21話
それは、我慢。
これからも、ずっとずっと、ずっと、我慢するつもりだったのに。
我慢出来なくて訴えたのに。
こんなに必死になって訴えているのに。
生まれてはじめて好きなひとに好きって告白しているのに。
好きなのに。
どうしようもなく好きなのに。
ひどい。
酷い酷い。
お前の所為だ杖化け物。
全部自分都合で話を完結させてる、人外め。
翔颯の本音が、ひとでなしに牙を剥く。
「どうせっ!」
一呼吸、吸って吐き出す絶唱が如く。
「どうせ俺がおとし子だからだろ!」
「だからつがい、いやなんだろ!」
「なんだよ!ずっと独りなのに!」
「これからも!だけど!にーさんが!」
我慢してたものと一緒に、翔颯は涙を流す。
「おれ、」
「はじめて、」
「だれかと一緒に居たいって、」
「おもったのに、」
「うそじゃないのに、」
「すきなのに、」
「もうやだぁ…」
その激情の高熱は長くは続かなかった。
我慢する、諦める。
そのふたつで生きてかなきゃいけないんだって重々理解してたから
だって翔颯は知っていた。
叫んで訴えたところでね、如何とも出来ないって賢い翔颯、哀れ幼い時にもう気付いてたんだ。
けど流れた涙はすぐに止められず、翔颯は杖化け物から手を離し両手を顔を覆った。
そしたらどうだ。
涙が止まらない。
情けなくなんかないさ。
翔颯は知っている。
荒れた心を落ち着かせる為に、身体が涙を流させコントロールしてるのさ。
いつもそうさ。
いつも翔颯は独りで泣いてた。
泣いて泣いて我慢して諦めた。
繰り返してる事繰り返してるだけの事。
だから今、泣いて、すっきりして。
落ち着て我慢して諦めて。
また独りで、生きてゆこう。
好きなひとが出来て喜んで独りじゃなくなるんだと思った自分、我慢しよ?
「すまない」
そんな翔颯にひとつ謝罪。
やな謝罪。
口ばっかり。
慣れさせられたそれに翔颯はうんざり。
もう杖化け物も人間も全部おとし子が嫌なんだと。
索漠に凍える。
「かような、事を、言わせてしまった、すまぬ、すまぬ」
口ばっかりを知り尽くしていたからこそ、杖化け物の謝罪に心が籠っている事に翔颯は気付いた。
その事に驚いていると頭に何か触れて、それが動く。
まさか、頭を、撫でられている?
撫でられている?
本当に撫でられている?
そっと顔をあげた。
金の双眸がまるで太陽のように、太陽なのに、翔颯だけを強く見つめていた。
それは親が子を見る眼差しに似ていた、けれど本質は同じでも、籠められた熱情は赤熱。
熱かった。
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