第37話 連休で爺ちゃんちに来た②
——— 俺達は『自然な不自然』を感じながら列車に乗り、そして目的の駅で降りた。
駅は無人駅で誰も居ない。
観光客が来るような駅でも無い。
俺は駅のホームで髪を縛って前髪もカチューシャで上げた。
「え? 宗介さん顔出したまま歩くの?」
「ん? ああ、俺、こっちじゃ結構知り合い……って言うか、まぁ、向こうが一方的に俺の事知ってるだけなんだけど、顔出して歩いてても全然な感じなんだよ。寧ろ顔隠してた方が不審者になっちまうな」
「ほぇー」
俺に話に翠さんが変な返事で返す。
駅を出ると四人は同じ方向に歩き始める。少し歩くと、地元の人とすれ違う。知らない人だが『こんにちは』と普通に挨拶をする。すると、
「お? 海苔干しの。なんだ、連休で来たか?」
「はい。こっちの地方に引っ越してきて、此処も近くなったんで」
——— 少し挨拶程度の会話をし、その場を去る。
「宗介さんこっちじゃ有名人だ」
「まぁ、夏祭りとかでも子供の頃から毎年顔出してたから皆この顔知ってんだよ。祭りって言っても地元出身の人間しか顔出さないような小さい祭りだけどな」
「なる程、ところで『海苔干し』って呼ばれてたけど……」
「爺ちゃんとこ、昔、海苔干してたんだよ。で、付いた屋号が『海苔干し』ってわけ」
「うーん……また分かんない言葉が……『屋号』って?」
「ホントの意味での屋号じゃ無いんだけど、この辺の家って家そのものに名前付けてんだよ。愛称だったりもするみたいだな」
「なるほど。んじゃ、ウチにもなんか付いてんだね」
「多分な。で、『あんた誰?』って聞かれたら、俺の場合『海苔干しんとこの孫です』って言えば、ほぼ通じる」
「おお! 説明楽だね」
すると、奈々菜と藍ちゃんもずっと一緒に歩いている事が自然である事が不自然な状況に気付いたようだ。
「そう言えば何気に四人で歩いてるけど……藍ちゃん達もこっちなの?」
「うん。奈々菜ちゃんもなんだ? ……あれ? 何だろ? 何か……あれ?」
俺と翠さんもここに来てから忘れていたが、その事を思い出し、四人は頭に『?』を付けたままお互いの目的地を目指して歩いた。
そして先に目的地に着いたのは真壁兄妹だ。
「ここが爺ちゃんち」
「えー! 此処なの? 私の家あそこ」
「はいー! あ——— そうか! 一緒に歩いている事が自然な感じがしたのは親父達だ。親父達、子供の頃から一緒って、家も同じ地域なんだよ。しかも隣……って100mは離れてんな……」
「——— っぷ。なんか、楽しい連休になりそうだよ」
「だな」
※ ※ ※
——— 俺と奈々菜は翠さん達と別れて、親父の実家である爺ちゃんちに顔を出した。
「おーい、爺ちゃん来たぞー」
家は少し大きめな昔ながらの平屋の日本家屋だ。
俺達が玄関に入ると、爺ちゃんが茶の間から顔を出した。
「おう、
「爺ちゃん悪りぃ、もう少し標準語っぽく喋ってくれよ」
「悪りぃ悪りぃ、まんず上がれ」
爺ちゃんも婆ちゃんも結構訛りがキツい。正直、何話してるか分からない時がある。
俺と奈々菜は、黙って家に上がる。「お邪魔します」も他人行儀だし、「ただいま」って感じでも無い。こういう場合って、なんて言って上がればいいのか誰か教えてくれ。
「あれ? お婆ちゃんは?」
「
奈々菜は靴を脱ぐと揃えもしないで、玄関に荷物を置いたまま台所へ一目散に駆け込んだ。
「お婆ちゃん来たよー♪」
「いらっしゃい。奈々菜ちゃん
奈々菜は婆ちゃんが大好きだ。
荷物そっちのけで婆ちゃんと話し込んでいる。
俺はいつもこの家で使っている部屋に奈々菜の荷物も運んで茶の間でお茶を啜った。
爺ちゃんは庭で何やら作業を始めた。俺はその間、茶の間で何をすると言う訳でもなくお茶を啜り続けた。
そして三十分位経ったろうか、爺ちゃんが茶の間に戻って来た。
奈々菜は台所で婆ちゃんの手伝いをずっとしている。
爺ちゃんが俺に近況を聞いてきたのだが……。
「
「あぁ、結構慣れたぞ」
「
「ごめん爺ちゃん、もう少し標準語っぽく話して」
「あー、悪りぃ悪りぃ、あれ、あそごの家の息子、武尊
「あぁ、武尊さんな」
——— すると、玄関で「こんにちわー」と聞き慣れた声が聞こえてきた。翠さんだ。
奈々菜が玄関で出迎える。俺も茶の間から顔を覗かせる。そこには素顔の翠さんと藍ちゃんが発泡スチロールの箱を手に立っていた。
「翠さんいらっしゃい。あ、ウィッグ取ったんだ」
「改めてこんにちは。うん。人もあんまりいないしね。はいこれ。お婆ちゃん持ってけって」
すると婆ちゃんが台所から顔を出した。
「あらー、こんにちは。翠ちゃん藍ちゃん久しぶりだごどぁ。
「んー、今一緒のどごさいっがらね。んで、今日、偶々
ん? 翠さん何語で話してる? てか、婆ちゃんと翠さん面識有ったの?
「翠さん、こっちの言葉分かんの?」
「うん、こっちの地方の標準語みたいなもんだね。前住んでたとこもこんな感じ。はい、これ持って。結構重いよ」
翠さんは手に持ってた発泡スチロールを俺に差し出した。すると婆ちゃんが、
「
「
「
「はい。お邪魔しまーす」
俺は二人の会話が異国語にしか聞こえなかった。聞けば、若い世代で此処まで訛ってる人は稀だと言う。
ただ、お年寄りが話す言葉は理解できるし、話そうと思えば翠さん位には話せるそうだ。ついでに藍ちゃんも同じレベルだとか……なんかすげぇな。
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