第22話
死神が現れて、鎌を振り下ろす。
それは今も続いている。
何回も何回も。
違う点があるとしたら、その前に人がいるかいないかの違いだ。
死神がまた現れる。
それは二人前後に並んでいた前の人間が立っているマスだった。
前方にいた男の身体と死神が完全に重なっている。
男は慌てて足が動かない中で、身体を激しく動かし、それは自分と重なっている死神から離れようとしているように見えた。
しかしその場から離れることができないので、そのまま重なったままだ。
そしてもがく男などいないかのように、死神は目の前の男に鎌を振り下ろした。
鎌の軌道に沿って、男の身体が二つに分かれる。
それを見たとうやは理解した。
板垣が死神を殴った時、その手は死神の身体にめり込んだが、死神には何のダメージもないように思えた。
あの死神には実体と言うものがないのだ。
持った鎌を振り下ろして、人の身体を切り裂くことができると言うのに。
自分はその場から動けない。
そして相手は攻撃が一切聞かない。
そうなると、あとは自分の目の前に死神が来ないことを祈るのみだ。
「何人死んだかな。数えてなかったんで。東雲君は数えていた。途中までは数えていたんだけど。人が真っ二つになるところを見て興奮しすぎて、そんなもん、どこかに飛んじゃったな。で、今までで何人死んだの?」
川部だ。
相変わらず自分が死ぬかもしれない状況で、人が死ぬのを楽しんでいる。
とことん狂っているととうやは思った。
もちろん返事などしない。
何人死んだかは、とうやにもわからなかったし、たとえわかっていたとしても、こんな奴に教えるつもりはなかった。
そもそも、会話すらしたくなにのだから。
「返事がないね。そうかいそうかい。しょうがないなあ。まっ、いいけどね」
川部がしゃべっている間にも、死神が現れては消えていた。
死神の前に人がいない時の方が多いが、いるときもある。
ほぼ確立どおりなのか。
正確にはわからない。
もうそんな細かいことはどうでもいい。
そのまま前を見る。
川部もとうやのほうではなくて、前を見ているようだ。
その後も死神が現れては消え、何人かがその身体を二つにされた。
そして死神がまた消えた後、今度はその姿を現さなかった。
――んっ?
とうやもそうだが、みんな周りをきょろきょろしている。
ゲームが終わったのか。
死神はもう出てこないのか。
「鎌男、出てこないな。これ、終わったのか」
川部が言う。
何人かが「終わりか」「助かったのか」「もうあいつ、出てこないのか」と口々に小さく言っていた。
川部の声だけが大きかった。
死神が出てこないからと言って、とうやに何かできるわけではない。
そのまま待つ。
口は閉じたままだ。
そして時間だけが流れる。
何かをつぶやいてた人々も、そのうちに静かになった。
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