第21話 海の妖精からの闇の妖精
翌日、茜は11:30分に目が覚めた。
「ん、んー、はぁあ。7時間くらい寝てたんだ。起きたばっかりなのにもうお昼ご飯だ。」
未来を予知したのかと思うほどのタイミングで階下から母親が茜を呼ぶ声が響いた。
「そろそろ起きなさいよ~。ご飯出来るから~。」
「起きてるよ~。よし、朝ご飯を食べに下りようか。」
茜はのそのそとベッドから這い出て部屋から出た。
◇◇◇
お昼ご飯を食べて部屋に戻ってきた茜はベッドに寝転がった。
「今日はどうしようか。2層の探険か勉強かスマホか。まあ、とりあえずスマホで。」
茜はパズルゲームを始めた。が、
「やっぱり2層が気になる。」
茜はスマホをベッドの上に投げ置くとVRギアを装着して『FSO』の中に入っていった。
◇◇◇
アヤネは2層の町にやってくるとまず、海に行った。
「海だぁ!!」
海に着くとそのまま海の中に飛び込んだ。
「貸し切りの海、サイコォウ!!」
そのまま海に入って泳いでいると海から青いドレスを身に纏い、背中から青い羽を生やした人、つまりNPCの妖精が現れた。
「あなたは何者ですか?私たち、妖精に害を加えるつもりなら排除せねばなりません。お答えください。」
突然の出現と突然の問いかけにアヤネは驚いて硬直したが答えなかったら「何をされるか分かったもんじゃない」とすぐに答えた。
「えっと、海に泳ぎに来ただけなのでお構いな...く?」
でも、なんと答えれば良いか分からず疑問形になったアヤネだが問いかけの答えを言えてはいない。
「あなたは何者ですか?」
「え?うーん......人間?」
ここでもまた質問の答え方が分からず疑問形だがNPCは許してくれるらしい。
「悪い人間ですか?」
海から出てきた妖精は3つ目の質問を投げかけた。
「悪い人間、ではないと思います。」
すると妖精は「そうですか。」と呟き、目を瞑り、顔をしかめた。アヤネはその顔を見て自分をこれからどうするのかを今、決めているのだろう、と察して心の中で「追い返されたとしても優しく追い返されますように。津波レベルの波で砂浜に打ち上げられませんように。お願いします。運営さん、流石にそこまではしませんよね?ね?ダメージ受けませんよね?大丈夫ですよね?」と必死に懇願した。その願いが通じたのかその妖精は静かに波を作り、アヤネを砂浜に打ち上げた。
「今はまだあなたを信用することはできません。次に来るときは精霊ちゃんや他の妖精の【信頼の証】を持ってきてくださいね。」
アヤネは優しくしてもらったことに対して内心で「良かったあぁぁぁぁ!!」と発狂しつつ、海の妖精にお礼と一応、謝罪をしてから町に戻った。
町に戻ったアヤネは噴水の周りを囲うように置いてあるベンチに座って海の妖精の話について考え始めた。
「悪い人間、に今は信用できない、か。昔、人間に何かをされたのかな。そうなるとこの層を周るのは大変かも。エリアに行く度に追い返されてたらろくに探索も出来ない。まあ、私は【神速】でゴリ押すけど。どこから行こうか。光は入れてくれなそうだし、他のところもさっきの妖精みたいに追い返してきそうだし。闇は......入れてくれそうだけど、闇....だからなあ。闇は最後にしようと思ってたのに。それよりもなんだったっけ?最後に言ってたの。【信頼の証】だっけ?何だろう。クエスト関連だろうけど。ひとまず置いとこう。..........闇.....行こうか。」
アヤネは妙に重たい腰を上げ、重たい足取りで闇エリアへと向かった。
闇エリアの目の前まで来るとアヤネは大きく深呼吸をして【神速】を使って闇エリアに突入した。のだが、周りは何も見えず、さらに闇エリアに入った途端、体が重たくなって【神速】が解除された。
「!!なに?これ。【神速】が強制解除された!?それに体が重たい。.....【水遁】」
アヤネはこれ以上は危険と判断して【水遁】で闇エリアから脱出しようとした。が、【水遁】が使えなかった。アヤネはおかしいと思ったがバグと考え、【火遁】を使おうとする。がやはり使えなかった。
「スキルが使えなくなってる?【思考超加速】も機能してないし、これヤバくない?メッセージを送ろうにもスキル使えないなら誰も助けに来れないし、そもそもフレンドが少なすぎて今、やってる人がいない。ヤバイよ、これ。何もいないの?普通はもう襲われててもおかしくない。」
アヤネはスキルが使えないと分かるとすぐに方向を変え、闇エリアから出ようとしたが入ってきた場所から出ることは出来なかった。
「あれ?なんで?見えない壁があってこれ以上進めない。閉じ込められたの?闇の妖精も閉じ込めたなら早く出てくれば良いのに。」
最後の呟きが聞こえたのか後ろから声がした。
「ねえ、人間。何しに来たの?」
ゾクゾクとするような不気味な女性の声音だった。アヤネは壊れたロボットのようにギギギギギギッと音が立ちそうな首の動きで後ろを振り向いた。そこには黒いドレスを着て黒い羽を背中から生やした妖精がいた。
「どんなところか気になって入ってみただけです。」
(もう、闇なら大丈夫だと思ったのに。結局これだよ。しかも今度はスキルが使えない。絶体絶命の大ピンチだね。攻撃されませんように。)
恐れているように見えるアヤネを見てその妖精は「ふむふむ。」と頷きながら話しだした。
「まあ、僕たち闇の妖精は他の妖精とは違って人間がやったあの大迫害も根に持ってはないし、人間が来ようがモンスターが来ようが良いんだけどさ、何しに来たのかは気になるじゃん?この闇の中はスキルも魔法も使えないから尋問にはうってつけなんだよ。それで?それだけ?理由。」
闇の妖精はアヤネに問いかけてくる。
「それだけです。仲良くなれたら良いなあとは思ってますけど。」
それを聞いた闇の妖精はニッコリと笑った。
「仲良くなりたいんだ。そっかそっか。何のために?」
「他の妖精が住むエリアを観光するために。」
闇の妖精はその言葉を聞いてさらに笑顔になる。
「君、面白いね。場所を変えて、ちょっとお話しようか。」
闇の妖精はそう言うと指パッチンで指を鳴らした。すると闇が消え、湖と数本の木が前方に見えた。そして、さっきまでの体の重さが嘘のように軽くなった。さらに
(あ、【思考超加速】が使えるようになってる。)
スキルも使えるようになっていた。
「あ、君、名前は?」
「アヤネです。」
「アヤネかあ。じゃあアヤネって呼ぶね。」
「あ、はい。どうぞ。」
闇の妖精は湖の前まで来るとどこからか黒いイスを出した。
「まあ、座ってよ。」
アヤネは言われるがままに座る。
「アヤネ、さっき他の妖精のエリアを観光って言ったけどどこを観光したいの?」
アヤネは何も隠さずストレートに言う。
「全てです。」
「全部かあ。僕は出来ても光以外だね。光の妖精とは仲が悪くて。光の妖精がいるエリアに入れなくても良いなら協力してあげられるけど。」
「ホントですか!?」
アヤネは思わず立ち上がり、闇の妖精に近寄った。
「ち、近い。」
「あ、ご、ごめんなさい。」
アヤネは闇の妖精に指摘されるとすぐにイスに座り戻した。
「ホントだよ。だけどそれには試練を通過してもらわないとダメなんだ。やる?」
「もちろん!!」
やる気いっぱいで即答したアヤネだった。
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