第11話

その時声がした。

「あれっ、ここに見えない壁があるぞ」

三十代に見える男が、道の端に立っていた。

「本当か」

板垣が、とうやが、そしてほとんど人が道の端に移動した。

すると男が言う通り、そこには見えない硬い壁があった。

「なんだこれは」

とうやは周りを見わたした。

あちらこちらでほぼ全員が、道の端の見えない壁を押していた。

板垣が道の小さな石を拾い、壁に投げつけた。

石は壁で一瞬止まり、跳ね返ることなく下に落ちた。

「石の動きを見ると、ただの壁ではないようだな」

見えない時点でただの壁ではないのだが、板垣がそう言った。

「道以外に行けないとなると……」

とうやが聞いた。

「行けないとなると、どうなるんですか」

「この道のどちらかにしか行けないと言うことだ。おそらく」

「おそらく?」

「道から外れて逃げることができないとか」

「逃げることができない?」

「これはゲームだ。あの女の子が仕掛けた、命がけのな。それにあいつは、前回五人しか死ななかったことを残念がっていたし。おそらく、俺たちはなにかから逃げることになるんではないかと思うんだが」

「……」

板垣の言うことは一理ある。

とうやはそう思った。

おそらく逃げきれなければ、そこには死が待っているはずだ。

ではいったいなにから逃げればいいのか。

とうやは考えた。

すると声がした。

頭の中に直接。

「みんなお待たせ。第二回ホラーゲーム始まるよ。言いたいことは一つ。みんな逃げないと死ぬよ。あと道の右とか左には、逃げられないからね」

やっぱりだ。なにかから逃げるゲームなのだ。

相変わらず幼い声に似合わない内容としゃべり方だが、言っていることは本当なのだろう。

だとすれば。なにから逃げればいいのか。

みんな周りを見わたしている。

とうやも板垣も川部も。

なにがどこから来ると言うのか。

しかしけっこうな時間が経っても、なんだかの変化が現れない。

みんなだんだんと周りを見わたさなくなってきた。

――本当になにかが来るのか。いったいいつ来るんだ。

とうやがそう思っていると、声がした。

「あれはなんだ」

中年男が指さす先、道の片側。

集団からは離れたところ。

そこに白いもやがあった。

濃い霧と言うべきか。

そのもやは最初小さかったが次第に大きくなり、道全体に広がった。

そしれ次第に薄くなっていく。

そのもやが晴れた時、そこにいた。

人型のもの。

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