第14話

誰も動かないし、なにも言わない。

とうやは横にいた板垣に話しかけようとしたが、声が出なかった。

板垣も同様のようだ。自分ののどを指さした後、両手で×を作る。

とうやは懸命に動こうとしたが、両足が地面に接着されているみたいで、まるで動けなかった。

足以外は自由に動かせるのだが。

激しい息のみで、声は相変わらず出ない。

――どうなってるんだ?

やがて何かの気配を感じた。

からだをねじり、振り返る。

むこうに見えてきた。

手足に毛の生えた怪人たち。

その首の上には、最初に見た時にはなかった、人の首が乗っていた。

首からは血が流れだしている。

その集団が、動けずに立ったままの人々の間を、ゆっくりと歩いているのだ。

実にゆっくりと。

まるで自分たちを見せつけているかのように。

十数体のそいつらは、人々の間を抜けると、立ち止まった。

やがてその前方にもやが現れた。

最初小さかったもやは、次第に広がり、道一杯となった。

すると他人の首を奪ったそいつらが、もやの中に入って行く。

全員がもやの中に入ると、そのもやがだんだんと小さくなり、やがて消えた。

「はーい。恒例の第二回ホラーゲーム終わり。あいつら十五体用意したから、十五人減って今は二十五人ってところね。確実に決まった数だけ殺せるようにしたのよ。前回が思ったよりも少なかったからね。えらいでしょう。ちゃんと考えたのよ。では名残惜しいけど、今回はここまで。もう少ししたら帰れるから、そのまま余韻に浸っててね。それじゃあ次をお楽しみに」

頭の中に例の少女の声。

聞こえなくなってしばらくして、別の声がした。

「動けるぞ」

とうやは動いてみた。

ちゃんと足が動く。

とうやはすかさず探した。

いた。

すこし離れたところに立っている川部が。

とうやは川部に歩み寄った。

「おい」

「なんだい」

「おまえ、前を行く人を引き倒しただろう。いくら助かりたいからと言って、あんまりだな。最低だ」

すると川部がいつものにやけた顔で言った。

「なんだって。そんなでたらめを。ひょっとして僕を悪者にして、自分がいい子になろうって寸法かい。そんでそんな嘘を。姑息だねえ。ああ、嫌だ嫌だ」

「なんだと」

とうやは川部の胸倉をつかんだ。

すると手が差し出され、ゆっくりととうやの手を離した。

「そこまでにしとけ」

板垣だった。

自由になった川部が、胸糞悪いにやけ顔でとうやを見た後、その場を去って行った。

板垣が言った。

「とうや君のいうことが本当なのだろうが、ここで騒ぎを大きくしても、なんの得もない。とりあえず、あいつには気をつけることだな。今はそれだけだ」

「わかりました」

気づけばみんながとうやを見ていた。

川部を見ていたものも少しはいるが。

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