第3話:三回戦、米沢の愛染王

 「キンガメオー、結構タフな相手だったな」


 試合後に金馬が椅子に座り、感想を呟く。


 「俺達のバリヤー割る攻撃はヤバいよね?」


 金馬の左隣に座るカナメが疑問形で呟く。


 「うん、そう簡単には割れるもんじゃなかったのにね」


 カナメの隣の席のマッシュがカナメに答える。


 「夏の大会でも岡崎のあの方に斬られましたしね」


 金馬の右隣の席のメープルが思い出すように呟く。


 「龍姫さん、金馬さんにクレイジーフォーユーデース♪」


 メープルの隣のドロシーが微笑む。


 「金馬さん、変な人に好かれ過ぎです!」

 「止めろ、俺のせいじゃない!」


 金馬の向かいの席からシャルルが叫ぶ。


 試合後のコロッセオ内の控室でテーブルを囲み反省会をする金馬達。

 話題に出てきた去年の決勝の相手、松平龍姫の名に金馬は怯えた。


 「ああ、あの子ね♪ ジンリーに似た娘ね♪」

 「母ちゃんに似てるって時点で、ヤベえよあいつは」


 ジンファがからからと笑う中、金馬はげんなりした。

 金馬としては、関わり合いにはなりたくない手合いであった。

 悪い人ではないようだが、押しが強いタイプは苦手だった。


 「まあ、ドラゴン界の事情はさておき♪ それよりも次の相手ですわね?」


 メープルが笑顔で話題を変える。


 「おう、俺達は試合で来たんだ」


 金馬も気を取り直す。


 「じゃあ、モニターで試合を見てみましょう♪」


 ジンファが控え室の壁に備え付けられた大型のモニターのスイッチを入れる。


 画面の向こうでは、金の愛の字の兜を被った真紅の武者ロボと茶色いファラオみたいなロボットが戦っていた。


 「赤いのは山形のアイゼンオー、茶色いのは鳥取のファラオロボみたいデース」

 「いや、ドロシーちゃんと鳥とファラオにどんな因果が?」

 「砂丘じゃないですかね、カナメさん?」


 ドロシーの言葉にツッコむカナメと絡むシャルル。


 「どちらもデカいな、俺らのとタッパ変わらねえぞ?」

 「そりゃそうよ、ロボは巨大怪獣を狩る武具だもの♪」


 金馬の呟きにジンファが笑う。

 金馬達の思惑など関係なく、画面の中では戦いが繰り広げられていた。


 『ファラオミサイル発射!』

 『薙ぎ払います、愛の字ビーム!』


 ファラオロボが胸板を開けて発射したミサイル群がアイゼンオーに迫る。

 だが、アイゼンオーは一歩も引かず兜の愛の字からビームを放出。

 飛んで来るミサイルをビームで薙ぎ払い爆発炎上させた。


 『ミサイルは牽制、ファラオタックル!』

 『ぶちかましなら負けてません、どすこい!』


 両者が互いに突進し巨体同士がぶつかり合う。

 ぶつかり合いを制したのは、アイゼンオーだった。


 『止めは愛の字ハンマーです、どりゃ~っ!』


 アイゼンオーが巨大な大槌を召喚し振り上げる。

 スタンプのようにハンマーに描かれた愛の字が赤熱化し発火。


 『愛の字ダイナミックです!』

 『ぐわ~~っ!』


 ハンマーが振り下ろされ、ファラオロボは愛の字の焼き印が押されて倒された。


 「愛が重いって物理的な意味?」


 試合を見終わったカナメが唖然とする。


 「こう言う愛は嫌だなあ」


 マッシュは正直な感想を述べる。


 「殴り愛ですわね、おそろしや」

 「ラブとは一体何なのでしょう?」


 メープルとドロシーもあっけらかんとなる。


 「愛を武器にするって、こう言う事じゃない気がしますが?」


 シャルルも引く。


 「おかしい、世の中には俺の母ちゃんと似たようなタイプッているのか?」

 「私はこういうストレートなのは好きよ♪」

 「いや、ストレートすぎるよ祖母ちゃん!」


 金馬は監督として来たジンファにツッコむ。

 あの愛の字を相手にすうrのは自分たちなのだから。

 悪の怪獣やロボットと戦う方がまだましだと金馬は思った。


 「そう言えばジンファさん、今回は挨拶とかないんですかね?」


 シャルルがジンファに尋ねる。

 夏の大会とは違い他校の選手との顔合わせや挨拶などがなかった。


 「そうね、運営の方針でトラブル防止の為に他所の選手との交流はNGなのよ」

 「まあ、確かに自分達をぶちのめした相手と仲良く話そうとかはないか」

