第39話
「お前誰だ。同じ県内の高校生みたいだが、何か用か」
いつもの川部以上にそっけなかった。
小柄な高校生が答えた。
「僕は花園あけみです。少女漫画のヒロインみたいな名前だけど、ちゃんと男子高校生ですよ。で、君たち名前は?」
「俺は東雲とうやだ」
「僕は川部一郎だが」
とうやは川部の名前を初めて聞いた。
一郎と言うのか。
川部が続ける。
「で、花園さんとやら、僕たちになんか用でもあるのか」
「今のところはないけど、そのうち大事なことをしてもらうようになる気がします」
年は同じかせいぜい一歳くらいしか変わらないはずなのに、花園は敬語でしゃべる。
「なんだそりゃ。大事なことってなんだよ。気がするってなんだよ」
「それは今は言えません。確信もないし。今言うと台無しになりますし」
「言えないって。そうか。それなら僕たちは君には用はないな」
「いずれ、お互いに必要になりますね」
「なんだって」
川部の口調が荒くなる。
この男、変わり者の上に沸点も低いようだ。
とうやが口をはさむ。
「なにを言っているのかよくはわからないが、花園君はこれだけ大勢の人がいる中で、俺たちに話しかけてきた。それにはなんだかの理由があるんだろうな」
「もちろんありますよ。ここは危険な香りがぷんぷんします。そんなところでは、助け合いが必要ですね。特に、君たちのような特別な人間ならね」
「俺たちが特別って」
「そう特別です。これだけの人がいますが、君たちみたいな人はこの中でも二人しかいません。だから話しかました。お互いが知っておくことが大事ですから」
「特別って、どう特別なんだ」
「それは今は言うべき時じゃないです。その時が来たら教えます」
川部が割って入った。
「あれも言えない。これも言えない。ふざけてんのか」
「いや、きわめて真面目ですよ」
「ふん、そうか」
とうやが言った。
「とにかく君は、特別な俺たちに助けてもらいたいと言うんだな」
「君たちに助けてもらいたいし、同時に僕が君たちを助けることもできます。だからお互いに知っておく必要がありますね」
「なるほどね」
「ところでここはどこでしょう。誰かが作った空間のようですが」
「誰かが作ったって。それがわかるのか」
「君たちはここがどういうところか、知っているみたいですね。そう、ここは誰かが作った空間です。とてつもない力を持った誰かが」
初めてホラーゲームに参加したみたいなのに、この花園あけみと言う高校生は、この空間が誰かが作ったものだとわかるのだ。
とうやはこの花園と言う男に、がぜん興味がわいてきた。
それは川部も同じだったようだ。
「おい、なんでこの空間がだれかがつくったものだとわかるんだ」
「僕にはわかります。そう言う力があるんですね」
「……」
「とにかく、あいさつと顔合わせは終わりました。それじゃあ今後ともよろしくお願いします」
そう言うと、花園はその場を去った。
川部が言う。
「あいつ、そう言う力があるとか言っていたな」
「ああ、どんな力か知らんが、そうでないとここが誰かが作った空間であることなんて、わからないだろうな」
「ふーん、そう言うやつなら仲間にしてもいいかもしれんな」
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