22話
途方もない熱源が燃えていた。
悍ましささえ覚える、感情が、愛情が、そこで燃えていた。
純然なる好意、もっと。
「にーさん、すき、ほんと、すきなんだ」
杖化け物が困ったように眉根を寄せた。
なんで?
嫁にしたいなら喜んでよ。
受け入れてよ。
何が違うの?
杖化け物の好きとこの好きの、何が違うのか教えてよ。
出来ないのなら。
聞きいれてよ。
翔颯は、杖化け物の、想い、疑わず受け入れたってのに。
「すきなのに…ばか…」
翔颯は杖化け物を強く睨んで非難した。
だって好きって気持ちを信じてくれないなんて酷い。
そうだ、酷い。
酷い酷いと子供じみた攻撃が如く、翔颯は裾を掴んだ拳で杖化け物の腿を軽く殴った。
なんて恐れ多くてとんでもない事を。
今すぐ謝罪し平服すべきだ。
なのに杖化け物は眼を見開き、ブレザーに身を包んだ未熟な生き物を前に慄き息を呑む。
なんだか恐れているようだった。
もちろん翔颯も怖かった。
消えてしまわないか不安で怖かった。
二度と会えないと思うから。
だってこのひとは、杖化け物。
相いれない人外最強。
「…後悔、するな。決して後悔、するでないぞ」
杖化け物が苦し気に吐く。
苦痛で美麗な顔面歪んでいる。
さっきまでの余裕な態度が嘘のようだった。
それが酷く人間臭くって、翔颯はますます杖化け物が好きになってしまった。
再度杖化け物に恋をした翔颯の涙は、もう止まっていた。
強い子翔颯はもう落ち着いてしまったし、どんな結末だろうと我慢出来そうだった。
だから最後の確認を絞り出すように問われた翔颯は、しっかり自分の意思を気持ちを答えた。
「絶対後悔なんかしないし、にーさんこそ、飽きたとか、言いそう、杖化け物だから」
それは杖化け物だから、諦める。
杖化け物の心変わり、誰が止められるのか教えてくれ。
だけど、でも、後悔は、する。
ここであなたを諦めたら。
逆に翔颯の心変わりだって?
そんな事あり得ない。
それくらい、好きだって気持ちが強固だった。
「っ、ふははははは!此方に!斯様な口を!まったく其は!笑わせる!だが赦そう!此方の最愛、此方の番よ」
驚くべき音量で笑われ、翔颯は椅子から転げ落ちそうになった。
けれどその前に杖化け物が頬を撫でてくれた。
それだけでもう何処にも行けない、目の前のひとの物になったような気がした。
単純すぎる自分に体温が上昇する。
きっと顔が真っ赤になってるに違いない。
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