第34話

静寂。そして幼女の声。

「はーい、決まりました。二票を獲得した、六番の彼女です。おめでとうございます。ではあの世にいってらっしゃい」

「うそっ!」

工藤の身体が立ち、後方に動く。

そして身体が絞られた。

そのまま地面を転がった。

とうやはなにも言わなかった。

川部が言った。

「おやおや、あんなかわいい子に、僕ら二人とも投票したんだな。まあしょうがないし、当然だけども」

それでもとうやは何も言わなかった。

とうやを無視して川部が言った。

「おい、お嬢ちゃん。残り二人になったけど。どうするんだい。投票しても。一票づつで勝負にならないぜ」

静寂。

「おい、お嬢ちゃん。きいているのかい」

その気になれば、一瞬で相手を殺せる存在に、川部は圧をかけている。

ほんとうにぶっ飛んでる。

――なんて奴だ。

とうやは思った。

こんな奴とはかかわりあいになりたくはないと。

すると声がした。

「うるさいわね。考えているのよ。そう言えば一人づつ死んだら、最後は二人になるのね。こんな簡単なことに気づかなかっただなんて。バカみたい。とにかく考えているからちょっと待ちなさいよね」

「早くしてくれ。待つのは好きじゃない」

相変わらずの口調だ。

こいつには恐怖心と言うものがないのか。

とうやは思った。

待っていると答えが出た。

「二人じゃこのゲーム、これ以上は無理ね。ゲームにならないわ。しょうがないわね。それじゃあ今回のホラーゲーム、これで終わり。お疲れ様でした。あなたたち二人が、このゲームの勝者よ。よかったわね。生きて帰れるわよ」

「それじゃあ、さっさとかえしてくれないか」

「うるさいわね。言われなくても帰すわよ」

目の前が真っ白になる。

そしていつもの教室にもどった。

――ゲームは、終わったのか?

俺は生き残ったのか。

とうやは思った。

幼女の話からすると、そうらしいが、まるで実感と言うものがなかった。

しばらくするとベルが鳴り、授業が終わった。


休み時間、外には川部がいた。

ともに生き残った戦友とも呼べる存在だ。

少なくとも最後のゲーム、とうやは一番最後以外は川部の番号をずっと押していたが、川部はとうやの番号を押さなかったようだ。

とうやが生きてここにいるのは、川部のおかげでもある。

しかしとうやは川部と話そうとは思わなかった。

あの異常な経験を遠慮なく語ることができる唯一の人間だと言うのに。

それほどまでにとうやにとって川部は、異質で理解しがたい存在だったのだ。

川部はとうやを見ていたが、とうやは無視した。

そのうちに川部はいなくなり、つぎの状業が始まった。


最近、ママが怒らなくなった。

パパと仲がいいからだ。

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