第32話
「また結果発表。今度は誰かな誰かな。はーい、七番の方でした。それではいってらっしゃい」
一番は三十代に見える目つきの悪い男だ。
年齢と印象の問題だったのだろう。
「まっ、待て!」
それがその男の最後の言葉となった。
宙に浮き、後方に体が移動する。
そしてねじられた。
またもや雑巾のように。
どれほどの力が働いていると言うのか。
そして落ちて床に転がる。
四十代、三十代と、年齢の高い順に選ばれることとなった。
とうやは二回とも川部を選んだが、誰も川部には入れなかったようだ。
残り五人。
一番の二十代に見える男。
三番の同じく二十代と思える男。
二番の川部。
五番のとうや。
六番の工藤だ。
その時一番の男が言った。
声を荒げて。
「おいおまえ、俺に入れるなよ」
一瞬誰に言っているのかと思ったが、三番の男に対してだった。
「えっ、俺に言っているのか」
三番の男が答える。
一番の男はちょっとやんちゃな感じだが、三番の男は身体がごついが控えめで大人しい印象の男だった。
「そうだよ、お前しかいないだろう。お前俺に入れるつもりだろうが、そんなことをしたら後でひどいからな」
一番と三番が、川部をはさんで言い合っている。
一番の男の声は、もう裏返っていた。
「どうして俺があんたに入れると思ったんだよ」
「そんなこと決まってるだろう。少し前から俺のことを毛嫌いしてたじゃないか」
この二人の間に何があったかは、とうやは知らない。
少なくとも周りの人間が気付くほどの言い争いは、一つもなかったはずだが。
「別に毛嫌いなんかしてないさ。変な言いがかりはやめろよな」
「なんだと、こらあ」
幼女の声がした。
「なにけんかしてるのよ。せっかく楽しいゲームをやってるのに。これ以上ケンカしたら、どうなるかわかっているんでしょうね」
それを聞いて一番も三番も黙った。
幼女には逆らえないことは、この二人もわかっている。
「はいはい、さあさあ。楽しいゲームなのよ。けんかしないで仲良く和気あいあいと殺しあってね。それじゃあ番号押してね。はい」
ブザー音。
とうやはまたも二番の川部を押した。
少しの静寂。
「はーい、三人目が決まったわ。一番の方ね。ちょっと騒ぎ過ぎたんじゃない。今目立っていいことは一つもないわよ」
「おまえやっぱり俺に……」
一番が言えたのはそこまでだった。
身体が立ち、後方に行き。そして絞られる。
ぎゅうぎゅうと強い力で。
ぼろ雑巾のようになった男は、そのまま床に転がった。
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