第26話 闇魔法からのイベント告知

「それで、なんだったっけ?闇魔法についてだったっけ?」




「そう。私は闇魔法なんて聞いたことないから。」




「まあ、聞いたことがないのは当然かな。だって、闇の精霊たちと僕しか使えないんだもん。聞いたことあったらめちゃくちゃビックリするね。」




「そうなんだ。それから?」




「それから、他の属性の魔法よりも威力はちょっと強いかな。」




「え、じゃあ闇は光以外には負けない?」




「まあ、基本はね。でも、光にも勝てるのは勝てるけど、それは実力次第だね。」




「それもそうだよね。それで、どんな魔法なの?」




「どんな魔法?どんな、どんな、うーん、でも、もうすでにいくつかは持ってるでしょ。【吸収ドレイン】とか【影収納ストレージ】とか。そういう奪ったり、影を使ったりするのが多いかな。あとは、ちゃんとした攻撃魔法とか、防御魔法とかだね。アヤネも見たでしょ?兎と鷹の魔法。あれは、れっきとした攻撃魔法だよ。防御は見てないかもしれないけど使ってたよ。アヤネが【神速】使ったときに。」




「え、そうだったの?でも、なんで?攻撃されてもないのに。」




「あのとき、なんかおかしいって思わなかった?」




「思った。カンガルーが後ろにいたから、【神速】よりも速いのかと思ったんだけど、どんどん遠ざかるから。あれ?ってなった。え、もしかしてそれと関係あるの?」




「大有りだね。なんなら、それが結果だね。まず、カンガルーが魔力を脚に纏わせて瞬間的に脚力をバケモノにしたの。それで、他の精霊が全員で【ダークウォール】っていう魔法でカンガルーが踏むための壁を作った。それをカンガルーがぶっ蹴ってカンガルー砲弾になったの。」




「なるほど。そういうことだったんだ。それにしても闇の精霊たちは誰かを砲弾にしなきゃ気が済まないの?ペンギンもされてたし。」




「ペンギンはそれが仕事、的なとこあるし、仕方ないっちゃ仕方ないのかもね。」




「可哀想に。」




「それで闇魔法だけど、5個、選べるようになってるんだ。どうする?」




「どうする?って言ってるけどどの中から選ぶの?」




「え?あ、はい。」




メルケは手を叩き、魔法一覧のようなパネルを表示させる。




「この中から5つね。」




そのパネルにはたくさんの魔法の名前が載っていた。




「これ、全部で何個あるの?」




「50は越えてるね。」




「この中から選べと?」




「そう。」




「じゃあ、奇襲に向いてたり、AGIを上げたり、STRを上げたり出来るスキルある?」




「それなら、【シャドウフィール】なんてのはどう?魔法をかけた相手の影を実体化させて影を攻撃してもその影の持ち主に攻撃が入るよ。」




「それは良いかも。じゃあ、1つはそれで。他にはない?」




「うーん、他だと、これかな。【操影マニプレラ】、影を操り、攻撃する。でも、その影を攻撃されたら使用者に攻撃が入るから使うときには注意ね。」




「なるほど、なるほど。2つ目決まり、と。他には?」




「他には━━━━━」




その後、アヤネはメルケから残りの3つの魔法を貰い、闇エリアをあとにした。




「いや~、良かったな~。でも、闇エリアって探索出来ないんでしょ?存在意義が試練だけじゃない?よく分かんないけど。メルケの話によると、光もそんな感じらしいけど試練だけのためにわざわざ作ったのかな。運営さん、お疲れ様です。よし、【信頼の証】も貰えたし、海に行こう!と思ったけど今日はこの辺でログアウトしとこ。」




アヤネは光に身を包まれ、消えていった。






◇◇◇


「うっわ、マジかよ。よりにもよってお前が闇にいくか。もう、最悪。」




とある会社の一室、そんな愚痴をたたく男がいた。




「どうかした?」




その様子を見た女性が男の隣に移動する。そして、男は女性に自分のデスクにあるパソコンを見せる。




「闇の妖精の試練が突破された。しかも、アヤネだ。」




「うっそぉ。それは流石にダメだよ。相性が良すぎるよ。奇襲性に富んだアヤネが奇襲性に富んだスキルを手に入れる。正に鬼に金棒だあ。そうなると、現最強プレイヤーなんじゃないの?」




