5

7月。動画の締切直前に集まった。

鳥「こんの動画を全員で見てみようの会を開きます。」

「え!?」

狸「確かに。見てないもんな。」

猫「こんちゃん、見ていいよね?」

「いいですけど…」

自分の納得いくまでは頑張った。

でもやっぱり専門の部の人に比べたら凄く劣っている気がしていた。

だから先輩に見せていなかった。

先生の急な発言で必要のない緊張感が走った。

「じゃあ、流しますね…」

私はパソコンに入っているデータを開き、再生ボタンを押した。

動画は3分ちょいの短い動画なはずなのに、凄く長く感じた。

無機質な教室に響く動画のBGMと冷房の音。

私を強張らせるには十分だった。

動画が終わり無言の時間が続く。

「あまり良くなかったのだろうか。」

「素人の動画は先輩たちに刺さらなかったのだろうか。」

と、自分の作品に自信がないから余計なことまで考えてしまう。

狸「めっちゃいいじゃん。」

犬「こん、めっちゃ完成度高いぞ。」

猫「こんちゃんすごいね。こんな凄い動画他じゃ作れないよ。」

先輩たちに褒められた。

無言の空気から解放されて、逆に安心感に押しつぶされそうだ。

鳥「これならパソコン部に勝てるな。こん。ありがとう。」

「いえ。私はできることをしただけで…」

犬「こんって自己肯定感低いよな。自信ないの?」

「自信は…ないです…」

猫「こんちゃんが頑張ったからこんなに凄い動画になったんだよ?ほらもっと自信もって!」

狸「こんちゃん、自信持ってないといつか潰れるよ。」

鳥「そうだぞ。先生みたいにな。」

「先生、ちょっと返答しづらいです…」

先生の自虐は置いておいて、“自信”か。

自信という言葉に無縁な生活をして来ているからわかるわけないし

持てるわけがない。家の方針上仕方ないのだ。

狸「すぐにじゃなくていいから、自信持つか夢見れるようになるか、どっちかはできるようになっといた方がいいよ。」

犬「このままだと悪い先輩に目つけられるからな。」

猫「実際、ワンコはつけられてたもんね。」

犬「うるさい、マネキ。」

夢に前みたいな偏見はなくなった。

けど、見れるかと言われたらそれは違う。

狸「もう少しで夏休みだし、夏休み明けまでにどっちか達成しておきなね。」

「わかりました…。頑張ります…。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る