第26話 氷の世界

 浮遊体の攻撃は容赦がなかった。その攻撃のスピードは次第に速くなり、時間差攻撃から総攻撃に変われば避けるのは不可能だった。

「葵、同期に集中して」茜の声が頭の奥で聞こえた。茜のエネルギーが脳内に溢れる感覚があった。葵はその感覚に合わせようと神経を集中した。

 そして、それは突然起きた。二人は瞬間的に砂漠から氷の世界へ移動していた。

「寒い」葵の口からは白い息が出ていた。「ここなら奴の姿がはっきり見える」確かに白一色の世界に茶色の砂は目立つはずだった。

「なんて愚かなんだ」砂漠から転移してきたサンドモンスターは黄色から一瞬にして白色に色を変化させていた。

「砂には白砂というのがあるのを知らないのか」葵は相手が一枚上だと思ったが、茜の反応は違っていた。茜は葵の前に素早く移動すると光槍をサンドモンスターの額に突き刺した。葵が驚いたことに光槍は頭を真っ二つにした。

「確かに色はまわりと同期したけど、極寒の環境では砂も固まることには気が付かなかったわね」氷上に仰向けに倒れたサンドモンスターの割れた頭からは緑色の液体が溢れ出ていた。

「こいつ本当に死んだのか」葵は初めて見る魔界の怪物に半信半疑だった。

「油断が命取りになるという見本よ」「茜は空間移動の能力もあるんだね」

「葵はまだ自発的に能力を発揮出来ていないけど私と同じ能力がある。私が知らない能力もあるはず」葵はどうやったらその能力が引き出せるのか分からなかった。

「こんなところでぐずぐずしているわけにはいかない。先を急ぎましょう」

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