第18話 来ないならこちらから

 親衛隊と思われるイケメンを折り重なっている兵士達の間から引きずり出して質問する。


「ねえ、聞こえる?」

「……」

「あれ? 聞こえているよね?」

「……」

「そっか、聞こえないかぁ~じゃあ、しょうがないよね」

「……」


 聞こえているハズなのにイケメンは何も聞こえません! 聞きたくありません! といった感じで自分の耳を両手で押さえ黙って目を閉じて縮こまっていたので俺は肩掛けバッグの中から解体用のナイフを取り出すとケースを外し抜き身の状態にして刃の表面を確認する。


「ん、これなら耳くらいなら簡単に切れそう。聞こえない耳ならいらないし、ゴブリンの素材取りと同じ様に耳を「な、なにをするつもりだ!」……え? だって、俺の話を聞いてくれないのならいらないかなぁ~と思って」

「だからって、それはないだろ!」

「でも「俺がやろう」……そ、じゃお願い」

「……ふぅ聞こえているのだろう。元隊長として、そのままの状態ではどうにもならないどころか、悪手であることは分かるだろ」

「……」


 イケメンの耳を左手で掴もうとしたところでジムから何をするつもりだと声を掛けられたので、見たまんまのことを言えば不満そうに異を唱えてくるので俺も言い返そうとしたらマイクさんが任せろと言ってきたので交代する。


 イケメンにマイクさんが声を掛けるが、その体をビクッとさせるだけで相変わらず目も開けないし、耳は塞いだままだ。


 マイクさんはそんなイケメンの上半身を起こすと、その頬を張る。


「痛い……」

「ふん、喋れるのならどうしてこういうことをしたのかを正直に話せ。話さないなら、俺からはもう手助けすることは出来ない。そこの子供に話したくなるまで好いように嬲られるんだな」

「隊長!」

「よせ。俺はもうだ。お前とは何も関係ない」

「そ、そんなぁ~」

「いいから、離せ!」


 マイクさんがイケメンにちゃんとこうなった理由わけを話せと言うもまだだんまりを決め込むイケメンに話さないなら、このまま俺に拷問されろとマイクさんの足に縋っているイケメンに言うがイケメンはこの足を離したらオシマイとばかりにより一層しがみ付く。


 そんなやり取りを見てたけど……いや、別に拷問するような嗜虐趣味はないからね。ちょっと脅したら話すかと思ったんだけど意外と芯が強いのか、それとも背後に控えているのがよほど怖いのかのどちらかと思うが、後者だろうな。なんせ国の中央にいる連中だから。


「おじさん、もういいよ。おじさんは場所は分かるんでしょ。なら、俺をそこまで連れて行ってよ。こうなったら、俺が直接乗り込んだ方が早いし」

「お前なぁ、そう簡単に言うなよ。相手は王族だぞ」

「それがどうかしたの? 俺はもう怒ってんだよ。ここの娘を助けたのにどうして俺が狙われるのさ。だから、そんな命令を下したオバさん達に我慢ならないし。そんなことをしていると知っていて何も対処しない連中にも文句言いたくもなるでしょ!」

「……まあな」

「それとも、おじさんも関係者の一人として俺と対応する?」

「いや、止めておこう。俺の勘だがお前とは争わない方がいいと感じている」

「それはどうもってお礼を言えば好いのかな? で、案内はしてくれるの? どうなの?」

「ふぅ~しょうがない。案内しよう」


 元親衛隊隊長ならば、こんなくだらない仕返し? を企んだオバさん達の場所が分かるだろうと案内を頼むと不承不承といった感じで廊下を歩き出したので、俺達も黙って着いて行く。


 しばらく歩くと一際豪華な感じの大きな扉の前に立つと「ここだ」とマイクさんが立ち止まるので「開けて」とお願いする。


 マイクさんは嘆息すると『コンコンコン』と短くノックすると「入れ」と中からは横柄な感じの女性の声がしたのでマイクさんはゆっくりと扉を押し開く。


「ん? お前はマイク……親衛隊を辞めたのでは?」

「はい。辞めました。辞めましたが、第二王妃様にお会いしたいと言う方がおりましたので案内を仰せつかりました」

「私に?」

「はい」

「さっきの手配書の小僧のことなら……ハッ! もしや「はい、その通り『拘束バインド』」……な、何をする! 私を第二王妃と知っての狼藉か!」

「もう、やかましいなぁ~アオイ、頼んでもいい?」

「それはいいが、どうすればいいのだ?」

「とりあえず担いじゃって」

「うむ、分かった」

「「「……」」」


 第二王妃は部屋の中央に置かれているソファに鷹揚に座っていたが、マイクさんを見るとどうしてここに来たかと尋ね、おじさんは素直に俺を連れて来たと答えるが、もうやり取りも面倒なので直ぐに拘束するとアオイに担いでもらう。


 部屋にいた侍女達は俺達の様子に驚いてはいたが騒ぐこともなくただ黙って俺達の様子を見ていた。


 そしてマイクさんはアオイを見て「そのままでいいのか?」と聞いて来たが俺は「構わないから、次お願い」と返す。


 マイクさんは俺の返事に嘆息するとその向かいの部屋の扉の前に立つと先程と同じ様なやり取りを交わして部屋の扉を開けると同時にソファに座るオバさんに拘束バインドを掛けるとアオイに同じ様に担いでもらい、王様との謁見場所へと向かうが、その前にジムさんに王太子兄弟もその場所に来てもらうように伝言を頼む。


「俺が?」

「そうだよ。今、暇なのはお兄さんでしょ」

「でも……「ジム、いいから行って来い」……マイク様」

「いいから、行け! もしごねるようならソフィア様に関連することだと言え。それとマリオ王子には『絶対に面白いことが見られるから』と言え。分かったら、行け!」

「は、はい!」


 マイクさんに言われたジムさがは王城の廊下をダダッと掛けていくの見てから、マイクさんに話しかける。


「あんなこと言っていいの?」

「いいさ。それに面白いモノが見られるのは確かだろ?」

「まあ、それは否定しないけどね」

「だが、お前のシナリオにはもう一人足りないんじゃないのか?」

「そうだけど、どこにいるか知らないし。後でどうにでもなるかと思っているんだけど。ダメかな?」

「ふむ、そうだな。もしこの騒ぎがバレて、それがソフィア様に関することだと言うことが分かれば……」


 俺の問い掛けにマイクさんは考え込んでいるが、やがて口を開く。


「そうだな。バレれば考えられるのは篭もるか逃亡だな。それだと面倒だから、登城するように言ってもらうのが一番だろうな」

「誰が?」

「そりゃもちろん……ソフィア様の父上ってことになるだろう」

「でも、話を聞いた限りじゃやる気なさそうだけど?」

「そこはヘリオ様次第だな。さ、着いたぞ」

「へ~ここがそうなんだ」

「ああ、ここが所謂『謁見の間』だ」

「ふ~ん」


 俺はその無駄に大きく豪勢な扉の前で感心するが、そんな俺達を手に持つ槍で「何要だ!」と制してくる衛士がいた。だから、俺は素直に答える。


「ソフィアの父ちゃんに会いに来た」

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