第2話:二回戦、松山の金亀王

 沼津女子海洋防衛学園を破った金馬達。

 一回戦お疲れさまとみんなで温泉に来ていた。


 「何で俺ら、対戦相手から嫌われてるんだ?」


 金馬が海が見える岩の露天風呂に浸かりながら呟く。

 試合後に相手チームから、睨まれ次は負けないとか言われた。


 「いやいや、思いきりボコった相手の事好きにならないっしょ?」

 「そこは競技だから仕方ないんじゃ?」


 金馬の隣にいたカナメがツッコむ。

 同じく隣にいたマッシュは正論を呟く。


 「もしかすると山梨に負けたのが静岡には屈辱だったとか?」

 「シャルル、それを言ったら日本のあちこちは因縁だらけだ」


 自分と向き合うシャルルを諭す金馬。

 ご当地対決ではあるが、対立はいけない。


 「ご当地がというなら俺は、中国生まれなんだよな」

 「金ちゃん、名前以外日本人じゃん♪」

 「そうそう、子供の頃から一緒」

 「カナメさんとマッシュさん、狡いです!」


 ワイワイ騒ぎながら湯に浸かる男子達。

 女子は内風呂なので様子はわからない。


 風呂を出て着替えて、温泉施設の入り口前に集ったチーム一同。


 「次は、また会場が移動になるんだな?」

 「ええ、二回戦は今度こそ東京湾上の人工島だそうですわ♪」


 金馬の呟きにメープルが答える。


 「よっし、そこなら遊んでいけるぜ♪」

 「うん、自然も良いけど街も良い♪」

 「カナメさんもマッシュさんも、現代っ子ですね♪」

 「オ~ウ、確かにジャンクフードも食べたいデース♪」

 「いや、お前ら遊ぶ気満々だな!」

 「東京の名所だそうですわね♪」

 「メープルもかよ!」


 観光気分な仲間達に呆れる金馬。

 飯盛先生は、学校の業務が忙しくて来れない。


 「ヘイ、キッズ♪ 迎えに来たわよ♪」


 空から一人の金髪のチャイナドレス姿の美女が舞い降りて来た。


 「祖母ちゃん! 仕事はどうした?」


 現れたのは金馬の祖母のジンファ、マグナデウスチームのオーナーであった。


 「キッズ達の面倒を見るのが仕事よ、飛行船を用意したから乗りなさい♪」


 ジンファが指を鳴らすと空から飛行船が舞い降りて来た。


 「あらあら、会長は相変わらずゴージャスですわね♪」

 「流石はオーナーデース♪」


 メープルとドロシーが微笑む。


 「うん、金ちゃんのお祖母ちゃんお金持ってるよね?」

 「そうだね、マネーパワー強い」


 カナメとマッシュは呆れていた。


 「ジンファさん、ありがとうございます♪」

 「ああ、祖母ちゃんは来てくれてありがとう♪」


 シャルルと金馬は礼を言い、一同はジンファが用意した黄色い衆が描かれた飛行船に乗り込んで飛び立ったのであった。


 やって来たのは自然豊かな三宅島とは打って変わって人工的なメガフロート。


 「何か、一気に都会に来たな」?」

 「こらこら、あなた赤ちゃんの時はこの島にいたのよ?」

 「祖母ちゃん、ここはもしかしてフロートシティか? 見違えたな」

 「そりゃ、あれこれ拡張してるから変わるわよ♪」


 金馬の問いにジンファが笑う。


 「と言う事はヒーロー高専のホームなんだ?」

 「先生の母校だよね?」


 カナメとマッシュは発着場の周りを見まわす。


 「お二人共、こんな所は珍しくありませんわよ?」

 「アメリカと似た感じデース」

 「メカ分が懐かしいです♪」


 メープルとドロシーは十シャルルは落ち着いていた。


 金馬達は黄色い龍が描かれた観光バスに乗り、試合会場へと向かう。


 「あれが試合会場か、デカい円形闘技場だな?」


 バスの窓から遠くに聳える巨大なコロッセオを眺める金馬。

 コロッセオに到着して控え室で対戦相手についてジンファから聞く。


 「オーナー兼監督として仕切るわ♪ 二回戦は松山ロボット学園よ」

 「愛媛か、どんなロボだ?」

 「はい、映像♪」


 カナメが呟くと、ジンファが指を鳴らし虚空にスクリーンを浮かべる。


 「む~~~! あっちも亀ロボットデ~ス!」


 自分も亀のロボに乗っているドロシーが対抗心を燃やす。


 「金亀王ですか、金色のロボって手強そうですね?」


 シャルルは相手を警戒した。


 「まあ、ぶつかるまでですわ♪」

