第17話

考えたが明確なものは出てこなかった。

始まれば嫌でもわかるのだろうが、気にしないと言うわけにもいかない。

さらに思考を巡らせたが、やはりどう使うのかはわからなかった。

やがて視界が真っ黒になる。

ホラーゲームが始まるのだ。

視界が開けると、マス目状の前方に人々がいた。

前回の生き残り。

次のホラーゲームの参加者だ。

「おい、やっぱりいたか」

見れば板垣だ。

笑顔でとうやに歩み寄ってきた。

「板垣さん。これが次のホラーゲームの舞台みたいですが、これをどう使うんでしょうか?」

「うーん、俺もここに一人でいた時に考えたんだが、考えてもわからなかった」

「そうですか。俺もわかりませんでした」

「とにかく、気をつけないとな。なにをどう気をつけないといけないかも、まるでわからんが」

すると声がした。

「やあ、いたね。今回も生き残れたらいいね。生き残れたらいいのは、僕だけだけど」

川部だ。

わざわざ人の神経を逆なでするようなことを言いに来たのだ。

「おい、いい加減にしないと、本気で殴るぞ」

「おお、怖い怖い」

いつものにやけ顔で、その場を去る。

「ほんと、あいつ、ろくでもない奴だな」

板垣にとうやが答える。

「ほんとですよ。友達ではないけど、あんな奴が同じ高校で、おまけに同じデスゲームに参加しているなんて。気分が悪いだけです」

「まあ、かかわらないほうがいいな」

「かかわるつもりは、一ミリもありませんよ」

「だろうな」

そんなことを話していると、声がした。

頭の中に例の幼女の声が。

「はーい、お待たせ。昨日はちょっといろいろあって、ホラーゲームができなかったの。待たせちゃってごめんね。もう心置きなく参加できるわよ。よかったわね。それじゃあゲームの説明ね。そこにいっぱい四角があるでしょ。その四角のうち、どこでもいいから入ってね。それが今回のゲームよ。どこにはいるのも自由よ。好きなところに入ってね」

そんなことを言われても、ほいほいと積極的に入る者は一人もいなかった。

みながその場に立ったままだ。

しばらくすると、声がした。

「なんなの。楽しいゲームなのに。なんで誰も入らないの。さっさと入りなさいよ。はいらないと、ひどいことになるから。ほらほら」

すると一人の男性、見た目三十代くらいが声を上げた。

「いい加減にしろ、このガキ。なにがホラーゲームだ。こんなもん、やらされるいわれはない。さっさと家に返してくれ。おい、聞いてんのかこのくそガキ!」

みなが男を見た。

こんな暴言をとんでもない力を持った幼女に放った男。

この男がどうなるのか。

それを見ているのだ。

しばらくの沈黙委の後、声がした。

「へーっ、私の言うことが聞けないと言うのね。こんなにも可愛い私の言うことが。信じられない。ただではすまないわよ。そんな人にはお仕置きよ。べちゃっとね」

――べちゃっと?

聞いた時、とうやには意味が分からなかった。

しかしその意味は、すぐに判明した。

べちゃ。

大きめの音。

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