第4話 誰も聞いてくれない
いきなり怒鳴られたものだから萎縮してしまったが、姫さんがトトトッと俺の側に小走りで駆け寄ると俺の手を取りニコリと笑う。
「もう、お爺様。ちゃんと私のお話聞いてましたか? コータ様は私の命の恩人なんですよ」
「ソフィア、その手を離すんだ!」
「あ、これですか~うふふ、どうしよっかな~ねえ、コータ」
「あ……」
これはヤバいと感じた俺は急いで姫さんの手を振り払うと姫さんが両頬を膨らませ俺を睨む。
「小僧! なんでソフィアの手を離すんだ!」
「え? 俺が悪いの?」
「そうよ。コータ」
「ソフィア、その手を離せ!」
爺さんは俺が姫さんの手を振り払うと、何故か怒鳴られた。それを聞いた姫さんが了解を得たとばかりにまた、俺の手を握ってくるが、また爺さんが怒鳴る。
どうすればいいって言うんだよ。
「と、とにかくコータ様。こちらへどうぞ」
「はい」
俺はクリフさんに勧められたソファへと腰を下ろす。俺の前には姫さんが不機嫌そうに座っている。爺さんは立ち上がると姫さんの隣に座る。
「お前がコータなんだな」
「もう、お爺様」
「ソフィアから話は聞いた。ありがとう」
「へ?」
さっきまでの怒声はなんだったのかと思えるくらいに俺にお礼を言うと頭を下げてくる。
「えっと、どういうことかな」
そう言って姫さんを見るとなんだかニコニコしている。ますます持ってどう言うことなのかとクリフさんを見れば手で顔を押さえている。
「ん~?」
「だが、ソフィアは渡さんぞ!」
「ええ、要りませんけど」
「なんだと! お前はこんなに綺麗な孫娘を要らないと言うのか!」
「はい、要りません」
「どうしてだ!」
「どうしてって、いや渡さないと言っているんだからどうしてはおかしいでしょ?」
「そうじゃないだろ!」
「え?」
「だから、なんで要らないなんて言うんだ。おかしいじゃないか」
「いや、要らないから要らないって言っているだけなんだけど」
「だから、それがおかしいって言ってるだろ!」
「じゃあ、も……」
爺さんを揶揄うつもりで「じゃあ、もらおうかな」と言おうとしたところで姫さんの目がキラリと光った気がしたので慌てて引っ込める。
まあ、爺さんとしては可愛い孫娘であるソフィアが俺の嫁になるとか言ったんだろうなとは簡単に予測が付く。でも俺が要らないと簡単に言ったものだから、断られたことを不思議に思ったのだろう。本当に要らないから放っておいて欲しいんだけど。
「えっと、それで話は終わりなんでしょうか?」
「あ、あ~済まない」
「いえ、じゃあ俺は「まだだ!」……え~」
爺さんも落ち着いた様なので俺は話が終わりならとソファから腰を浮かせたところで、爺さんから呼び止められる。
「あの、まだってどういうことでしょうか」
「ワシからの礼がまだだ」
「え?」
「だから、ワシからソフィアを救ってくれたことへの礼をしていないと言っている」
「あ~それならソフィアの父である王様からってことで話が付いているハズですよ。ねえ、クリフさん」
「はい。その通りです」
「だから「い~や、ダメだ」……え~」
姫さんの父親である王様から礼はもらうと言っているのに姫さんの祖父である目の前の爺さんはダメだと言うんだけどどういうことなんだろうかと言えば、姫さんの祖父である自分が話を聞いて何も礼をしないのはダメだということらしい。
もう、面倒なんですけど。
「分かりました。それで俺はどうすればいいんですか?」
「ん? 小僧、さっきと随分、態度が違うな」
「もう、いいんです。変なことを言う人ばかりで丁寧にするのも疲れました。幸い、ソフィアも友人として接してくれてもいいと言うので」
「もう、コータったら……友人なんて。私はその先「そういうのはいいから」……もう!」
「……小僧、いやコータよ。誓ってソフィアに妙なことはしていないんだな?」
「してません!」
「嘘よ!」
「「「え?」」」
「小僧……説明しろ!」
「え~」
おかしい。俺は姫さんに手を出すようなことはしてないぞ。
『肯定します』
じゃあ、なんで姫さんは嘘って言うんだ。俺が知らない内に何かしたってことはないだろう。
『肯定します』
分からないなら、聞いてみるしかないと姫さんの顔をジッと見る。
「ソフィア、嘘ってのはどういうことなのかな。俺はお前に手を出すようなことはしていないと記憶しているけど」
「だって……じゃない」
「「「え?」」」
「だから、私の頭をぽんぽんしたでしょ!」
「「「え~」」」
俺だけじゃなく爺さんもクリフさんも姫さんの発言に驚いてしまう。嘘だと言うから、どんなことをしたと言われるかと身構えていれば、まさかの『頭ポンポン』だとは。
「クリフさん、頭ポンポンは刑罰に当たりますか?」
「いえ」
「では、どこかの風習でプロポーズに当たるとか?」
「いえ、その様な話があることは聞いたことがありません」
「ほっ……じゃあ、俺は無罪と言うことでいいですよね」
「そうだな「ダメ!」……ソフィアよ。コータは止めておけ。どこかで活きのいい貴族のボンボンを見繕ってやるから」
「イヤなの! コータがいいの!」
「お断りします」
「イ~ヤ~!」
「シンディ」
「承知しました。お嬢様、参りましょうか」
「もう離して!」
「お嬢様、私が優しく語りかけている内にお願いしますね」
「……ハイ、ワカリマシタ」
「では、クレイヴ様、クリフ様、コータ様。お嬢様は失礼させていただきます。はい、お嬢様もご挨拶を」
「シツレイシマス」
「「「……」」」
どこかのネジが一本外れたかの様に片言になったお嬢様を専属メイドのお姉さんが話しかけ連れて行くのを黙って見送る。
「クリフよ大丈夫なんだよな」
「はい、シンディに任せておけば大丈夫ですから」
「ふむ、そうか。それでコータよ。繰り返しにはなるが、お前にはその気はないのだな?」
「ええ、ありませんよ。王族なんてとんでもないです」
「まあ、今はそれでヨシとしておこう。それで褒美の話になるんだが、何か欲しいものはあるか」
「ん~特にはないんですけど、一つだけお願いしてもいいですか?」
「おお、いいぞ。ワシに出来ることならな」
「では、キンバリー領でもお願いしていることですが……」
俺はいらないと断っていた褒美だけど、キュリ達リザードマンの為になるならとここでもリザードマンの保護というか友好種族として付き合ってほしいとお願いしてみる。
「なんだ、そんなことか。それならクリフからも聞いている。心配することはないぞ」
「そうなんですね。でも更にクレイヴ家が名前を連ねることで、より堅牢になるかと思いますが、どうでしょうか」
「ほう、なるほどな。王家だけでなく河川に隣接するこのクレイヴ家も後押しすることで、より保護しやすくなるということか。面白い!」
「じゃあ、俺はこの「まあ、待て」……えっとまだ何か」
「ああ、ソフィアはやれないが、他の孫娘を持って行け!」
「え~」
「なんだイヤなのか?」
「だから、俺の話を聞いてましたか?」
「ああ、王家との繋がりはイヤなんだろ。なら、ワシの孫娘ならいいだろ。なんなら、少し歳はいっているが娘でもいいぞ」
「だから、そうじゃなくて……もう、どうして?」
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