第16話 実は凄かったりするんです!
ギルドを出たロジャーとセレスティアは、石畳の道を歩きながら軽く作戦を話し合っていた。
「とりあえず、ドラゴンの出没場所は特定できたけど、やっぱり情報が少なすぎるな」
「目撃者の証言だけじゃね……地形もわからないし、罠も仕掛けられない」
そんな時――
「おーい、ロジャー!」
前方から手を振って近づいてくる二人の姿があった。
アマンダとアンナだった。
「ちょうどよかった。今からギルドに行こうと思ってたのよ」
「そっちも情報収集は終わりましたか?」
「まあな。おかげでだいぶ収穫があったぜ。そっちはどうだ? 宿は見つかったか?」
「ええ、そこまで高くないのに、掃除が行き届いていて、ベッドもふかふかでした。シロモンたちのスペースも確保してあります」
「おお、それは助かる! 今日はゆっくりできそうだな」
ロジャーがシロモンの頭を撫でると、ミミフィーヌとモモルも嬉しそうに跳ねていた。
「ギルドで得た情報をまとめて、今夜、作戦会議といこうか」
「異議なし!」
そうして四人は肩を並べ、街を歩きながら、宿へと向かっていった。
四人は宿へと戻ってきた。
入り口に入ると、アンナがすぐに受付へ向かい、事前に手配していた宿泊の確認を始める。
「予約していたグリューネの名前でお願いします」
「はい、お待ちしておりました。三人部屋が一室と、一人部屋が一室ですね。鍵はこちらになります」
アンナは丁寧に礼をして鍵を受け取り、振り返ってロジャーたちに説明を始めた。
「というわけで、三人部屋はセレスお嬢様と私、それからアマンダさん。ロジャーさんは一人部屋です」
「……当然だな」
ロジャーが思わず確認するように問いかけると、アンナは涼しい顔で頷いた。
「当然です。何か問題でも?」
「ない。俺は使い魔たちといられるなら馬小屋でも構わん!」
ロジャーが胸を張って答えると、セレスティアがクスッと笑う。
「流石は師匠だな。一切ブレない」
「そう考えると四人部屋でも全く問題なさそうなんですよね……」
「少しくらいはあたしたちにも興味を持てよ……
アマンダが呆れている横で、アンナはすでにロジャーの手に一人部屋の鍵を握らせていた。
「それでは部屋で荷物を整理して、一階のフロアで落ち合いましょう。作戦会議です」
「おう、了解だ!」
ロジャーはそう言って、使い魔たちを小脇に抱えて自分の部屋へと向かっていった。
荷物を部屋に置いてきた四人は宿の一階フロアに集まっていた。
ロジャーはシロモンを膝に乗せ、モモルとミミフィーヌを抱えて上機嫌。
セレスティアは隣に座り、アマンダとアンナは向かいの椅子に腰を下ろす。
「さて、作戦会議といこうか」
ロジャーの掛け声で、それぞれが今日得た情報を共有し始める。
「まずは、冒険者ギルドでの情報だが……」
ロジャーが腕を組み、顎に手を当てる。
「
「こっちも似たような話を聞いたよ」
アマンダが頷きながら口を開く。
「宿の主人が言ってたんだ。南の森で獣が逃げ出しているって。理由はわからないが、火でも出たんじゃないかってさ。宿泊客の一人が、夜に山の方角が一瞬赤く光るのを見たとも言ってた」
「南か……。まずはそこから探してみるか」
「そうね。お互いの情報が一致してるから、それがいいわね」
セレスティアが腕を組んで小さく唸る。
「問題は、果たしてそれが本当にドラゴンなのか……」
「行ってみりゃわかるさ」
「グリフォンやヒポグリフを見間違えたという話はよく聞くからな」
「そうね。翼を生やした大型の魔物はワイバーン、グリフォン、ヒポグリフ、ペガサスってのが定番よ。まあ、ワイバーン以外は幻獣種とかいうのに分類されてるわね」
「あの~、私、あまり、その辺は詳しくないのですが魔物とは違うんですか?」
アマンダの説明を聞いていたアンナがおずおずと手を挙げる。
「いいえ、魔物よ。ただ、魔物の中にも種類があるの。その内の一つが幻獣種。人に害を成すこともあれば、人にとって有益でもあるし、御伽噺なんかにも登場する魔物よ」
「そうなんですね。ドラゴンも幻獣種に入るんでしょうか?」
アンナの問いに、アマンダは首を横に振った。
