第33話 宗介と翠のデート③

 ——— パフェをテンポよく食べていた宗介さんは突然頭を抑え、悶絶し始めた。

 『アイスクリーム頭痛』ってやつだ。


「って ———!」

「あははは、一気に食べるからだよもう。ほらぁ、ホッペにも付いてる」


 私は自分の頬を「ココ」と指差し、宗介さんのアイスが付いているところ指し示す。

 流石に拭いてあげる事は出来なかった。

 宗介さんは痛みに耐えながら口元をナプキンで拭く。


「ふー……おさまった……翠さんは冷たいの食った時、何処痛くなる?」


 唐突に変なこと聞くな。痛くなるって、普通、皆同じ場所でしょ?


「頭の天辺だけど……何で?」

「それが人によって違うんだよ」

「そうなの? へぇー、違うんだ? 宗介さんは何処なの?」

「右の耳の後ろ」

「耳の後ろ? どうやればそんなとこ痛くなんの!」

「知らん! でも聞いてみると結構面白いよ。奈々菜は眉間のちょっと上で、お袋は左の首の付け根って言ってたな」

「どうやればそんなところ痛くなるんだろ? 結構面白いね。うちに帰ったら皆に聞いてみよ」


 そんなこんなで私達はパフェを平らげた。


「うん、美味かった」

「やっぱ甘いものは正義だね」

「あぁ、正義だ。そして俺らを堕落させる悪でもある」

「確かに。明日、しっかりカロリー消費しないとね」

「だな」


 ——— 私達は店を出た。勿論お代は割り勘だ。

 宗介さんが全部出そうとしたけど次回もあるんだ……多分……そうすると今回の『奢り』が気分的に次回のお誘いの返事を重くする。逆も然りだ。誘いにくくなる。

 という事で、宗介さんを納得させて割り勘にして貰った。

 さて、次はクレープだが、ジャンボフルーツパフェでもう心は満たされた私達は今回はクレープは諦め次回のお楽しみにする事にしている。


 ——— 次回もあるんだよね……♪ 


 パフェを食べる前に言われた『次回にしよう』の一言が、妙に嬉しくて堪らなかった。



 ※  ※  ※



 ——— いやー、しかし食った食った。

 あの量を一人で食べるのは流石の俺もキツかったと思う。翠さん、後半手が止まり気味だったしな。残したら俺が全部食べてたと思うけど……。

 店を出て、再びモール内をうろうろし始める。


「店舗も全部見たし、最後にヨガマット買って帰るか」

「うん。結構歩いたし見たし満足」

「次回の予習にクレープ屋のメニュー見てこうぜ」

「何そんなに張り切ってんの! ったく、甘い物に関しては女の子より女の子っぽいよ」

「スイーツ男子舐めんな。まぁ、舐めるのソフトクリームですけど何か問題でも?」

「何バカな事言っての! 宗介さんホント甘い物目の前にするとただのバカになるね」

「ま、バカになれる物があるってのも男の魅力の一つだな」


 翠さんは俺の言葉を理解していないようだが、男って生き物は形はどうあれ、バカになれる物を一つは持ってるもんだ。


 俺と翠はスポーツ店に向かっていた。

 まだ歩いていない通路を敢えて通り、目的地に向かう。

 すると人気が無い場所があった。

 そこは、モールの外れで、多分、普段は催事場に使っているスペースのようだ。

 今日はそのスペースは使って無いので、ただ、人気が無い場所になっていた。

 俺達はその空間を確認すると同時に、男女四人が何やら揉めているような光景も見ていた。

 よく見ると、奈々菜と藍ちゃんだ。


「なぁ、あれ……奈々菜達だよな?」

「だね」

「どうしたんだ?」

「ナンパ? ……ナンパだね。しかしあの二人モテるなぁ」

「まぁ、ちょっとはぐれた時なんかこうしてナンパに遭遇する事あったけど……今回はお手上げみたいだな。しつこい奴に捕まったようだ」


 俺達はそのまま奈々菜達の元へ移動した。

 奈々菜達は中学二年生で体付きは幼いが、垢抜けきっているせいか高校生位に見られる時がある。

 近付くと『ねぇ、パフェ奢るからさぁ』と、会話が聞こえて来た。

 パフェならさっき俺達が入ったカフェがお薦めだが、コイツらには薦めたくない。

 大体『モールでナンパ』って……ありえねぇだろ。

 流石にダサすぎだ。


「すみません。兄と一緒なんで……」

「お姉ちゃんもね」


 淡々と話す奈々菜。

 結構余裕の藍ちゃん。

 二人共場馴れしている感じだ。


「奈々菜ちゃんほっといて行こうよ」

「うん、そうだね。では兄が待ってるんで失礼します」


 すると男は奈々菜達の進む方に立ちはだかる。


「おーっと、まだお話終わってないよぉ。そんな嘘付かなくてもいいよぉ。ずっと二人で歩いてんの知ってたんだからぁ」


 俺は翠さんをその場に置いて、一人、男達の後ろから近付く。奈々菜と藍ちゃんは俺に気付いた。


「あ、お兄ちゃん」

「あのぉ……妹が何かしましたか?」


 俺は奈々菜の言葉で男達が振り向く前に、背中から声をかけた。

 すると男達は『ハッ!』として後ろを振り向く。


「あん? なんだオメェ!」

「その子の兄です」


 二人の男は『あぁん?』と言いながら、『兄』と名乗った俺に近づき、足の先から頭の天辺まで何度もくまなく見る。

 その行動は殆ど『チンピラ』だ。

 俺は『チンピラ』は絶滅したと思っていたが、まだいたようだ。ちょっと感動した。

 俺の背中で『ぷっ』っという声が聞こえた。

 どうやら翠さんが吹き出したようだ。

 俺と同じ事を思ったらしい。


「ハッタリかましてんじゃねぇぞ! そんななりしてこの子の兄貴なわけねぇだろ!」

「そっちの彼女の手前、いいとこ見せようってか? あん?」


 交互に喋る男達。何故俺の言う事を信じない?


「いいとこも何もその子は俺の妹だし、身内が危険な目に遭ってたら助けるのは普通だろ」

「誰が危険だって? あぁ?」

「お前」

「誰に向かって口効いてんだゴルァ!」

「お前誰?」

「ふざけてんのかゴルァ!」

「お前こそふざけてんだろ? 一つ言っていいか? その子達、中学生だぞ?」

「お前さぁ…… 一々嘘つかなくていいんだよ。ハッタリかましてんじゃねぇぞ!」

「なんでそんなに庇おうとしてんだ? あ?」


 『ハッタリ』の使い方が間違っているが、こいつらに正しい『ハッタリ』の使い方を教えても使い熟せないだろう。

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