第49話 お盆だから爺ちゃんちに来た①

 ——— お盆だから家族皆で実家に来ていた。車で来たのだが、九時前に着いた。

 勿論、桜木家も一緒にマンションを出ている。

 着いて早々墓参りに行った。歩いて行ける場所なので子供達だけでお墓に向かう。俺と奈々菜は毎年の事だ。

 翠は素顔だ。一応、帽子は被っている。

 実は翠達、お墓に行くのは初めてだと言う。この辺の冬は風が強いから外を歩くのも結構大変らしい。

 お墓に着くと何組かの家族がお墓参りをしていた。服装がちょっと小綺麗で、明らかに地元の人じゃない。ただ、俺は気にしないでいた。この時期この土地にいる人は皆、俺の顔の事は殆どの人が知ってる。


「うわぁ、眺めいいね」

「だろ? 初めてこの景色見た時、死んだらここの墓に入りたいって素直に思っちまった」

「私も入りたーい」


 ——— 何だろう……高校生がする会話なのか?


 『うぇーい♪』なテンションの高校生がこんな会話をしてしまう程の景色。

 お墓の場所は実家よりも少し高台にあって海が一望できる。海の手前には漁港も見えて『幽霊になって動けないならこの場所に居続けたい』と思うような景色が目の前に広がっていた。


「風が気持ちいいけど、冬は強そうだね」

「そう……なのか?」

「うん。ここの冬って結構風強いんだよ。ここ、風通し良さそうだからかなり強いと思うよ」

「なる程……」


 俺達は墓参りが終わり家に向かうと、お墓の通路で人とすれ違う。当然挨拶をするわけだが、


「海苔干しのトコの……えーっと宗介君だったか? 今年も帰ってきたな」

「はい」


 俺はこのおじさんが誰だか知らないが知ってるテイでハキハキ返事をする。

 おじさんの後ろには奥さんと中学生位の姉弟が立っていた。


「春ちゃんは?」

「家で野球見てました」

「何だ、あいつ『野球なんてやるもんじゃねぇ』なんて言ってたくせに」

「やるのは嫌いだって言ってましたけど、見るのは好きらしいですよ」

「はは、あいつらしいな。そう言えばそっちのお嬢さんは?」

「あー、『キシちゃい』んトコのお孫さんです」

「おおー! 武ちゃんの!」

「こんにちは。翠です」

「藍です」

「ん?」


 おじさんは藍ちゃんを見て動きが止まった。奈々菜と同じ顔だからだ。


「あれ? 春ちゃんの娘……」

「はい」

「武ちゃんの……」

「はい」

「何で双子?」

「ははは、双子じゃ無いですよ。親父もお袋もお互い自分の娘達見てビックリしてました」

「はっはー! アイツら何かしらやってくれんな。まさか、長女も帽子取ったら宗介君みたく超美人だったりしないよな?」

「…………」

「……あれ?」


 おじさんは『そんなわけないじゃ無いですか』の言葉を期待していたようだが、俺達の気不味い空気に顔が『ホントに?』ってなった。

 俺は翠に目を向けた。

 翠も初めての人に帽子を被ったままの挨拶は失礼だと感じていたようで、ゆっくり帽子を取った。


「——— !」


 当然、おじさんとそのご家族は翠の素顔を見て固まった。一応、翠は申し訳無さそうな笑顔で応える。

 するとおじさんの後ろから来たお爺さんとお婆さんが驚いた声で俺達に突然話しかけてきた。


「婆さん婆さん! キシちゃんわががえってっぞぉ!」

「何だべ爺さんなーにまだよめっ事……なんだ……キシちゃんいぃづわがげーった? ……あぁんだ? ……あぁ、孫だきでだの?」

「はい。こんにちは」

「なぁにおばちゃん、キシちゃんわげどぎこんなきれいだったのすか?」

「きれいなんでもんでねがすぅ。嫁っこさきだどぎ喜寿っつぁんどっから攫っできだって、村中騒ぎさなったんだがら」


 話がなんか違う方向に行き始めたので俺は一声掛けてこの場を去る事にした。


「それじゃあ、親父も待ってるで」

「おう、んじゃ春ちゃんに『塩田しおた』んとこの『とおる』が飲みに来いって言ってたって伝えてくれ」

「はい」


 俺達はその場を離れた。

 正直、最後、何を話しているか分からなかったが、翠は分かっていたようだ。


「な、あれなんて言ってたんだ?」

「『キシちゃん若返ってる』ってお爺ちゃんがビックリして、お婆ちゃんが『お爺ちゃん何ボケた事言ってんの。あれ? キシちゃんいつ若返ったんだ、あぁ、孫が来てたんだ』って。それでおじさんが『キシちゃんこんなに綺麗だったんですか?』で、『お婆ちゃん嫁に来た時、喜寿郎きじゅうろう爺ちゃんがどっから誘拐してきたんだって村中騒ぎになった』……って、こんな感じかな?」

「なるほど。翠の婆ちゃんって翠にそっくりだったんだな」

「そう言えば写真って見せて貰った事無いや」

「だね。帰ったらお婆ちゃんに見せて貰お」


 確かに翠の婆ちゃん、うちの婆ちゃんに比べて可愛らしい感じするもんな。



 ※  ※  ※



 はお婆ちゃんにお墓での出来事を話した。


「ほぉ、塩田の透もけぇって来でだんだ。あそごの孫だ、藍どおんなじでねがっだがな?」

「うん、お姉ちゃんそんな感じだったね。お婆ちゃん『塩田』って何?」

「んぁ、むがしそごのいぇ昔、そこの家塩の田んぼやっでだんだ塩の田んぼやってたの。んで、ほんどは『えんでん』なんだげど本当は『えんでん』って言うんだけどかだんのひでぇがら言いにくいから『しおだ』ってみなだいっでんの『しおた』って皆言ってるの

「へぇ、面白いね。そう言えばお父さん、その塩田の透さんが飲み来いって言ってたよ」

「おぉ、んじゃ今夜行ってくっかな。稜ちゃん行ってきていい?」

「いいよ。丁度おかず一人分足んなかったから」

「カー! んじゃ春輝誘って行ってくっか……よっこらしょ。んじゃ墓参りして酒買ってくっかな。稜ちゃん行こ」

「はーい」


 お父さんはお母さんの事『稜ちゃん』って呼んでる。


「んーだばちょっどまっでろ。写真持っでくっがら」


 お婆ちゃんは床の間に写真を取りに行った。暫くして一冊の古い本と箱を持ってきた。

 本はアルバムだった。アルバムを開くとセピアカラーの白黒写真が紙にノリで貼り付けられていた。そして箱の中にはアルバムに貼られていない写真が沢山入っていた。

 私と藍は紙が傷まないように優しくアルバムを開いて行くが……。

 

「あれ? お姉ちゃん?」


 藍が写真に写る女性を見て一言漏らす。

 正直、私自信『私、着物にモンペ履いて写真なんて撮ったことあったっけ?』と思った程だ。

 似てる。

 お婆ちゃん、私と瓜二つだった。

 

「はぁー、さっきのお爺ちゃんが若返ったってビックリしたの分かったよ」


 ——— 次回水着回。エロ要素無し!

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