第29話 脅威の再生能力

 奇妙な形の3つの頭にはそれぞれ色の違う目が2つあった。頭は独立して動いているので死角はほとんどなさそうだった。怪物の合計8本ある手足の2本が急激に伸長したかと思うと同時に左右から攻撃してきた。その手足はカマキリのように鋭く尖っていた。茜は瞬時にシルバーチェーン(銀色に変化したブレスレット)を操って、攻撃してきた手足を鮮やかに切断した。怪物は足元に落ちた2本の手足を見て、少し躊躇したように見えたが、それはほんの一瞬のことだった。

 葵は怪物の再生能力に驚愕した。切断された場所から新しい手足がすぐに生えてきたからだった。怪物が笑ったように見えた。

「あいつ、笑ってるぞ」「そんなこと言ってる場合じゃないよ」

「奴は頭は再生できるのかな」葵は独り言のように言った。

「頭は3つもある。どれを狙うの」茜の声は切迫していた。

「それは真ん中だと思う。でも念には念を入れて全部もありかな」

「真ん中と右をやるから、葵は左をやって」

「待ってくれ、僕にはそんな飛び道具ないよ」葵が困惑している間に怪物は再生した手足を使って、次の攻撃をしようとしていた。

「いったいどうすればいいんだ」怪物の複数の手足が伸びてきた。茜はその手足が体に届く前に右の首をシルバーチェーンで切り落としたが、真ん中の首はミスった。もうだめだと思った瞬間、葵の右手と左手が肘から切り離されて、飛んでいった。

「ああ、俺の手が切断された」

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