「そうかもな。だが、あと2エリアの試練が突破された。もうすぐで1つ増えるだろうがな。」




「もう、そこまで。とんでもないですね。誰と誰ですか?」




「ミナとシャロだ。」




「あぁ、あの2人ですか。どこをですか?」




「風と雪だ。」




「風と雪ですか。どちらも強めの設定なはずなのに。それを言ったら闇もだけど。闇はバケモノが行ったから仕方ない。それで、もうすぐ突破されるのはどこですか?」




「砂だ。」




「砂...ですか。誰です?」




「ユア。」




「あ、だからもうすぐって言ったんですね。それにしてもユアは相性が良いですね。【土の覇者】が砂ですか。この4人が強くなりすぎないように要観察ですかね。」




「そうだ。それから2次参入が始まる明日、イベントの告知するから準備しといてくれ。」




「自分でしたらどうですか?」




「こっちはイベント用フィールドの調整で忙しいんだよ!!多少は暇だろ?だから、頼んだ。」




「はいはい。分かりました。やっときます。」




「マジ助かる。サンキューな。」




女性は男に背を向け、自分のデスクに戻る。




「はあ。ホントに、もう。こっちだってあんたほどじゃないにしろ忙しいんのよ。こういう小さい仕事を何度も押し付けて、いい加減にしろっての、ホントに。」




そして、女性は愚痴を言いながらもイベント告知の文面をパソコンでうち始めた。






◇◇◇


翌々日、4月になり、2次参入者がログインし、『FSO』はさらに賑やかになった。そして、第1回イベントの告知もされた。




今日もログインしたアヤネとユアは1層のカフェでイベントについて話していた。




「対人戦だったね。」




「そうだったね。ちゃんと1次と2次を分けてるのは良いよね。一緒にしたらどうしても1次の人たちが有利になっちゃうもんね。」




「そうだね。でも、バトルロイヤルを何ブロックかに分けてやるんだね。」




今回、告知されたイベントの内容はこうだった。




・最初からプレイしている人と4月からプレイし始めた人で2つの階級に分ける。


・各階級でイベント参加者がほぼ等しくなるようにブロックに分け、バトルロイヤルを行う。


・各ブロックの上位5名が勝ち抜けで決勝ブロックに進み、バトルロイヤルをする。


・勝敗は制限時間1時間で生き残った時間、プレイヤーのキル数で決まる。


・各ブロックは500人までとする。




「まあ、ブロックに分かれるなら良いじゃん。生き残ってれば良いんだもん。強いプレイヤーとかち合う可能性が下がるでしょ。」




「それはそうだね。ユア、かち合ったらお手柔らかに、ね。」




「それはこっちのセリフだよ。どうせ妖精の試練クリアしたんでしょ?」




「ユアもしてるでしょうに。」




「してないよ~。」




「ユア、目が泳ぎすぎ。バレバレだよ。それで、どこに行ったの?砂とか?」




「!ち、違うよ。」




言い当てられて慌てて、違うと言ってしまうユア。




「てことは、試練をクリアしたことは認めたね。でも、まあ、ユアだし、砂でしょ。」




「なんで私は砂だと思うの?」




「だって、【土の覇者】と相性良さそう、って行きそうだから。」




「なる、ほど。」




またも言い当てられてなるほどしか言えないユア。




「そ、そういうアヤネはどこなの?」




「私はクリアしてないよ。」




「嘘はダメだよ。」




「そうだね、嘘はダメだよね。なら、ユアも嘘なしで言おうか。まあ、もうすでに分かってるけど。」




「え、私ってそんなに分かりやすい?」




「うん、結構わかりやすいね。」




「そっか、それで、アヤネは?」




「私は闇だね。」




「う~わ。これまた奇襲と相性が良いところに行ったね。」




「うん、めちゃんこ相性良いよ。もうね、最高。」




「なら、イベントに向けて準備万端だね。」




「もっちろん!」




アヤネとユアはその後もイベントについて話したり、他のプレイヤーで知っている情報(あまり無い)を交換したりして時間を潰した。

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