第20話 妖精からの攻略後

「わあ~。」


「おぉ~。」


「ふわぁ。」




アヤネとユアとサティが三者三様の反応を示した景色は1層よりも広く、自然豊かな景色だった。




「スゴいね、ここ。」




「そうだね。最初にこの景色を見れるなんて......幸せ!!」




「そうねぇ、2人とも誘ってくれてありがとぉう。」




扉の先の景色は中央に町があり、その周りを均等な面積で海、森林、火山地帯、雪原、砂漠、大量の竜巻が起きているエリア、光で包まれているエリア、闇に閉ざされているエリアが囲っていた。




「自然豊かだけど、あの黒いところと白いところはなんだろう。」




「うーん、闇と光って感じじゃない?」




そう言ったアヤネにユアは「なるほど。」と呟いた。




「そういえば、ここからどうやって町まで行くの?私たち、まだ扉を通ってないけど。」




3人は扉の先に道が無いことと上空に扉があることが分かり、扉を通っていない。ボス部屋の中から2層の景色を楽しんでいるのだ。




「流石に通ったら落ちて死ぬ、なんてことは無いと思うからさ、ユア、ちょっとだけで良いから落ちてきて。お願い!!」




「いや、ちょっと落ちるってどういう意味だよ!?」




「ちょっと落ちるはちょっと落ちるだよ。とりあえず扉を通れば良いの。」




「一回、死んでこい、と?」




ユアはアヤネに真顔で目を最大限に開いて問い掛けた。それに対してアヤネも真顔になって目を開き、答えた。




「That΄s right!!」




「よし、生身でダイブ、みんなで落ちれば怖くない!!」




ユアはサティとアヤネを両脇に挟んで自分もろとも扉からダイブした。




ダイブしたはずだったのだが扉から全身が出た瞬間に転移の光が体を包み、ボス部屋から見た町の噴水前に転移した。




3人は勢いよく扉から出たため転移してからキレイに立ち止まれるはずもなく、地面にダイブした。




「イタタタタタ。普通に出れば良かったんだね。」




「イテテテテテ、だから言ったでしょ?ちょっと落ちてきてって。死なないだろうからって。」




「イタァ、私はあんまり会話に入ってなかったのにぃ同じ目に遭うなんてぇ。アヤネとユアがぁどっちもいるときは気を付けないとぉすぐに空気にされちゃうぅ。」




顔面から地面にダイブした3人が立ち上がって周りを見回すと、NPCがいるのだが、そのNPCたちは1層のNPCと違い、背中に羽が生えている。そのNPCを目にした3人は顔を見合わせると口を同じにして喜んだ。




「「「ここって(ぇ)妖精の町!?」」」




そう、ここ第2層は妖精の町と表するのがふさわしいだろう。遥か上空で見せられた2層の全域はどこにどんな妖精がいるのかをおおよそ把握させるためだろう。




「妖精!妖精だよ!!アヤネ、サティ。」




「そうだよ!妖精だよ!!ユア。」




「そうねぇ!妖精ねぇ!!ユア。」




3人は息ぴったしでお互いとハイタッチをした。そのまま円になるように全員の手が繋がり、回りだした。




「私、海以外のエリアは全制覇するよ!!」




「だから、溺れないって。」




「じゃあユアを連れてぇみんなで海に行こぉう!!」




3人は手を離して興奮した心を落ち着かせるとこのあとどうするかを話し合い始めた。




「このあとはどうする?もう、3時になるけど。」




「そうねぇ、私は一旦ログアウトしようかしらぁ。」




「じゃあ、私も。」




「オッケー。なら、解散ってことで。良き?」




「「良き(ぃ)。」」




「またね。」




「はぁい、また誘ってねぇ。」




「もちろん。」




サティを光が包み、サティは現実世界に戻っていった。




「じゃあ、またね。アヤネ。」




「うん、またね。」




ユアもサティと同じように光に包まれ、現実世界に戻っていった。残ったアヤネはというと。




「私はどうしよっかな。NPCと会話出来るかな?......すいません。」




アヤネは近くにいたNPCに話しかけてみた。




「なんでしょう?」




(お、会話出来る!!)




