「ん? こいつ……あぁ? ……あ! 何でこいつこの学園に居るんだ? そもそも見かけりゃ気付くだろ! 噂も無ぇし……名前なんだっけ? 確か……な……な……」


 後で知るがコイツの名前に一文字も『な』なんて入っていなかった。

 兎に角名前は忘れちまったが、顔は今でもハッキリ覚えてる。

 俺が中学時代、優勝した大会だが、唯一相手だ。

 試合も腑に落ちない勝ち方だ。

 相棒と二人掛かりでやっとしがみ付いて、試合の最後の最後で誰かにぶつかったボールが偶々ブザービーターでリングに入っただけの完全にマグレ優勝だ。

 あの時の優勝は監督を始め、チーム全員、誰一人喜んでいなかった。

 確かコイツの中学って全然南の方だよな? なんで……って俺も人の事言えねぇか。

 でも何でバスケ部入んねぇんだ?

 ま、正体隠してるみたいだし、なんか事情があるんだろ。俺にも事情があるしな。

 深川にもこの事は内緒だな。



 ※  ※  ※



 学園内での『幻のイケメンと美少女を探せ!』は中々収束することが無くクラスマッチが終わってからも暫く話題になって居た。

 斯くいうクラスマッチだが、俺は何気に翠の卓球を見に行った。

 翠は勿論だが相手もド素人で、殆ど『ピンポン』な試合展開で、ほのぼのとしたものだった。温泉卓球に近いか? 当然試合は負けている。

 バレーも見に行った。試合は接戦で、翠が出場する余裕は無かったようだ。

 お陰で翠は出場する事なく終わった。

 ただ、結構な人が見て居たので出てたら確実に発作が起きていた。

 そして俺だが、バレーは終始ブロックっぽい事をやって可もなく不可もない動きをして目立たず終わった。試合は初戦で負けている。

 バスケではパスを貰ったらドリブルすることなくすぐにパスを出して一試合は勝利に貢献。そして二試合目で負けた。

 結果、目立つ事なく体育祭は終了した。

 ただ、体育祭は全校生徒を目にする数少ない機会だ。皆スマートフォン片手に『例のカップル』を探すという、ちょっと異様な雰囲気もあった。

 そして、期末テストの勉強が始まるとその話題も収束した。


「もう少し注意しないとダメだね」

「そうだな。ま、簡単には俺らのところには辿り着かないだろう」


 ——— そして期末テスト結果は中間テスト同様、俺が満点首席でまた注目を浴びるが、その注目もその日だけだ。翌日には掲示板を見る奴なんて殆どいない。

 大体自分の学年の首席の名前なんて同じクラスの奴でもない限り覚えてないだろ? そんなもんだ。

 尤も、二名程、しっかり名前を覚えている奴がいたようだが俺も翠もそんな事は知るはずもなく……。



 ※  ※  ※



「また桜木さんか……」

「手強いね。彼女の点数も満点に近いもんね」

「真壁君も目標だけどその前に桜木さんに追いつかないと……」

「芹葉がんばれー」

「そう言う来羅も結構悔しそうじゃない?」

「分かっちゃった?」

「何年来羅と付き合ってると思う?」

「四年?」

「正解」


 ——— 十月。学園祭の季節だ。その前に学校を震撼させる出来事が起きた。


「ねぇ! ちょっと聞いた? 深川さんと柳生君、付き合い始めたらしいよ」

「マジ? やっぱあの二人かぁ……ワンチャン私に有るかと思ったんだけどなぁ……」

「「ないない」」

「有るわけないじゃん。接点すら無いのに」

「で、どっちから告ったの?」

「噂では流星君からだって」

「うっそー! なんか深川さんから行きそうだけどね」

「順序としては深川さんから近づいて行ったみたい。で、柳生君が告ったって」

「深川さん策士だ。告らせたか……」

「深川さんそんな計算高い事しないと思うよ。結構天然さんなところあるからね」

「だねぇー、この前なんてハンカチ誰かに貸そうとしてポケットから出て来たのが風呂敷だったの見た事あった」

「何それ可愛い。確かに風呂敷ポケットに入るけどさ……えー!」

「ま、私達には縁の無い方々だね」

「そうだね」

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