第3話 そんな話は聞いてません
湖からクレイヴ領の領主であるアルフォンス・フォン・クレイヴの館に着くとクリフさんは馬車を門の前で止め、門衛にソフィアが来たことを知らせると、門衛は頷き門扉を開放してから馬車を通す。
馬車はそのまま敷地の中へと進み、館の正面玄関の前で止められる。
俺とタロが馬車から降りると、玄関前で待っていた使用人らしき人達が驚いたのが分かる。そりゃ、姫さんが出て来るものとばかり思っていたのに、こんな子供とデッカいオオカミが出て来ればそりゃ驚くよな。
クリフさんが馬車の横に立ち姫さんをエスコートすると姫さんはクリフさんの左手に自分の右手を乗せてゆっくりと馬車から降りてくる。
「お久しぶりです。クレイヴ家の皆様」
「ソフィア様、本日はようこそ。お館様はお部屋にてお待ちしております。こちらへどうぞ」
「ありがとうございます」
姫さんが館の家令らしき男性に案内され館の中に入るのを確認した俺は、これで依頼達成と小さくガッツポーズをするとクリフさんに話しかける。
「クリフさん、無事に姫さんをお届けしましたよ」
「はい。確かに確認致しました。これで依頼は完遂ですね。では、これをどうぞ」
「うん、ありがと。じゃあ「まだですよ」……え?」
クリフさんがまた妙なことを言い出したので俺は受け取った依頼書をクリフさんに見せる。
「ほら、ここ。クリフさんのサインありますよね。だから、これで依頼は完了ってことでいいんでしょ?」
「ええ、間違いなくこの依頼は完了しております」
「なら「いえ、ダメです」……え?」
「ですから、何度も言いますがお嬢様を救って頂いたことのお礼がまだですので」
「だから、それはいらないって言ってるのに……」
「そういう訳にはまいりません。王家の者が救ってもらったのにお礼も何もしないままという訳にはいかないのです。コータ様は面倒だとお思いでしょうが、これも王家の品位を保つ為には必要なことなんです」
「え~」
「お分かり頂けたのなら、こちらの館にお部屋をご用意しておりますのでごゆっくりとお寛ぎ下さい」
「あの、確認なんですけど」
「はい、なんでしょうか」
「もしかしたら、俺は王都の王様に会うまでは同道するしかないんでしょうか?」
「おや、言ってませんでしたか?」
「ハァ~」
クリフさんと一緒に館の中に入ると、俺より背の高いメイドのお姉さんがニッコリと笑い俺を案内しますというので「はぁ」と短く返事をしてから後ろを着いていくと「こちらになります」と扉を開け、部屋の中へと案内してくれた。
パッと見は二十畳超えのワンルームだが、大きな窓に天蓋付きのベッドに小さめのテーブルに二脚の椅子、それと壁際には扉があり開いて見るとトイレと浴室だった。
案内してくれたメイドのお姉さんにお礼とこういう時には確かチップだよなとバッグから銀貨を一枚取り出しお姉さんに渡すとニコリとしながら「いらないわよ」と返された。
「えっと、どうして?」
「ふふふ、私達はそういうのを受け取ると怒られちゃうの。背伸びしたいのは分かるけどね。気持ちだけ受け取っておくわ。ありがとうね」
「分かりました。ありがとうございます」
「じゃあね。また何かご用があればお呼び下さい」
そう言ってお姉さんは部屋から出る。
「そう言えば、専属メイドの話はどこにいっちゃったんだろう。密かに楽しみにしていたんだけどな~」
『ねぇ……』
「何?」
『お腹減ったんだけど』
「あ~そうか。そう言えば朝から食べてなかったっけ」
『そうだよ。もうぺっこぺこだよ』
「ちょっと待ってて」
タロに断り俺はアイテムボックスの中から良さげな物を探すと「これでいいかな」と取り出し、お皿の上に並べる。
「はい、タロの分」
『うん、ありがと』
「落ち着いて食べろよ」
『うん、だいじょうぶ』
俺もタロと同じ物……サンドウィッチを頬張りながら、どうやったら逃げられるのかと考えてみたけど途中で、その考えを放棄した。
どうせなら、王都にも行ってみたいし、王様ってのも見てみたい欲求の方が強かった。それに王都ならもっと美味い物があるかも知れないし、何か面白い物があるかも知れない。それに少しはラブっぽいなにかがそろそろあってもおかしくはないだろうとも思っている。
『否定します』
タロと二人で遅い朝食兼昼食兼オヤツを食べ終わったころに部屋の扉がノックされる。
「はい、どうぞ」
「失礼します。コータ様、お館様がお呼びです。申し訳ないですが、今からよろしいですか」
部屋の扉を開けたところで、お辞儀をしているメイドのお姉さんが目に入ると「会いたい」と言われ呼び出しを受ける。でも、ちょっと待ってと聞いてみる。
「え? お館様って確か……姫さんの」
「ええ、お爺様にあたるお方です」
「そうですよね。そんな方がどうして俺なんかを?」
「すみません。私はお呼びするようにと言われただけなので……」
「あ、そうなんですね。すみません。じゃあ、タロ。お留守番しといてね」
『ワン!』
この館で数日とはいえ、お世話になるのだから無視するわけにもいかずタロに留守番を任せると俺は黙ってお姉さんの後から着いていく。
「ねえ、ちょっと聞いていいかな」
「なんでしょうか」
「その、お館様って怖い?」
「ふふふ、そんなことはありませんよ。怒られることはありませんから。うふふ」
「ホントかな~」
「大丈夫ですよ。はい、着きましたよ。こちらです」
お姉さんは一際大きく豪華な感じの扉の前で止まると、その扉をノックし中からの返事を待つと「おう、入れ」と野太い声が聞こえる。
お姉さんは「失礼します」と扉を開けてから軽くお辞儀をすると「コータ様をお連れしました」と俺を部屋の中へと招き入れるが入った途端にお館様だろうなと一目で分かる偉丈夫な老人が立ち上がり俺に向かって怒鳴ったのだ。
「コータと言うのはお前かぁ~!」
「えぇ~聞いてた話と違うんですけど……」
『肯定します』
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