第44話 生徒会、不穏な進化②
「ねぇ、さっきの学園外の協力者って、誰のことかな……?」
エリックの周りの音にかき消されてしまいそうなほど小さな呟きにクララとライリーは反応した。
確かに、先程の話ではおかしい点が多い。冷静に考えてみれば、「学園外の協力者」をどうやって用意しているのかなども引っかかる。
こう一度気が向いてしまっては方向転換も難しい。三人の関心事はそれ一点に絞られた。
「思い当たる人物を全員挙げてみましょう。エリック様は知り合いが少ないかもしれないけれど、私たちが挙げてく情報から誰が一番怪しいか考えてもらってもいいかですか?」
「大丈夫です」
力強く頷くエリック。その横に立つライリーは、腕を組みながら思案中。
「じゃあ、まずは国王陛下と皇后陛下の二人かな」
「でも、二人の可能性は低いと思うわ。第一、私を排除したかったらここではなくて社交界の人間に頼ると思うもの」
確かに、と何度か頷くライリー。
というか、ここまで悪名が広まっているのなら王都から追放したり塔に幽閉したりと直接的に介入できるはずだ。こんなまどろっこしいやり方は選択しないだろう。
「じゃあ、シェイラ様自身……?」
「そんなはずはないわ!!」
位の高い人から順に追って行こうとしていたライリーにとって、次なる候補者はシェイラ本人。
自作自演説を一応疑ってみようと口に出したのだが、真っ先にクララに否定されてしまう。
「ライリー様も、一緒に仲良くお話ししているところを見たでしょう!? 姉様が、そんなひどいことをするはずがないわ。そう、信じたいもの……」
みるみる勢いを失っていくクララ。確かに、自分の姉が自分のことを欺いている可能性を考えていなかった。
でも、自分にとって姉は唯一の心の拠り所であった人物だと思っていたクララにとって、疑うことなどできるはずがない。
「そう、だね。よくよく考えてみたら、シェイラ様が自作自演なんてするはずはない」
(だって、シェイラ様のクララ様を見る目はとても暖かいものだったから)
照れくさくて言えない心の声と共に、ライリーは改めてその線はないと思い直す。
その横ではケンカにならずに済んで良かったと安堵するエリックがいた。
「クララ様。他にそういった計画に乗ってきそうな貴族はいる?」
「そんなもの、たくさんいるに決まってるじゃない。それこそ、この短期間で特定するのは難しいわ」
クララを好いていない貴族などこの国には溢れかえっている。そんな人たちの中で計画に乗ってきそうな貴族を特定しろと言われても到底無理な話だ。
しかし、クララはそう言いつつも何かに気付いたのか、顎に手をやっている。
「でも、姉様が病気になってからは姉様にあった人物は限られてるはずよ。姉様がどんな状況なのかを伝えられる人物は限られるはず」
「本当!?」
「えぇ。両親と、姉様の侍女と、一部の私の侍女……」
言いながら気づく。いたではないか、明らかに怪しい動きをしていた奴が。
「アイーヌだ(わ)!!」
クララとライリーが同時に叫ぶ。いきなりのことで、エリックは肩をギクっと上げたまま固まっている。
「あの、ごめんなさい、エリック様。私たち、ちょっとここで失礼するわね。あとできちんと説明するから」
勢いよく頭を下げると、そのままさらに勢いを増して王宮へ向かうクララ。一緒に行動している以上見逃せないライリーも一緒になって走りだした。
(姉様! 待っててね……!)
果たしてクララと生徒会の対決はどちらが勝つのか、それはまだ誰にもわかっていないのであった。
つづく
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