「ドラゴンは竜種というカテゴリね。これには竜種、亜竜種といるわ」
「亜竜というのは、どういったものがいるんですか?」
「私たちが遭遇したハガネトカゲね。竜と同じ特徴を持ってるけど、翼はないし、魔法も使えないから」
「魔法が使えるのが竜種なんですか?」
「そうね。基本的には竜魔法と呼ばれる魔法を使えるものを竜と呼んでるわ」
「その竜魔法とは普通の魔法とは違うんですか?」
アンナは指を折りながら竜魔法について語る。
「威力が桁違いなの。そして、
「な、なるほど……。やはり、ドラゴンとは想像以上に強力で恐ろしい魔物なんですね」
アンナが唾を飲み込む。
ドラゴンという生き物を改めて恐ろしいと感じていた。
「そうよ。だからこそ、ドラゴンをテイムできたら一目置かれるし、討伐できたら
そう言いながら、アマンダは呆れた目でロジャーの方を見た。
「ん? どうした?」
「一応、言っておくわね。ロジャーは変態テイマーだと馬鹿にされてるけど、その実力は大陸に数えるほどしかいないSランク冒険者パーティよりも強いとされてるわ。冒険者のランクは私と同じBだけどね!」
「え!? ロジャーさんってSランク冒険者パーティと同じくらい強いんですか!?」
驚愕の事実にアンナは声を荒らげ、セレスティアは目を見開いていた。
「冒険者のランクが下からF、E、D、C、B、Aとあるってことは知ってるわね? その上に特別な功績を挙げた冒険者に与えられるのがSランク。竜殺しは問答無用でSランク認定よ」
「そ、そうか。ドラゴンは災厄とも呼ばれている! ひとたび現れれば街は焼き尽くされ、人々は逃げることしかできないと言われているんだ。そんなドラゴンを倒すことができれば、英雄と称えられてもおかしくはない!」
興奮して勢いよく立ち上がったセレスティアは、尊敬の眼差しをロジャーに向けた。
しかし、ふと先程の話を思い出し、すぐにきまり悪そうに腰を下ろす。
「すまない。師匠とアマンダさんがBランク冒険者というのはどういうことだ?」
その問いに、アマンダが肩をすくめながら答えた。
「冒険者ギルドは国際組織というのは覚えてるわね?」
「あ、ああ。それが何かあるのか?」
「大いに関係あるのよ。Bランク以上――特にAランクやSランクに上がるには、実力だけじゃなく人柄も見られるの」
そこでアマンダは一拍置き、ロジャーを指差して続けた。
「で、大陸全体の模範になるべき花形の冒険者が、ロジャーみたいな変態テイマーだったら、どう思うかしら?」
セレスティアとアンナは一瞬の沈黙ののち、思わず目を逸らした。
当のロジャーはというと、まるで興味がないとばかりに使い魔たちと戯れていた。
「あ、あの……。もしかしてなんですけど、ロジャーさんみたいな実力のある問題児は他にもいるんでしょうか?」
アンナの問いに、アマンダはふっと笑みを浮かべ、肩をすくめた。
「いるわよ。あくまで噂だけどね。実力だけならSランク級なのに、協調性がなかったり、言動が過激だったりで、ランクが据え置かれてる人たちってのは、実はそこそこいるのよ」
「へ、へえ……。そういう人たちが集まったら、ある意味最強のパーティができそうですね……」
「そうね。最強でしょうね。でも、さっきも言ったけど、基本的に自己中で協調性もないから連携なんて取れないわ。ロジャーはその中でも比較的マシな部類なんだけどね……」
「確かに師匠は可愛い魔物さえかかわらなければ、比較的まともだろう」
苦笑いを浮かべているセレスティアの様子を、アマンダは温かい目で見守った。
「まあ、中身はロジャーと似たり寄ったりよ。誰とも組みたがらない、変人と天才ばかり。何より、ギルドからはあまり良い目で見られていないわ」
「じゃあ、師匠はその系譜に属するということか……!」
「ちょっと待て、勝手に系譜に入れるな。俺は変人じゃない。愛に生きるだけだ」
ロジャーが突然口を挟んできて、ミミフィーヌを抱きしめながら真顔で言い放った。
「ほらね? この調子よ」
アマンダが溜め息まじりに呟くと、セレスティアとアンナもようやく納得したようにうなずいた。
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