第23話

重い静寂。

ただただ長い。

不意に頭の中に声が響く。

「ああっ、忘れてた。ごめんね。もうこの、死神から生き残りましょうホラーゲーム、終わってたの。で今回の成果は九人。九人お亡くなりなりました。最初の一人を除いて。あの人はゲームに参加していないからね。とにかくめでたしめでたし。だから今生き残ってるのは十五人ね。本当ならここで数人しか生き残っていないはずなんだけど、最初のゾンビでつまづいたのが今でも響ているわね。ゾンビの数、倍ぐらいにしとけばよかったと思っているわ。残念。まあその分、ゲームの数を増やせばいいだけだから、より楽しめると考えた方がいいかもね。さてさて残り十五人。次では誰が生き残るのかな。楽しみ楽しみ。みんなも期待していてね。それでは今日はお疲れ様でした。それじゃあ、またね」

相変わらずの幼女声。

言っている中身が声よりも大人っぽいのも、いつも通りだが。

「ははっ、九人死んで終わりか。ちょっと少ない。お嬢ちゃんの言う通りだね。まあそれだけ楽しめるってのも、お嬢ちゃんの言うとおりだけどね」

川部が言う。

もうこいつの声は聞きたくない。

とうやがそう思っていると、目の前が真っ暗になった。

そして視界が開けると、そこは学校で、とうやは階段を上っている最中だった。

――むこうにいる時間はそれなりにあるが、こっちでは一瞬のことなんだな。だから誰も気づかない。

とうやはそのまま階段を上った。

明日には終わるかもしれない高校生活を過ごすために。


授業が終わる。

家に帰る。

いつものこと。

家で一人で待っていると、母が帰ってきて夕飯の支度をする。

母が何も言わないので、とうやは手伝わなかった。

夕飯ができると、食べる。

風呂に入り、歯をみがき、ネットを見てから寝る。

これもいつものこと。

そしてとうやは今日もいつものように眠りについた。

それは自分が、ホラーゲームと言う名のデスゲームに参加などしていないかのように。

そんなものは最初から存在すらしていないかのように。


起きる。

朝の日課をこなして、学校に行く。

休み時間、廊下に出ると、川部がいた。

その立ち位置、雰囲気、どう見てもとうやを待っていたようだ。

「おはよう」

「おはよう」

自分から挨拶をしてきたのにもかかわらず、川部はそれ以上なにも言わなかった。

とうやもなにも返さない。

そのままトイレに行き、帰ってきても、川部はそこにいた。

しかし何も言わない。

ただ上目づかいでとうやを見るだけだ。

とうやと同じクラスのものが気付き、あいつここでなにしてんだと言った顔で見たが、川部は一向に気にしていないようだ。

とうやはそのまま教室に入った。

それでも川部はドアの隙間からとうやを見ていた。

まるでストーカーのように。

川部がその場を去ったのは、授業開始のベルが鳴ってからだ。


次の休み時間、森本がとうやに話しかけてきた。

とうやは森本と親しいわけではない。

とうやには親しい友人など一人もいない。

「おい、東雲。さっき隣のクラスの川部ってやつが、ずっと東雲のこと見てたけど。なにかあったのか?」

とうやが答える。

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