第32話 宗介と翠のデート②
来慣れてた店であれば、脇目も振らずスポーツ用品店に向かい、そして目的の物を買ったらすぐ帰る。男の買い物はそんなもんだ。
だが、今日初めての場所だ。
翠さんも一緒だしモール内を二人で一緒に隅々まで見たいと思うのが心情というもので、俺と翠さんはウィンドショッピングを楽しんだ。
まぁ、女性の場合、いつ来ても普通にモール内を隅々まで歩くんだろうけどな。
ま、女という生き物は『買い物の為に生きている』と言っても過言では無いと俺は思っている。
俺は翠さんとのウィンドショッピングを楽しんだ。
普段、妹と一緒に出歩くが妹の視点と翠さんの視点が違うのは面白い。
中学生と高校生の違いなのか、人の違いかは分からないが、着眼点が違う。
翠さん自身楽しんでいるようだ。笑顔が多い。
エスコートしている身としては笑顔を見せてくれるのは嬉しいの一言だ。
出会ってまだ二週間程度だが、こんなに楽しそうな翠さんを見るのは初めてだ。
「なんか久々に買い物が楽しいって思った気がするよ」
「そうなの?」
「うん♪ 人目も全然気になんないしね」
前髪とメガネで隠れている目が爛々としているのが見て取れた。
「ねね、これなんてどう?」
翠さんはラックから服を手に取り体に当てて俺に見せる。
「それは……どっちの顔で?」
愚問だった。
素顔の翠さんに合わない服はない。
そう断言できるほど、彼女はどんな服でも可愛らしくそして綺麗に映えさせる。
俺の質問に翠さんは答える。
「こっちの顔で」
「うん、似合わなさ過ぎるかな……」
「じゃあ、こっちは?」
「微妙。髪、纏めれば似合いそうだけど……」
「ならいいね。買っちゃおっかな……」
翠さんは似合い過ぎず、似合わなさ過ぎない服を探していた。両極端だと人目に付くからだ。
似合いそうで似合わない服が一番人目に付き難い。俺もそうだが互いの研究の成果だ。
——— 暫くそんなやり取りをして通路にあるベンチに座り休憩する。
「ね、なんか甘いの欲しk「欲しい!」
俺は翠さんの言葉に被せて返事をする。
「あははは、宗介さんガッつき過ぎ。ホント甘いの好きだね。クレープ屋とパフェ屋あるみたいだけどどっちにする?」
「うーん……………………………………………………………………」
「あははは、今度は悩み過ぎ。それじゃあ、両方行ってシェアしよっか」
「おう♪」
俺は心踊った。
翠さんの俺に対する接し方が何となくお姉さんぽくなったのは気のせいだろうか?
俺達はカフェに入り、パフェを満喫する。
※ ※ ※
——— 『パフェを食べる』と決まってからの宗介さんの雰囲気に、私は何となく弟ができたような気分でいた。
私達は、店の前にあるサンプルディスプレイに並んでいる食品サンプルを眺めて入るお店を決めた。
入った店は『ジャンボフルーツパフェ』が売りらしく、ディスプレイには『イチオシ!』のポップも貼られていた ——— 。
——— 私達は店に入り、窓際の席を案内されたが、宗介さんが奥の空いてる席をお願いしてくれた。
気配りが嬉しい……と思ってたら、
「なんか昔から奥の席が空いてたらそこ、お願いするようにしてたんだけど……」
気配りで何でも無かった。
そうだよね。私と同じ境遇だ。人目は避けたいさ。
注文もして、暫くすると、一つのジャンボフルーツパフェが運ばれ、テーブルの真ん中へ置かれたわけだが……。
「……デカいね」
「……ちょっと想像の斜め上を行ってたな……」
「……食品サンプルが逆の詐欺って初めて見たよ」
「……俺も。これ……どう抗議したらいい? 量少なくして値段も下げろ?」
「……それ、テレビショッピング系の『今ならもう一つ付けます』ってやつに『付けなくていいから値段半額にしてくれ』って思う奴だね」
「まぁ、根本的に量少なくしたら『ジャンボ』じゃなくなるよな」
「うん。これはこれでいい思うんだけど……」
ディスプレイにあるサンプルでは『ちょっと大きめだね』と思う程度のパフェが飾られていたのだが、実際に出た物は、グラスの受け皿にもクリームやらフルーツが盛り溢れてて、グラスの足が埋もれている感じになっていた。
ただ、『盛り溢れ』と表現しているが、汚らしい感じでは無く、ちゃんと盛り付けとしてそう表現されているだけだ。
「まさかフルーツ此処迄多いとティータイムってより食事だな」
「この後、クレープ食べる計画が……」
「次回にしよう」
「だね」
スプーンも追加で二つ貰い、お椀状の取り皿も二つ貰った。
私と宗介さんは帽子を取り、そして宗介さんは合掌して、『いただきまーす』と静かな声で言うと、姿勢よくスプーンをパフェに差し込み、直接口に運んだ。その瞬間、
——— ふにゃ〜……♪
前髪で表情は読み取れないが口は完全に溶けた表情のそれだ。
「あははは、宗介さんさっきからダメだって。笑わせないでよもう」
「仕方ないだろ。美味いんだから。ホレ、早く一口食ってみ?」
そう言って宗介さんはスプーンでパフェを掬い、徐に私に差し出した。
ちょっと待って! それって「あーん」なやつじゃん!
「どうした? 食べないの?」
何食わぬ顔でスプーンを差し出す宗介さん。これ、普段からやってる感じだ。って事は奈々菜ちゃんとか……仲良いんだな。私にはハードル高いよ。流石にこれはちょっと恥ずかしい。
「——— 宗介さん……ちょ、ちょっと流石にそれは……」
私はモジモジしながら下を見る。
顔が熱くなってきた。
多分顔、真っ赤になってる。
髪で隠れて宗介さんには見えていないと願いたい。
チラッと宗介さんを見たら、『?』って顔で私を見ていた。
そして私の表情に気付いたのか、『ハッ!』と、自分がしていた事に気付き慌て始めた。
「え? …………あ! ご、ごめん。いつも奈々菜とやってるもんだから、つい」
「そ、そ、そうなんだ。なな奈々菜ちゃんとね、あはは、そ、そっかそっか」
私は照れが勝って焦ってしまった。宗介さんも焦っている。
宗介さんは奈々菜ちゃんといつもしてるって言ってたけど、姉妹じゃまぁやるっちゃやるけど……兄妹でも普通にやるもんなの?
私達は気を取り直して其々にパフェを小鉢に装ってはテンポよく口に運んで行った。
「うん、美味しい♪」
「だろ?」
「あ、このフルーツ美味しい。はい、食べてみ?」
「お? サンキュ……うん♪ 美味い! こっちのもホラ」
「ありがと。どれどれ? あむ……んー♡ 美味しい♪」
時折フルーツを相手のお椀に装ってあげながらパクパク食べていく。すると、
「——— っ!」
宗介さんが頭を抑えて悶絶し始めた。
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