第21話
やはり小さくだが。
くっ、くっ、くっ。
嫌な笑い声だ。
死神が現れる。
今度は前に人がいた。
その人が何かを叫んだが、大きな声だが支離滅裂で、なんて言っているのかは聞き取れなかった。
鎌を振り下ろす。
身体がわかれる。
死んだのだ。
また消えて現れる。
今度も死神の前に人がいた。
切られる。
死ぬ。
死神が消える。
最後尾の列にいたために、全て見えた。
とうやは板垣を見た。
板垣は顔は見えなかったが、両手を下におろし、そして両の拳を強く握りしめていた。
死神が出てくる。
前に人はいない。
鎌を振り下ろす。
そして消える。
数回は死神の前に人がいなかった。
しかし次に現れた時は、死神は何と板垣の前にその姿を現したのだ。
――えっ!
次の瞬間、板垣が死神を殴りつけた。
しかし板垣の手の先は、死神の体の中にすっぽりと納まっていた。
「えっ」
小さな声を出して、板垣が手を引っ込めた。
手はなんの抵抗もなく、死神の身体から出てきたようだ。
死神になんだかのダメージがあるようには、とうやには見えなかった。
死神が鎌を振り下ろす。
板垣の身体が上下に分かれた。
上半身は落ち、下半身は倒れた。
――!!
とうやは心臓が止まりそうになった。
板垣が死んだのだ。
とうやの目の前で。
〇暴の刑事の経験が、今回は何の役にも立たなかったのだ。
――なんてこと……。
その時聞こえてきた。
川部の小さな笑い。
とうやは川部を睨みつけた。
しかし川部は涼しい顔だ。
そんな中でも死神が消え、また現れる。
とうやはそれまで死神が現れた回数と、人が死んだ人数を数えていたのだが、そんなことはどこかに飛んでいってしまった。
動悸は激しくなり、それどころではなくなったのだ。
板垣が死んだと言う事実。
目の前で見たのに、とうやには信じられなかった。
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