裸足で踊ろう共犯者
どうしてこうなったんだっけ
首を傾げども、答えてくれる人間など、この場には存在しなかった。
獄中で胡座をかき、腕を組み、一丁前に唸って見せるが、自分の覚えている範囲では
昨日の晩、自宅で酒を楽しんで飲んでいたら何の連絡も無しに『誰か』がやってきて、夜の淵を彷徨っていたんだ。酔っ払って与太話なんかをべらべらと舌の上で踊らせていた気がする。
そうしたら途端に靴が脱げ落ちてしまって、その際に自分は『誰か』に喰われてしまったんだ。
意味もわからない脈絡のない文章だと、皆が鼻で笑うだろう。然し本当なのだ。
「初恋を喰われて、終いには『誰か』から被せられた罪で投獄。全くもっての冤罪」
襲われたのはこちらだと言うのに、襲ったのは此方だなんて、なんとも酷い冤罪、荒唐無稽な話である
それなのに
「此処から出たいの」
獄中の中で唸る俺を目前に笑う女
昨晩俺を喰って冤罪を被せた女だ。嗚呼、忌々しい。此奴が全てを知った気になっているなんて、なんとも腹立たしい話だ。俺は思わず悪態を吐いた。
「『誰か』が何かをほざいてら」
「あら、昨晩のことでも思い出したのかしら」
「五月蝿ェな、少しでも悪ィと思ってんのなら、早くこっから出してくれや」
「はいはい、五月蝿い人ね」
ギィ、と鍵を開けられ、自ら立つ、手を借りるなんて己のプライドが許せなかった。
「あなた、これからどうするの?」
「あんたは、これからどうすんだい」
「私は鍵を盗んだ罪で、あなたと駆け落ちでもしてやろうかなって」
「それは確かにいい案だなァ」
『初恋』喰って喰われたモン同士、恋愛なんて可愛らしい二文字からは二人して縁遠いが、ある意味そんな自分たちだからこそ、まぁ、お似合いな二人なのかもしれない
女の右手を握ってコンクリート製の床を蹴った
「いっそのこと墓場まで踊ろうや」
終
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