第25話 新スキルからの新装備
「あ、そうそう。ホントは試練の前に渡さなきゃダメなんだけど、これ、プレゼントね。」
闇の妖精はそう言って1つのアイテムをアヤネに渡した。
「なに?これ。【信頼の証】.....あ、海の妖精が言ってたやつだ。てかさ、さっき、なんて言った?ホントは試練の前に渡さなきゃダメ?あんた、プログラムでしょうに。ちゃんと動きなさいよ。」
アヤネにそう言われると闇の妖精は誇らしげに胸を張り、答えた。
「僕たち妖精は......って言うか、町以外の妖精と精霊は完全自律型プログラムなんだよ。だから、喋れるし、アヤネとも意思疎通が出来るの。それから試練をクリアしたお祝いを渡すね。」
闇の妖精は黒いキラキラした小さな粉をアヤネにかける。
「これは?......!」
アヤネは最初、何か分かっていなかったが、その粉をかけられ終わるとシステム音がスキル獲得を告げたため、一瞬、ビクッてなった。
<[スキル]【メルケの加護】を取得しました。>
<【メルケの加護】により[スキル]【闇精霊の戯れ】、【影潜り】、【気配操作】、【暗視】、【吸収ドレイン】、【影収納ストレージ】を取得しました。>
<【メルケの加護】により[装備]【闇の妖精】を取得しました。>
「えーっと、ん?待って待って。脳の処理が追い付かない。とりあえず、聞きたいことを聞いてもらっていい?」
闇の妖精はコクリと頷く。
「メルケって誰?」
すると、闇の精霊たちは「は?何、言ってんだ?」って顔でアヤネを見る。そして闇の妖精は首をかしげる。アヤネは知らないのかなと思いつつ、答えを待った。が、ちゃんと知っていた。
「言ってなかったっけ?僕の名前。」
アヤネは、なぜお前の名前が出てくる?と思ったが、「確かに。聞いてないかも。」と言って闇の妖精を見る。闇の妖精は「やっぱりかあ。」という顔をして説明を始めた。
「メルケっていうのは僕だよ。それで、試練をクリアした人に対して妖精は加護を授ける。今あげた【妖精の加護】シリーズは8個しかない。そして、同じ加護を持つ人はいない。だから【ONLY ONE】シリーズってやつだよ。スキルも装備も説明、見れば分かるだろうし、もう大丈夫そう?」
アヤネは「ちょっと待ってね。」と言って手を顎に当てて整理し始めた。
5秒、思考速度が合計で4.5倍になっているアヤネにとっては22.5秒考えると「オッケー。」と言ってこれからについて聞き始めた。
「これから私はどうすればいいの?」
「どうすればいいとは?」
「このエリアから出なきゃダメなのか、それとも観光して良いのかってこと。」
「ああ、そうゆうことね。えっと、自由だね。何してもいいよ。」
「そうなの!?じゃあ、観光するね!」
「どうぞ。って言ってもなんにもないよ。今、いるここは仮の世界、作り出している世界だから景色が見えているだけでホントは最初の状態だよ。」
最初の状態とは闇が纏わりついてくるような感覚でスキルも阻害され、動きも遅くなる状態のことだ。
「まあ、光はこの真逆なんだけどね。あ、一応、言っておくけど光エリアには入るときは気を付けてね。入ったら徐々にダメージ受けるから。」
「なにそれ!?なんで?」
闇の妖精、改めメルケは目を閉じ、一拍、間をおく。そして、口を開いた。
「闇だから?闇は光と相性が良くも悪くもあるんだよ。自分の攻撃は光に効きやすいけど光の攻撃は自分に効きやすいんだ。だから、光の妖精から加護貰ってる人と戦うときは気を付けてね。」
「分かった。...あ!そうそう。精霊たちと戦う前に言ってた精霊は精霊か妖精じゃないと倒せないってやつ。あれって、どういう意味なの?」
アヤネはメルケが試練の前に言った一言がずっと気になっていた。
「そのまんまの意味だよ。魔法を例えとしてあげるけど、精霊が使う魔法は人が使う魔法の3倍くらいの威力が出るの。まあ、基本は人と同じくらいの威力でしか使ってないけど。1対1とか、1対2とか、人と精霊の数が一緒、もしくは人の方が少ない時はその精霊が油断しまくりでミスばっかりしない限りは人が勝つことはまずあり得ない。だって、人が魔法を使っても精霊はその3倍の威力を出せるんだから相殺どころか押し返されちゃうのね。だから、精霊は結構、加減してるの。それから、物理攻撃があんまり効かないのは常に防御魔法を体に発動させてるから。中にはそれをしてない精霊もいるけどね。」