 「そうだな、思いきり行くぜ♪」


 メープルと金馬は、楽しそうに答えた。


 対戦相手の戦闘映像を見てから試合の場へと金馬達は向かう。


 ロボを呼び出して金馬達が乗ったマグナシャルルと対峙するのは、金色の亀をモチーフにしたロボ。

 亀の甲羅を背負った大型のスーパーロボット、キンガメオーだ。


 『二回戦、第一試合は夏の覇者! マグナシャルル対キンガメオーです!』


 実況席から司会者の男性の叫び声が聞こえる。


 「よし、マグナシャルル! コンバット、ゴー!」

 「「応っ!」」


 金馬達が気合を入れれば試合の合図が鳴り響き闘技場は特殊な空間に包まれた。

 作られたフィールドは広大な平原。

 ヒーローと悪の怪人が戦闘する時の特殊空間を形成するシステムが、このコロッセオには組み込まれていた。


 このシステムによりロボット同士が大暴れしても、会場や観客に被害が及ばない。

 特殊な空間の上空には撮影と判定用のドローンが多数飛び交って観測をしていた。


 「よし、これなら思い切り行けるぜレインボービーム!」


 金馬の操作でマグナシャルルが虹色の光線を発射する。


 『キンガメシールド!』


 だが相手も亀甲模様のバリヤーを展開する。

 マグナシャルルのビームはバリヤーを破壊するも減衰し回避されてしまった。


 「ちょ、マジでやるなあちらさん! 突っ込んで来たよ!」

 「真っ向からぶつかろうぜ♪」

 「金馬君、脳筋」

 「金さんらしいデース♪」

 「私達なら耐えきれますわ♪」

 「任せて下さい!」


 突進して来たキンガメオーと真っ向からぶつかり合う。

 ぶつかり合いを制したのはマグナシャルル。

 「行くぜ、上手投げ!」


 よろめいたキンガメオーと組み合い、投げ飛ばす!


 『甘いな! キンガメスピーーン!』


 相手の回線からの叫び声と共に、投げ飛ばされて浮かんだキンガメオーが人型から手足と頭を引っ込めた甲羅モードに変形して回転しながら飛び掛かって来た!


 「上等だ、迎え撃ってやるぜ!」

 「こちらもシェルフィールド展開デース!」

 「ドロシーさん、対抗心が凄いですね?」

 「その闘志、素晴らしいですわ♪」

 「僕達も踏ん張ろう!」

 「ああ、東京観光は優勝してからだ!」

 「いや、モチベがおかしくねえか?」


 仲間達に呆れつつも金馬は迫り来る相手に、どっしりと機体を構えて待ち受ける。


 マグナシャルルのバリヤーをキンガメオーも割るが、弾かれて人型に戻って着地。

 互いに向き合い仕切り直しとなる。


 『やるな山梨の! キンガメクロー!』


 キンガメオーが両腕の前腕を展開して、巨大なビームクローを生成してマグナシャルルへと振り下ろす。

 マグナシャルルは両腕を交差して受け止める。


 『ビームクローが受け止められた、コーティングか?』

 「良い攻撃だ、だがこっちはビーム対策してるんだよ!」


 驚く相手に言い返す金馬。


 「金ちゃん、そうは言ても、ダメージは来てるよ?」

 「そろそろ決め時デース!」

 「ぶっ放しましょう、金馬さん♪」

 「決めますわよ、あの技で♪」

 「この距離なら外れないから行こう!」

 「おっしゃ、マグナフランメ発射!」


 金馬達は必殺技の一つ、胸の龍の頭から放つ火炎弾のマグナフランメを放つ!」

 火炎弾の爆発でキンガメオーは吹き飛ばされて地面に落下しダウンした。


 「おっしゃ、こいつで決まったぜ♪」


 ダウンしたキンガメオーを見て金馬が勝利を確信する。


 同時に試合終了の合図が鳴り響き空間が元に戻る。


 『決まりました♪ 夏の覇者、マグナシャルルの勝利です!』


 司会者の叫びと共に観客席から大歓声が巻き起こる。


 「やったね金ちゃん♪」

 「勝てて良かった♪」


 カナメは喜びマシュは安堵する。


 「亀ロボ対決はこっちの勝ちデース♪」

 「オ~ッホッホ、私達の勝利ですわ♪」


 ドロシーとメープルも勝利を喜ぶ。


 「次は三回戦ですね、金馬さん♪」

 「ああ、勝ちに驕らず頑張ろうぜ♪」


 シャルルの言葉に金馬は頷き、仲間達とハイタッチを交わした。

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