 「そ、夏の大会は交流ありだけどこっちはバトル重視ね」


 ジンファが金馬の言葉にシャドーボクシングをしながら答える。


 「で、三回戦は何で明日なんすか? 俺らはまだ行けるっすけど?」

 「うん、僕も戦える」

 「それは、家のロボがパイロットの回復機能があるからよ♪」


 ジンファがカナメとマッシュにツッコむ。


 「お二人共、普通はロボに乗って戦えば体にもメンタルにも披露はきますのよ?」

 「マグナデウスやシャルルロアが特注品デース!」


 メープルとドロシーもツッコミに回る。


 「ジンファさん、僕達もご飯が食べたいです♪」

 「そうだな、俺も腹へった」

 「はいはい、それじゃあホテルへ案内するわよ♪」


 ジンファが笑顔で手を鳴らして皆を立ち上がらせ、退室させる。

 金馬達はバスに乗り、ロンスターグループが経営するホテルへと向かった。


 翌朝、食事と風呂と睡眠でリフレッシュした金馬達。

 マグナシャルルに乗り込み試合の場に立ち、アイゼンオーと向き合っていた。


 「よっしゃ、皆気合い入れて行くぞ♪」

 「うん、もうやる気漲ってるよ♪」

 「カナメ、牛肉食べ過ぎ♪」

 「オーナーから今夜は海鮮フルコースとのことでしてよ♪」

 「スポンサーのありがたみが身に沁みマ~ス♪」

 「金馬さん、勝ちましょう♪」

 「よっしゃ♪ コンバット、ゴー!」


 マグナデウスチームは、意気軒高であった。


 『米沢を愛し、直江兼続様をリスペクト! アイゼンオー、見参ですわ♪』


 アイゼンオーから通信で美少女の声が発せられる。

 合図と共に特殊空間が展開され、撮影ドローンが飛び交う。


 『先手必勝、愛の字ハンマーですわ!』


 アイゼンオーがハンマーを召喚し大上段に構えてから振り下ろす。


 「受けて立つぞ皆、マグナナックルッ!」


 マグナシャルルの拳と、アイゼンオーのハンマーがぶつかり合う。

 拳と槌のぶつかり合いを制したのはマグナシャルル。

 アイゼンオーのハンマーの頭を爆散させた!


 『な、流石は夏の覇者! まだ武器はありますわ! 兼光ブレード!』


 アイゼンオー、今度は巨大な青い鞘の太刀を召喚して抜刀。


 「テールランスです、金馬さん!」

 「おう、そう簡単には斬らせねえぞ!」

 「夏の決戦でやられたもんね♪」

 「ぶった切られたデース!」

 「こちらは槍ですわ!」


 マグナシャルルは、巨大な騎士槍を召喚してガードに成功する。

 両者距離を取り、武器を構えた。


 「伸びろテールランスホイップ!」

 『愛の字フィールド展開です!』


 マグナシャルルがランスを振るい龍の尾のように穂先を伸ばして打つ!

 だが、アイゼンオーは愛の字型のバリヤーを生みだして防御した。


 『ああ、愛の字フィールドが割れた! でも、愛は砕けませんわ!』


 バリヤーは破られても、アイゼンオーの闘志は砕けなかった。


 「熱いじゃねえか、根性のある奴は大好きだぜ♪」

 「あ、金ちゃんがフラグを立てた気がする?」

 「通信はオフですから、聞こえてないと思います」

 「金さん、それは言ったらダメなフラグデース!」


 アイゼンオーのパイロットに好感を抱いた金馬。

 カナメ達は、溜息を吐いた。


 『兼光ブレード、愛の字切り!』


 アイゼンオーが達を振るい、愛の字を描いてエネルギーの斬撃を飛ばして来た。


 「敢えて受ける!」


 マグナシャルルは、相手の攻撃を受けて耐えきる。

 エネルギーの斬撃は当たりはするも霧散化された。


 「お返しに行くぜ、レインボーキック!」


 マグナシャルルがジャンプし足に虹色の光りを生みだしながら落下!


 『こちらも受けき、れない~~っ!』


 アイゼンオーも両腕を交差させた上段受けでブロックを試みる。

 だが、受けきれず腕は粉砕されてダウンしてしまった。


 「おっと、やり過ぎになる!」


 金馬は相手がダウンしたのを見て機体をバク転させ、エネルギーを空へ放出し花火の如く爆発させる。


 同時に試合終了の合図が鳴り響き、マグナデウスチームの勝利が確定した。

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