第23話 第二の試練からの第三の試練

闇の妖精が手を叩くと黒を基調とした服を着た妖精が現れた。それも7人。




「えっと、みんな妖精なの?」




アヤネの問い掛けには今までも一緒にいた闇の妖精が答える。




「妖精は各エリアにただ1人だから妖精ではない。アヤネには見えてないだろうけど精霊が何体かいるの。」




アヤネは頷きながら聞き、説明を促す。




「それで、第2の試練は簡単に言うとこの精霊たちを見分ける試練、かな。」




「見分ける?」




アヤネは疑問顔になって闇の妖精を見やる。




「そう。見分ける。うーん、この中に、もうすでに精霊ではないのがあるんだけど、それを当てる的な試練かな。」




「え?すでに精霊じゃないのがあるの?」




アヤネは【気配感知】を確認してみると7人の内の2人からは気配を感知出来なかった。




「精霊じゃないのあるよ。これを見つけたら試練はクリアだけど、どう?」




「何人いるの?」




アヤネは【気配感知】で掴んだ情報を確かめるために闇の妖精に問い掛ける。




「精霊が5人で、精霊じゃないのが2人ね。」




アヤネはそれを聞いて確信した。と同時に罪悪感を覚えた。




(これってズルにならないかな?大丈夫かな。でも、自分が手に入れた力ではあるし、ズルじゃないよね?うん、大丈夫。ズルじゃない、ズルじゃない......はず。)




アヤネはそう思いながら【気配感知】の情報を基に答えを言い当てる。




「右から2番目と左端。」




闇の妖精はアヤネの回答に驚き、目を見開いた。




「合っ......てる。なんで?」




アヤネは「スキルで分かっちゃうんですよ!!」と言える訳もなく、回答に困っていると、闇の妖精は「まあ、良いや。」と言って妖精の姿になっていた精霊に元の姿に戻るように指示を出した。




「さて、と。最後の試練だけどさ、この子たちと戦ってもらいます。」




闇の妖精はそう言いながら元の姿に戻った10体の動物を見せながら言った。




「なぜ、10体?そして、なぜ動物?」




アヤネはさっきまで5体だったはずの精霊が増えていること、動物がいること、に疑問を持ち、闇の妖精に視線を向けた。




「そりゃあ、精霊はまだまだ半人前で自分の力だけじゃ、妖精の姿にはなれないから、だね。それと精霊は基本的にこんな感じで動物の姿をしてるんだよ。」




「あれ?そういえば、さっき、各エリアに妖精は1人って言ってたけど町にいた妖精は?」




「精霊は進化をする。力をつけて妖精になれる力が身に付いたら妖精になってエリアを出ていく。その人たちが作ったのがあの町さ。あいにくと、僕は行ったことないんだけどね。闇のエリアを管理してるからそんな簡単に出歩けないからね。」




「そうなんだ。ていうかスゴいんだね。あなた。見た目とか全然、スゴそうじゃないのに。意外だよ。」




「言うね。じゃあ、精霊たちに潰してもらおうかな。まあ、精霊に潰されなくても僕が潰すけど。」




「え!?精霊だけじゃないの?」




「精霊と互角以上に戦えたら余裕で試練クリアだけど、そこからは自由だから。僕は戦いたい。まあ、精霊は精霊か妖精が相手じゃないと倒せないだろうし、10体も一度に相手とか人間に対応できるとは思わないから。」




