どこまでも美しく、そして儚い夏の一夜
- ★★★ Excellent!!!
描写の一つ一つがとても繊細で、文字を読むたびに言葉が色や音となって脳裏に映し出されるようでした。こんなにも夏の夜を鮮明に描き出せる人に出会うのは滅多になく、とてもすごいと感動しました。
兄さんが死んだ。しかしそれは、火傷が原因ではなく彼女の殺虫剤のせい。気づかないうちに張られていた伏線と衝撃の事実に胸を掴まれたような気がしました。
そして一番印象的だったのは、殺した理由。憎しみや恨みではなく、ただ本人の意思を尊重するためだけのこと。殺すのか生かすのか。どちらが正しかったのかは分からない。けれども、最後に花火が打ち上がったことから、きっと兄さんは幸せだったに違いありません。
とても美しい物語をありがとうございました。