「あの、あなたは妖精ですよね?」




アヤネはさっきから思っていたことを確認がてら聞いてみた。




「そうですね。私は妖精です。でも、私だけではありません。この世界にはたくさんの妖精がいます。その中にも悪い妖精はいるので気を付けてくださいね。では。」




「あ、はい。ありがとうございました。強制的に会話を終了させられた。」




アヤネはその後も他のNPCを尋ねてまわったがあまり収穫はなかった。




「うーん、探索したいけど我慢してまた今度。」




アヤネはログアウトして現実世界に戻った。






◇◇◇


現実に戻ってきた茜は寝転がったままボス攻略を振り返っていた。




「楽しかったなあ。今回で分かったけど私、防御が高くて、毒が効かない敵には勝てないや。極振りでここまでやってきたけど極振りって大変だ。2層早く来れたわけだし、【ONLY ONE】シリーズを1つくらいは手に入れたいな。......そろそろ、眠たく、なって、、きた。はぁあ。」




茜はいつもよりも長かった1日に終わりを告げた。






◇◇◇


葵は現実に戻ってきてからなかなか寝付けず、『FSO』のホームページやネット掲示板を見ていた。




「まあ、ホームページ見ても隠れスポットとかは載ってないよね~。ん?ネット掲示板?色んな人が書き込めるんだ。んー、読むだけにしよ。下手に書いてプレイヤーネームとかバレたらイヤだし。」




葵はホームページに貼ってあったネット掲示板のリンクを押してネット掲示板のページに飛んだ。そして、そこで書かれている情報を見て葵は驚きのあまり硬直した。そこに書かれていたのはなんと自分と茜のことだったのだ。






163:unknown剣使い


忍者の格好した子とその子の友達と思われる子を見たんだけど動きがスゴかった。




164:unknown魔法使い


どんな風に?




165:unknown剣使い


南の森で見たんだけどアクロバットみたいだった。




166:unknown槍使い


あ、新規です。忍者の人、さっき見た。もうすでに2層に行ってると思われる。3人でいたけど。




167:unkown魔法使い


は!?2層に行ったってあのゴリラをぶっ倒したのか!?俺、5人くらいのパーティ組んで行ったけど初撃で死んだぞ。それを3人で!?すげぇな!!








と、ここまで見て、葵はスマホのスクロールを止めた。これ以上見るのはなんとなく怖かったからだ。




「よーし、寝るぞー。」




その後も寝付けず、葵が寝たのは4時を過ぎてからのことだった。






◇◇◇


サティこと東山奈瑠美ひがしやまなるみは現実世界に戻って来てからパソコンとにらめっこしていた。




「はあ、明日....ってもう今日かぁ。仕事があるぅ。悲しぃ。それにしてもぉ、あの2人とのゲームは楽しかったなぁ。本当にこの学校に入学してくれれば良いのにぃ。私も1年の担任だしぃ、もしかしたらぁもしかするかもしれなぁい。よし、次にあの2人と一緒にすることがあれば高校聞いてみようかな。マナー違反だけど。いやいや、その前にこの仕事を終わらせないと。」




奈瑠美は徹夜して仕事を片付け、寝ずに職場に通勤した。








◇◇◇


日本某所の会社の一室。メンテナンス兼アップデートを済ませた社員たちは自分の席でそのまま眠りについていた。そして7時に目が覚めた社員の男は1層ボスの攻略者を見て思わず大声を出してしまった。




「はあ!!なんでレベル11なのにクリアしてんの!?あ、そうか。この2人と一緒に戦ったのか。」




その男は自分のデスクのパソコンの画面を見て納得した。そして気になった。どんな戦いをしたのかが。そこで起きた社員を集めて1層ボスを最初に攻略したパーティの戦いを見てみることにした。そう、アヤネとユアとサティだ。




「あ~、この忍者なら仕方ない。」




「うん、忍者と【土の覇者】だろ?それならしゃーない。」




周りの社員は「仕方ない。」と言うがそう言った周りの社員たちは知らない事実を「見よう。」と促した男は告げる。




「ここで衝撃の事実を教えよう。忍者はAGI極振り、【土の覇者】はSTRが45だ。さらにさらにその2人はどちらも被ダメ0だ。」




『......は!?』




その場にいた社員の全員の顔が驚愕に染まった。




「こいつ倒すためにはSTRがいるだろ。どうやって。」




「俺もそれが気になったんだよ。だからみんなで見ようって言ったんだ。」




「なるほど。」




そしてアヤネがインベントリから忍具を取り出すシーンが映る。




『これでか~。』




「こいつに毒耐性付けてなかったもんな。」




「どうする?インベントリに入れれなくするか?」




「それも良いけど。今後に控えてる第1回イベントが対人戦だろ?そこで圧倒的すぎたら、で良いんじゃねーか?」




「そうだな。そうするか。」




その後、アヤネたちの戦いを見終わると今後の対アヤネ&ユアのモンスターの設定を考え始めた社員たちだった。


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