「なるほど。それじゃあ、妖精は?」
「妖精の魔法の威力は精霊の5倍。人からしたら15倍は出せるよ。出してないけど。それから、妖精を倒せるのは相性が悪い妖精くらい。でも、そもそも妖精と妖精が会うなんてことはないし、あったとしても視線で火花をバチバチさせるようなことは起きないでしょ。でも、町に行った妖精よりも各エリアを管理してる僕や他のエリアの管理をしてる妖精の方が間違いなく強いよ。」
「へぇ~、そうなんだね。ところでさ、精霊さんをテイムとか出来ないの?」
精霊たちとメルケは驚いた顔をしたあとに呆れたような顔になって口を揃えて言った。
『いや、出来るわけないだろ。』
「だけど、いつかは出来るんじゃない?テイムモンスターみたいなの。その対象に妖精や精霊は入れないでほしいけどね。」
「えぇ~、なんでさ。」
『え、だってペットみたいだもん。』
「キレイにハモるな!!仲良しか!」
「それはもう、とてつもないくらい仲良しだよ。.....それよりさ、アヤネ。スキルの確認とか装備の確認とかしなくていいの?」
アヤネはハッとなってスキルを確認し始めた。
「ありがとう、メルケ。スキル確認忘れちゃってたよ。話すのが楽しくて。」
「いや、大丈夫だよ。僕は試練を突破されたのにスキルを上手く使われないって状況を生みたくなかっただけだから。」
「あ、そうなの?でも、それなら安心していいよ。私、スキルの使い方は上手い方だから。」
確かに、AGI極振りでこの2層に来れている時点でスキルが強いのもあるが、スキルの使い方が上手というのもあるだろう。
「えっと、【闇精霊の戯れ】は闇の精霊を召喚して共に戦うことが出来る。
【影潜り】は自分もしくは誰かの影に潜れる。
【気配操作】は気配を1から100までの強さで操作できる。通常は50。
【暗視】は暗いところがよく見える。
【吸収ドレイン】は他者に触れている時に使うとその人のMPやHPの3分の1を自分のモノにできる。
【影収納ストレージ】は自分の影に武器やアイテムを入れておくことが出来る。取り出しは自由で影の中に入れた瞬間、重さが無くなる。
うん、予想以上のチートで内心をビクビクさせているけれども、私にピッタリ!精霊たちと戦ってた時から思ってたけど奇襲性がビックリするくらい高いよね。まあ、私としてはこの能力を貰えることにとってもとーっても感謝しておりますが。私の運に感謝。」
スキルの効果を確認したアヤネはその有能さに舌を巻いた。
「でも、なんで【影収納ストレージ】ってインベントリがあるのにアイテムとかを入れれるだけなの?」
「アヤネ、よく考えてみて。インベントリの操作をせずにアイテムを出せる。つまり?」
「予備動作なしでアイテムを出せる。」
「イコール?」
「.....より奇襲性が上がる!!」
「そう!!それが大事なんだよ。多分。」
「それは大事だ。それから装備だね。【闇の妖精のドレス】防御力が200上がる。
【闇の杖】闇魔法を使う時の威力が上がる。
【妖精の羽】MPが300増える。
なるほど。ん?ねえ、メルケ。闇魔法ってどうやって使うの?」
アヤネはそう問いかけながらメルケを見ると、メルケは口を開けたところで固まった。
「あれ?メルケ?おーい。」
「アハハハハ、いっけね。忘れてた。」
メルケはこう言いながら舌をちょっと出し、右手を頭に置いて「テヘッ」と可愛らしい声を出した。それを見たアヤネは立ち上がると、右手を上に上げ、メルケの頭に振り下ろした。
ボコッ
「「イッタアァァァァ。」」
アヤネがメルケの頭を叩いた直後、アヤネは自分の右手を、メルケは自分の頭を押さえて地面にうずくまった。
それを見ていた精霊たちは「えぇぇ」とか「あちゃー」とか言って困惑した。
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