第36話
「あいつなんなんだ」とか言っていたクラスメイトも、川部の話はしなくなっていった。
また孤独な日々に戻ったのだ。
川部がなぜ毎日とうやを見に来たのかはわからないままだが。
それに孤独な日々とは言っても、命がけのゲームをするよりかは、はるかにましと言うものだ。
またママが怒りだした。
パパとケンカしているからだ。
ケンカしないときは全然しないのに、ケンカをしだしたらずっとしている。
なんなのよ。
気分が悪いわ。
ストレスとかたまっちゃうじゃない。
ほんとに。
どうなってるのよ。
まったくう。
ゲームが終わってから、そろそろ二か月が過ぎようとしていた。
本当にあんなゲームに参加していたのか、とさえとうやは思うようになった。
命がけのゲームだ。
その場にいた実感は、重く深く記憶にある。
しかしその記憶が、あまりにも現実離れしているのだ。
それにあんな記憶は消し去りたいという想いが、とうやの潜在意識の中にあった。
本人はそこまで気づいていないが、それもあってゲームの存在自体をなかったことにしようと言う意識が働き、本当にデスゲームをやっていたのかと思うようになっていた。
そんなある日、川部がまたやって来た。
休み時間、廊下ではなく教室に入ってきて、とうやの前に立った。
そして言った。
「ちょっと、来てくれないか。話したいことがあるんだ」
「なんだ」
「ここでは無理だ。外に出よう」
二人でクラス中の注目を浴びながら外に出た。
校舎の裏、人気のないところに向かう。
ただりつくと川部が言った。
「なあ、ホラーゲームとやらは終わったよな」
その話題か。
確かに人に聞かせられる内容ではないが。
でもなんで今更。
「終わったよ。それがどうかしたか」
「うーん、終わった気がしないんだが」
「はあ?」
「はあ、じゃない。言ったとおりだ。まだ終わってないような気がする。それもずっと」
とうやはホラーゲーム自体がなかったことのような気がしているのに、そんなことを言われたって、答えようがない。
事実、返事をしなかった。
「まあ、東雲君はそんな気がしていないようだな。話が合わないか。それじゃあこの話は終わりだ。やっと話せたのに、無駄だったね」
こいつが毎日廊下に立っていたのは、この話をしたかったためなのだろうか。
それじゃあなぜ、さっさと話しをしなかったのか。
考えているとそれについては川部が聞いてもいないのに答えてくれた。
「そんな気がずっとしていた。でもそんな強くじゃなくて、薄かったんだ。でも昨日から急にその想いが強くなった。いままでとは比べ物にならないほどに。だから君に聞いてみたんだ。教室から出てこないのなら、僕から行こうと思ってね。それだけだよ。言いたいことは言った。東雲君から有益なものがなかったことは残念だけどな」
そう言うと、川部はその場を去った。
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