第5話
「もっと…早く言うべきですよ……それ」
そうだ、現にそのことを知らないあの男たちは行ってしまった。あいつらは今頃何をしているのか。本来の目的のうちに襲撃と略奪が入っているのならあれだけの大人数が行くことは無かったんじゃないか?
襲撃と略奪が目的の一つの時点で、少なくとも集落を攻める以上、死ぬかもしれないっていうのは確かだ。
最悪な空気だった。初老の誰かの母親が一人泣きだし、また一人泣きだした。それ以外、皆が一言も発することなくただ長を見ていた。
「まぁ、こうなった以上はしょうがねぇ、取り敢えずあいつらが帰って来るのを信じてそれまで頑張りましょうや」
誰かが沈黙を破る。たかいなだった。もう、結構な歳でみんなからは少し白い目で見られていた。なんでも昔、耕作でミスして一つ田をつぶしたらしい。本人に悪気は無かったから表立って攻められることも無かったが、そのミスが遠因となって流行り病の時に、食料が足りなくなり、貯蓄分に手をつけることになった。周りがその咎を攻める以上に、本人が気にしていたらしく、関わり方が良く分からない内にここまできてしまった…らしい。
長は少しぽかんとした後に
「あ…あぁ…そうだな」
と言ってその場を解散させた。
あむんこと共に家に帰ると、そこには暗い中、むしろを敷いているありんの姿。
彼女とは色々話した。…話した。本当にいろいろ話した……。一字一句思い出せる……。だが、頭から振り払おう。駄目だ……。手が震える。
ここでつまって全て思い出そうとすれば、先に進まない。
とにかく、彼女は俺がいかなくてよかったと言ってくれた。言ってくれた……。もう二度とは言ってくれない……。
限界だ。ギュッとつむった目を開ける。
目にまぶしい光が入って来る。どこまでも広がる水面の上に日が出て、きらきらしている。本当に終わりの見えない水面。昔、誰かが海とかなんとかって言ってた記憶がある。今までで一度も見たことが無い光景。きれいだ。今までの人生で一番きれいだ。
洞窟の中がその光で照らされる。いびきをかく男たち。
やはり、ありんは起きていなかった。
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