第18話

その音がしたと同時、男の頭が地面に近く下がった。

その下には赤く染まった座布団のようなもの。

とうやは気づいた。

座布団のようなものは、男の身体なのだ。

赤いのは血。

男の身体が頭を残して、座布団ぐらいの厚さにつぶされてしまったのだ。

赤く染まって白目をむいて死んだ男の顔を見て、とうやは心底思った。

この幼女に逆らうことはできないと。

女子が小さく「ひっ!」と言うのだけが聞こえた。

それ以外、何の声も悲鳴も聞こえなかった。

とうやもそうなのだが、驚きと絶望が大きすぎて、悲鳴さえ上げられなかったのだ。

「早く入りなさいよ。ああなりたいの」

強い声。

みなが慌ててマス目に入る。

とうやはなんとなくだが、一番手前の正方形の中に入った。

するとその横に川部が来た。

「おやおやおや。君もここがいいと思ったのかい。僕もだよ。気が合うね。でも生き残るのは僕だけだけどね」

とうやは無視した。

こんな奴にかまっている場合ではない。

その時、前方で声がした。

「あれっ、これ以上行けないぞ」

見ればひとりの男が、一番前のマスの前から二列目で止まっていた。

幼女の声。

「言い忘れていたけど、一番前の列には入れないわよ。でないと、一番前の列にいる人が、必ず生き残るからね。一番前の列以外の枠に入ってね」

――一番前の列の人が必ず生き残る?

それが今回のデスゲームの肝なのだろう。

それでもどんなゲームなのかわからないが。

男はそのまま二列目の正方形にとどまった。

つぶされた男をのぞいた二十四人がそれぞれのマスの中に立った。

そして気づいた。

――動けない。

前の時と同じだ。

足が地面に張り付いて動かなくなっていた。

「おい、動けないぞ。どうなっている」

川部がとうやに言った。

どうなってると言われても、こっちが聞きたいくらいだ。

とうやは無視をした。

川部の舌打ちが聞こえたが、そんなことはどうでもいい。

これからデスゲームが始まるのだから。

見れば板垣はほぼ中央付近にいた。

むこうを向いていて、顔も見えない。

動けないので近寄ることもできない。

近くにいるだけで心強いのだが。

そんなことを考えていると、幼女の声がした。

「言っとくけど、出てくる場所は最初から決めてあるの。あんたたちのいる場所を見て変えたりしないからね。公平でしょ。フェアでしょ。感謝しなさいよね。それじゃあせいぜい頑張ってね。今からじゃ、頑張りようもないけどね」

――出てくる場所。なにが出てくるというのだ?

その答えはすぐにわかった。

中央付近、板垣のすぐそばにそれは現れた。

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