第16話 茜の真実

「茜は妹と言ったけど、生まれた日は一緒なの。つまり、葵とは双子の兄妹の関係になる」「茜はこの世界にはいないというのは、死産だったということ」

「死産というのは正しくない。生まれたけど別世界に行ったというのが正しい」

「死んでいないのなら、なぜこちらの世界に戻ってこないの」

「茜は別世界から私たちを守ってきたけど、この世界と別世界を隔てる結界がついに破れてしまった」「警察と自衛隊が動いているのはそのことを知っているからなの」

「政府にこの事実を正しく理解している人間がいるとはとても思えない」

「茜に会うにはどうしたらいい」「葵、あなたの能力は覚醒し始めている。茜が葵を求めているに違いない」人気の無かった公園はいつの間にか武装した陸上自衛隊員によって包囲されていた。

「そこの二人、君たちはすでに包囲されている。おとなしく我々の指示に従え」

「向日葵、葵、地面に伏せて」茜の声と同時に竜巻が沸き起こり、次々に自衛隊員がその渦の中に巻き込まれていった。空は一気に墨のような黒い雲に覆われ周囲は漆黒の闇に包まれた。その闇を切り裂くように稲妻が走ると全身黒焦げになった自衛隊員が地面に叩きつけられるように落ちてきた。

「奴がやって来る。私の声が聞こえる方にすぐに逃げて」茜の声は震えていた。猛烈な風圧に抗うには体を極力低くして進むしかなかった。葵は顔に降り掛かってきた物を手の甲で拭った。それはべっとりとした液体は血の匂いがした。地面を掴む右手に触れたのは四散した自衛隊員の太ももだった。

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