伍.四日目(四月五日(水))
28.『魂の聲』
軽い物音がした。音がしたと同時にハル子さんの
視界に垂れ下がる髪を
「――そうか。そうだったんだ」
ぽつりと言葉が零ちると同時に、じわじわと実感が湧きあがる。交感神経が冴え渡る。四肢に鳥肌が立つ。
何らかの予感めいたものがあったのだろうか。いや、そもここ数日の間、なんとも云えぬ違和感はあったのだ。それが一体何に由来するものなのか明白にならぬままでいたが、今の物音で、はっきりと悟った。
あの時、あの部屋を与えられている彼が、どうして三階に昇って行ったのか?
なぜそんな簡単なことに思い至らなかったのか!
ハル子さんは、ハル子さんらしからぬ、ぎりりとした眼で一旦は着込んだカーディガンの袖から腕を引き抜いた。翌日にまとう予定でいた、青い小花柄を散らしたクリィム色のスモッグと、鼠色のサブリナ・パンツに身を包む。己の迂闊と失態に
「うひゃあ!」
その
「――ハル子」
「うつぼ君。あなた、ずっとここにいたの?」
こくり、とうつぼ君は首を縦にふった。
ハル子さんはばくばくと音立てる心の臓をなだめつつ、ようよう立ち上がった。今の衝撃で先程までの怒りは沈静化している。何より物音の主が予測された人物とは異なっていたことが重要だ。
「こんな夜中に、一体どうしたの?」
「ハル子こそ、何故こんな時刻に服を着込んでいるんだ?」
一瞬ハル子さんは舌打ちしたい衝動に
「そう云うあなただって」
うつぼ君は、そこで初めて微笑んだ。
「外に出る気なのね?」
「ハル子。僕は一つ気付いたよ」
つぶやき、うつぼ君は腕を組んだ。己の身体を抱いたのか。
「何に?」
「『
伏せた彼の眼の奥に、冷たく沈黙したものが浮かぶ。
「なぜ『魂音族』を『魂音族』と呼ぶのかにさ――そのことを
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