第30話


相談も報告もない。

黙ったままだ。

いつものことをすますと、とうやは眠りについた。


次の日は休日だ。

家にこもる。

特にやることはない。

ネットを見たり、ゲームをしたり。

一応宿題もした。

れると後が面倒くさい。

朝ご飯、昼ごはん、夕食もいつも通り食べた。

風呂に入り、歯を磨いて寝る。

今日も母とは一言も声をかわさなかった。

珍しくないことだ。

母がとうやに話しかけてくることはあまりないし、とうやが母に話しかけることもめったにないのだから。


数日は何もない。

学校に行き家に帰る。

あったのは数日過ぎてからだった。

授業中、突然目の前が真っ白になった。

――来た。

しばらくすると、黒い床が広がる空間にいた。

壁も天井もない。

床のまわりは明るくなっていたが、光源がどこにあるのかはわからなかった。

上はまっくらだ。

そして床の上に椅子が円形に並べられていた。

椅子の前にスタンドがあり、スタンドの上にはパネルが取り付けられていた。

パネルは液晶画面のようになっていて、そこにはまるで囲われた数字があった。

①から⑦まで。

――なんだこれは?

とうやは考えた。

これが今回のホラーゲームなのか。

思いついたのは、数字が七まであることだ。

そしてこれまで生き残ったのは七人。となると……・。

そのうちに目の前が真っ暗になる。そして。

「お楽しみが始まるね」

いきなり声をかけてきた。川部だ。

「東雲君」

そして工藤も。

「次のゲームはなにかな。パネルがあって数字が書かれているけど。数字は参加者の数と同じだけど。どういう意味かな?」

川部が言ったが、とうやは答えなかった。

「相変わらず愛想わるいね。そんなんじゃ、女の子にもてないよ。おっと、こんな可愛い彼女がいたか。ずっと手を握っていたしね。ははっ、いい身分だね」

川部が工藤を見ながら言った。

とうやはなにも言わない。

工藤も何も言わなかった。

残りの四人は、みな各々椅子を見たりパネルを見たりしていたが、会話と言うものはなかった。

いまだにお互いの名前すら知らないのだろう。

とうやもあの四人が誰なのかは知らないが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る