第5話 睡眠には猫を。
寝ると疲れる。
毎夜では無いけれど、結構な割合で頻繁に疲れるし、不調をきたす。
だから寝るのが苦手だった。
小学生の頃だったかな、寝て起きると不調になる変な体質になった。
人間の三大欲求のひとつである睡眠。それが苦手って、なんだそれって思うけれど、免疫力向上やストレス軽減効果が或はずの睡眠でストレスが溜まって不調になったら人間誰しも嫌でしょう?
睡眠の質が良くないとか、睡眠時間が少ない多いとか、寝具が合わないとか色々言われたけど何をしても、何を変えても変化なし。
結局、寝ると疲れる。
特に夢を見た翌日は具合が悪くなる程だった。
夢見が悪いなんてもんじゃない。
酷いと目が覚めて起きた瞬間にぶっ倒れる始末で。
朝、目が覚めて上半身を起こした途端にブラックアウト。初めてぶっ倒れたのは小学六年生だったかな。
病院行っても原因不明。
検査結果も特にコレといった問題もなく、何か強いストレスなどが有ったのではないかと、カウンセリングも受けたが、結局なにも分からず。
問題ない。原因が分からない。だと、対処のしようも何もないわけで。
手詰まり状態。
でも、ひとつだけあったんだ。
寝ても平気な方法が。
猫。猫と寝る事。
猫がそばに居るだけで、あら不思議、翌朝スッキリ爽快な目覚めを迎えることが出来る事が判明した。
父方の祖母が猫好きで、数匹の猫を飼っていた事で発見出来た。
祖父母宅に泊まると比較的寝ても疲れないことに気づいた時の衝撃よ。
数日泊まって一度も体調不良がやってこない。夢を見ても倒れない。
しかも、猫と寝た時の寝起きの違い。
これが、睡眠。
疲れる事のない、睡眠。
久しくなかった快眠に子供ながらに打ち震えたよね。
特に、新入り保護猫だと祖母に紹介された靴下猫の『そっくん』との睡眠が1番快眠だった。
その猫も僕を気に入ってくれたのか、仲良くなれた。その様子を見た家族がこれは、そっくんを迎えるのがベストではと話し合いになった。
母親がアレルギー持ちだから猫を迎えるのは一旦考慮されたけど、その母親の
「私はそこまで酷いアレルギーではないから、対策すれば大丈夫!! 猫を迎えるだけで威智の睡眠が改善するならドンと来いよ!」
との一声で、祖父母宅の僕にいちばん懐いてくれた猫、そっくんを迎える運びとなった。
早い段階で猫パワーに気づけた僥倖は、僕を猫至上主義に傾倒させるには十分な出来事であり、猫の下僕とは己の為にある言葉だと思う次第で、褒め言葉だとさえ思うわけです。
なぜなら猫は、僕の救世主だから。
猫が一緒なら寝るのは苦痛ではなくなった。
普通に生活出来るようになったのだから。
寝るのが怖くなくなった。
そんな僕の傍らには猫が居るわけで、現在も楽しく下僕を拝命しております。
1年と少し前に我が家にやって来た猫、『ねる』。子猫の時分からなんだか尊大な雰囲気の猫ちゃんだった。
現在もその尊大さは変わらず……いや、拍車がかかり、磨きがかかった様子で、まだまだ若いのに貫禄のある猫へと成長を遂げている。 大事なことなので決して体格云々ではないと添えておこう。
食べさせ過ぎには注意しているんだから。
飼い主馬鹿と言われても仕方ないが、ねるはとても賢い猫だと思っている。
人間の言葉を理解しているとしか思えない行動をとるのだから。
ある程度なら単語なんかは覚えることあると思うがそんなもんじゃなく、事細かに理解しているんじゃないかと日々思わされるんだよね。
機微なんかも感じ取ってる節がひしひしとあるし。
なんなら全開でかもし出す雰囲気?
特になんだが呆れられてる感じとか。
これは僕が頻繁にそんな視線を向けられるからかもしれないけど。
勿論甘えてくれる可愛い面もあるんだけど、腹に一物抱えてる感じも否めない。
それでも、猫様は可愛いんだ。 そんなちょっとダークな一面も魅力の一つだよね。
威智ちゃんはとっても不思議な体質だったそうだ。
睡眠で不調になる。 特に夢をみると最悪だったんだそう。
初めて聞いた時は、何言ってるのかな? って思っちゃったけど。
睡眠不足で体調不良になるならわかるけど、寝て夢をみて目が覚めると体調不良って、訳が分からないでしょ?
そりゃ夢見が悪いとかは聞くけど、そんなカワイイもんじゃないって話してた威智ちゃんの目が据わっていたのをよく覚えてる。
ご両親にお会いした時にも真剣にお話しされたし。
その不調を回避する為に猫が必須なんだって言われた時は、猫好きの進化系かしらとか考えちゃった。そしてまた何言ってるのかな? って思っちゃったの。
訳分からない事を言ってるのは承知だから、猫がいない所で何日か寝たら体調不良になるのが見せられるかもしれない。とか言われたけど、じゃぁ見せてもらいましょうなんてならないじゃない?
猫と暮らし始めて改善されて、体調不良になる事も殆どなくなったから、不調になるかは分からないけどって言われても好きな人の不調なんて望まないわよ。
半信半疑でも。
猫好きなのは勿論知っていたけれど、なんだろう凄く拍車の架かったお猫様愛なんだなぁって。その時は思ったわ。
今では不思議な体質だって理解しているつもり。
そんな我が家には猫が居る。
子供たちによって、『ねる』と名付けられた我が家の愛猫。
とてもとーっても賢い猫だと思う。
お猫様崇拝の威智ちゃんじゃないけれども、うちのねるは絶対言葉を理解してると思うの。
都合のいい事悪い事、褒め言葉に悪口。
全部分かってるよね?
おすまし顔で誤魔化してポーカーフェイスのつもりかもだけど、全然表情豊だし。
耳や尻尾も雄弁なんだもの。
威智ちゃんに塩対応な時は、威智ちゃんの失言を聞き咎めたんだと思うのよね。
猫の聴覚は人の4倍って言うし。
それに、ねるは何故か威智ちゃんには人一倍厳しいから。
子供たちには優しいのだけれどね。 私にも若干厳し目寄りだけど、威智ちゃんへの対応よりは優しいと思う。 お目こぼし感は否めないけれど。
そこがまだ知性を感じさせられるところなのよね。 子猫の時から子供たちには、なんて言うのか、上から目線だし。 産まれて数ヶ月の子猫なのに。
猫生何周目ですか?
って、態度だったもの。
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