第17話 舐めさせないよ

 親衛隊の詰所っぽいところで待っていたけど、なかなか戻って来ないことに痺れを切らし掛けたところに親衛隊の一人が申し訳なさそうに扉を開けながら、俺達の様子を窺う。


「あの~大変、申し上げにくいことなんですが……た、隊長?」

「ん? お前はバルメか……どうした? そんなところで」

「あ、そうでした。えっとですね……」

「おい、散々待たしといてまだ時間が掛かるとか言わないよな?」

「あ、いえ。そうではなくてですね。あの、その、なんて言いますか……そのですね」

「バルメ、何を言いたいんだ」

「コータ、もういいだろ。ここにいるのも飽きた」

「まあ、待ってよ。折角ここまで来たんだし、文句の一つでも言いたいじゃない」

「そうか。だが……」

「ひっ……」


 アオイが部屋に戻ってきたバルメなるイケメンさんをジロリと睨むと、イケメンさんが怯んでしまう。だから、それだとちっとも話がすすまないんだって。


「ねえ、アオイもこう言っているんだし、早いとこ用件を言ってよ。会うの? 会えないの? どっちなの?」

「えっと、ですから……その……」

「もういい! こっちから会いに行けばいいんだろ?」

「あ、ですから「バルメ!」……ひぃ」

「さっさと用件を言うんだ!」

「は、はい。あのですね『ここは狭いので別室を用意したから』とそちらまでご足労願えますか」

「たったそれだけのことを……」


 ようやく用件を伝え終えたバルメはその場にペタリと座り込む。


「いや、何座ってんの。そこまで案内しなよ」

「そうだぞバルメ」

「あ……すみません」


 バルメは立ち上がりお尻を払うと「こちらへ」と俺達を先導し、部屋から出ようとしたところでタロが淋しそうに鳴く。


『クゥ~ン』

「いや、鳴く程じゃないでしょ。小さくなればいいだけだし」

『あ、そうだった』


 城に入った時と同じくらいの大きさになったところで、タロも機嫌良く俺の横に並んで歩く。


「ねえ、ちょっと聞きたいんだけどさ」

「は、はい。なんでしょうか」

「もしかしてなんだけど、俺達をただ単に待っている訳じゃないよね?」

「え、えっと……それはどういう意味でしょうか?」

「だからね、部屋に入った瞬間に『ドン!』って矢とか何かが飛んで来るってことはないよねってこと……どうなの?」

「えっと……」


 バルメと言われたイケメンさんはどうしようとマイクさんを見るが、マイクさんは自分は関係ないとばかりに首を横に振る。


 っていうか、なんで元親衛隊長が着いて来ているのかが不思議に思ったので聞いてみる。


「で、おじさんはなんで着いて来ているのかな?」

「気にするな。俺は俺でお前に興味があるから、着いて行くだけだ。それと、俺に理不尽な思いをさせたあの二人がどうなるのかも興味がある」

「そう。なら、いいけどさ。俺の邪魔はしないでよ」

「しないさ。なんなら手伝ってもいいと思っている」

「ふ~ん、ま、いいけど……」


 結局、バルメから返事は聞けなかったけど、なんか小細工はしているに違いないだろう。

『肯定します』


 そんなんこんなで俺が会わせろと行った連中が、待っているであろう部屋の前に着くとバルメが「どうぞ」と両開きの扉の前に俺を立たせようとするので、俺も「開けていいよ」と返す。


「え?」

「へ? なんで開けないの?」

「あの……ですから、そこの扉を開けて中に入って欲しいんですが……」

「うん、それは分かったから。だから、開けなよ。ほら!」

「えっと、ですから「バルメよ」……隊長~!」

「何もないのなら、お前がさっさとその扉を開ければいいだけの話だ。それとも何かその扉を開けられない理由でもあると言うのか?」

「ぐぬぬ……」


 俺達を待っている連中がいるであろう部屋の扉の前で扉を開ける開けないを言い争っていると、シビれを切らしたのか中から『バタン!』と勢いよく扉が大きく開かれ「遅い!」と文句を言われた。


 部屋の両扉が開かれたことで部屋の中を確認出来たのだが、その部屋の中には矢をつがえた状態で、部屋の入口である扉の方を狙っていた数人の弓兵を確認出来た。そして、その後ろには剣を構えた状態の鉄鎧を装着した兵士が更に数人いた。


「遅いぞ!」

「も、申し訳ありません」


 さっき「遅い」と言ったのは真っ先に逃げるように部屋から出て行ったイケメンさんだ。そして、もう一度俺達に向かって「遅い」と言ってきた。


 ここまで強気になれたのは、弓兵や兵士の後ろに隠れているからだろうが、それはそれが意味を為した場合の話だ。


「もう、面倒臭い。『麻痺パラライズ』」

「「「ぐ、が……」」」


 俺がその部屋の中、全員に対し『麻痺パラライズ』を掛けると、立っていた者は短い悲鳴と共にその場に跪き、弓を構えていた者は堪らず矢を放つと、あちこちに矢が放たれ、更に悲鳴が重なる。


「おぉ~なんか凄いことになってるね」

「……お前がやったんだろうが!」

「おじさん、人聞きの悪いことを言わないでよ。俺は矢をこちらに向けられて怖かったから、思わず『麻痺パラライズ』を放っただけでしょ。矢が当たった人は、その矢を放った人に文句を言うべきだよね。違う?」

「……まあ、そうなるのかな」

「ちょっと、マイク様! 何をこんな子供の口車に載せられているんですか! どう考えてもコイツのせいでしょ!」

「ジム、そもそもコイツが言われるままに扉を開けたら、小僧だけでなく俺もお前もハリネズミだったぞ。それでも小僧が悪いと?」

「……いや、ですが」

「もう、済んだことはいいじゃない。それより、これどうするの? 俺が会わせろって言った連中はどこなの?」


 そう、部屋の中にはどこにも王族らしき雰囲気の連中はいなかったのだ。部屋の中にいたのは弓兵と兵士だけだったのだ。


「とことん、舐めてくれるよね。じゃあ、先ずはあのイケメンに聞けばいいのかな?」


 俺は「アババ……」とまだ体の自由も効かずに四肢をだらしなく伸ばしきっている連中を跨ぎながら、さっき偉そうに言っていたイケメンを探す。


 兵士が折り重なるように倒れている中から白い制服を着た男を引っ張り出すと顔を確認するが、どれも同じ様なイケメンだったので自身はないが、白い制服は一人だけなので間違いないだろう。


「多分、コイツだよね」

『肯定します』

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