【KAC20255】天下無双の双剣使い

とろり。

第1話 そのスピードを超えろ!



 とある村に天下無双の双剣使いの青年がいた。その青年はロッジという父親と供に獲物モンスターを狩りながらひっそりと日々を過ごしていた。


「親父! 今日も一狩り行ってくる!」

「ルアラン、やり過ぎるなよ」

「わーってる!」


 ルアランという青年は意気揚々と愛する双剣、炎剣イグニスを携え駆け出していった。






 ルアランはメサと呼ばれる台地に着くと、大型の獲物モンスターを眼中におさめた。


 黒眼の深紅龍レッド・ドラゴンの大気を裂く咆哮。地面が割れんばかりに響く。


「ひぇー、るっせーなぁ」


 ルアランは耳栓を耳孔に突っ込むと、炎剣イグニスを両手に突進した。標的ターゲットはルアランを視認したようだ。挨拶とばかりに火球を吐き出した。

 ルアランは身軽いステップでさらりと避ける。そして高速の走りで獲物ゆうはんに斬り込んだ。脚に命中した炎剣イグニスの刃。黒眼の深紅龍レッド・ドラゴンは一瞬怯んだ。ルアランは矢継ぎ早にその双剣を叩き込む。

 右手左手と目にも留まらぬ速さで標的ターゲットを斬り刻む。

 しかし黒眼の深紅龍レッド・ドラゴンも黙ってはいなかった。天空を割るような咆哮。そして火球やブレスを吐き出した。

 右へ左へ、ルアランはその攻撃さえも全て避ける。双剣使いの最大の弱点は防御。それをカバーするほどのスピードであった。



 それはまるで華麗なるダンスを観てるよう。ルアランは力学的抵抗を極力抑えていたのだ。黒眼の深紅龍レッド・ドラゴンはルアランに翻弄されていた。

 ルアランは隆起した岩石を利用して空中を跳躍すると、標的ターゲットへと乗り移った。ルアランは左右の剣を次々と繰り出す。視界に映らない敵の攻撃を背後に受ける気持ち悪さから暴れ出す獲物。しかしルアランは、体勢を崩しながらも圧倒的な身軽さからすぐに攻撃行動へと移ることができた。

 四方八方に火球を振り撒く黒眼の深紅龍レッド・ドラゴンは徐々に体力を消耗していった。周りはその火球から火の海と化していた。

 しかしルアラン、動揺はしない。双剣使いのもう一つの弱点は一撃の弱さ。それを補うように手数で獲物をたたみかける。炎剣イグニスの刃を一撃一撃に集中させる。

 そしてついにルアランの攻撃に黒眼の深紅龍レッド・ドラゴンは倒れた。


 息を荒くしながら、ルアランはその炎剣イグニスを天高く掲げた。




 黒眼の深紅龍レッド・ドラゴンの肉を持ち帰ると、ロッジはガハハと笑いルアランを大いに褒め倒すのであった。

 最高級の肉を今夜の夕飯としていただく。これ以上にない至極の夜だった。


 ロッジとのバカ騒ぎと酒。薄ら薄ら眠気が襲う頃、ルアランは布団にダイブした……。






 のちにこの天下無双の双剣使いは旅に出ることになる。




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【KAC20255】天下無双の双剣使い とろり。 @towanosakura

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