それを聞いてアヤネは焦る。




「待って待って。倒せないの?」




「倒せないよ。」




確認した結果のその言葉に顔が強ばる。




「勝たないといけないんだよね?」




「いや、10体も相手にして勝てる人間はいないよ。」




それを聞いてアヤネの顔が「あれ?」となり、強ばりが消えた。




「どうなったら試練クリアなの?」




「アヤネが生き残れば、だね。20分間。」




それを聞いたアヤネはクリアを確信した。




「スキルは使える?」




「ん?使えるけど、精霊には効かないよ?」




「.....は?なんで?」




闇の妖精はアヤネの質問に考える素振りを見せると一拍、




「精霊だから?」




と曖昧な答えを出してきた。アヤネは再び顔から余裕が消える。




「魔法は?」




「効かない。」




魔法は自分、使えないからまあ、いっか。と切り替えるが次は重要だったため、絶句した。




「物理的な攻撃は?」




「若干?それでもホントに若干だから、ほぼ無傷だね。」




アヤネの顔が絶望に染まる。




「ひたすら逃げて、隠れて、躱して、を繰り返さないとダメ、と。キツいね。」




「そりゃあ、試練だし。当然でしょ。」




「まあ、2つ目をすんなりクリアしたツケが回ってきた、と思うことにするよ。」




「それじゃあ、良い?」




「良いよ。」




アヤネが了承の意を伝えると闇の妖精が上空に上がっていく。




「精霊ちゃんたちも準備、大丈夫?」




精霊たちは口々に大丈夫ということを伝える。




「「「はい。」」」


「「「「大丈夫です。」」」」


「「おう!」」


「オッケーだぜ。」




「喋れるの!?」




喋れるとは知らなかったアヤネが驚嘆すると、猿の姿をした精霊が反応した。




「ったりめーだろが。ナメてんのか?アア?」




「いや、その、ごめんなさい。」




「喧嘩してないで始めるよ~。それでは~開始~。」




闇の妖精の最後の試練が始まった。




まず、動いたのがヘビの姿をした精霊でヌルヌルと迫ってくる。




アヤネはとりあえず下がって距離を取る。すると、突然、蜘蛛の姿の精霊がアヤネの足元に現れる。




「!!」




即座に飛び上がるが、上空には鷹の姿の精霊がいた。




「っ!【水遁】!!」




アヤネは一旦、退避して距離を取る。しかし、精霊たちが攻撃の手を緩めるはずもなく、着地して1秒も経たない内に猿型精霊が近くに来て、戦闘が再開される。




(くっ、今までの敵とは質が違う!今までは集団と戦ったとしても個々が弱かったし、ろくに連携も取れてなかった。けど、この精霊たちは連携が完璧すぎる。20分間もこの状態が続くのは勘弁だよ。)




アヤネは猿型精霊の攻撃を凌ぎつつ、次々と迫ってきている精霊たちを見て歯噛みした。




その時、【気配感知】が後ろに気配を感知した。アヤネは振り向く余裕なんてあるはずもなく、【火遁】でその場を脱した。




「いや、ヤバすぎるでしょ。連携が神がかってるんだけど?しかも、どこかに瞬間移動してもすぐに誰かが来るし、どうなってんのよ。」




アヤネがそう言っている間にも兎の姿の精霊が攻撃を仕掛けてきていた。




「マジか!?」




アヤネは兎型精霊の攻撃が予想していたものではなかったため、反射的に上体を後ろへ反らした。




「魔法?」




そう、兎型精霊は走っている時に後方一回転宙返りをすると、足から黒い筋を飛ばしてきた。そして、それに驚き、少しだけでも、隙を見せたアヤネにさらなる攻撃が飛んでくる。空から。さっきの鷹型精霊だ。こちらも魔法を放ってきた。アヤネは鷹の姿を見れる余裕などなく、本能のままに前に跳んで転がり、すぐに立ち上がる。鷹型精霊と兎型精霊が使った魔法は名付けるならば【ダークカッター】だろうか。黒い筋、もとい闇の刃はアヤネがさっきまで立っていた場所に傷を付ける。




「マジ、油断も慢心も余裕もないのに常に危ないんだけど。これはヤバいね。危険度はこれまで史上でダントツの1番だよ。」




アヤネなさらに気を引き締めたのだが、またもや【気配感知】が後ろに反応した。アヤネは【変わり身】を使って後ろにいた精霊の後ろに転移するとアヤネがいたところにはカメレオンの姿をした精霊がいた。




(最初の蜘蛛といい、カメレオンといい、神出鬼没すぎる。なにかタネがあるはず。闇ならではのタネが。)




アヤネは精霊たちの攻撃をどうにか凌ぎつつ、【思考超加速】で脳みそをぶん回す。だが、この精霊たち相手に攻撃を凌ぐ以外のことに意識を向ければ必ずちょっとの隙をついてくる。




「っ!!」




アヤネがヒョウの姿の精霊の攻撃を凌いでいると、ヒョウの後ろから魔法が飛んできた。そして、魔法に一瞬でも意識が向く。と、同時にヒョウ型精霊が隙をつく。隙をついた攻撃はアヤネに当たり、【クライシスディフェンド】を発動させた。




「くそっ、」




3秒間の硬直を精霊たちが待ってくれるわけがなく、ヒョウの後ろから走ってきていたワニの姿の精霊がアヤネに噛みついた。が、ワニ型精霊がアヤネに噛みついた瞬間にアヤネの体が揺らめき、霧散した。そして、いつの間にかそこから20mほど離れた場所にダメージを受けていないアヤネがいた。


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