第10話
「やっぱりいたな」
声の主は板垣だった。
「あなたも連れてこられましたか」
「おそらく昨日の生き残りはみんないるだろう。命がけのサバイバルゲームが始まるんだ。頼りにしているよ、とうや君」
板垣はおそらくここにいる全員から頼られている。
そんな板垣がとうやのことを頼りにしていると言う。
とうやには不思議だった。
見れば板垣の声に反応して、多くの人がとうやを見ていた。
とうやも見ていたが、ふと気づいた。
なんと集団の中に、とうやと同じ制服を着た男子がいたのだ。
――えっ?
昨日はそんな男子はいなかった。
同じ学校の制服だ。
見落とすはずもない。
とうやが見ていると、板垣が気付いた。
「あれっ、あの子はとうや君と同じ制服じゃないか。知り合いかい。昨日いなかったと思うんだが。昨日の生き残り以外に連れてこられた人がいるのか」
その男子もとうやの方を見ていた。
薄ら笑いを浮かべながら。
とうやはふと思った。
あいつ、どこかで見たことがあるぞ。
見ていると、やがて思い出した。
隣のクラスの川部だ。
話したことはないが、川部はちょっとした有名人だ。
悪い方で。
不良とかそんなのではないが、とにかく評判は良くない。
隣のクラスながら、川部の悪評はいろいろ聞いたことがある。
それで顔を覚えていたのだ。
とうやと板垣が見ていると、座り込んでいた川部が立ち上がり、こちらに向かってきた。
そしてとうやの前に立った。
川部はとうやを小ばかにしたような顔で見ると、言った。
「やっと気づいてくれたんだな。昨日もいたのに。同じ高校で隣のクラスなのに」
「昨日は同じ高校の制服を着た男子はいなかったが」
「昨日は休んでたんだよ。ずる休み。ずる休み。いつものことさ。だから部屋でゲームをしたたら、あの体育館みたいな場所に連れてこられたんだ。もう少しでラスボスを倒すところだったのに。迷惑な話さ」
「そうだったのか。顔に目覚えがあったけど、たくさん人がいたし、周りをじっくり見ている余裕もなかったんで、気がつかなかった」
「僕は気づいていたよ。同じ高校の制服だからね」
板垣が話に入ってきた。
「おう、二人は同じ高校なのかい。それなら二人で助け合わないとな」
川部がにやけた笑いを浮かべた。
「こんな奴と。冗談じゃない。僕は一人で生き残るよ」
とうやはびっくりした。
川部のことは一応知ってはいたが、話すのは初めてだというのにこんなことを言われるとは思ってもみなかった。
川部はその場を去った。
板垣が聞いてきた。
「同じ高校だろ。二人で話していたし。友達じゃないのか」
「いや、話をしたのは、さっきが初めてですよ」
「そうか」
板垣は苦笑いを浮かべた。
とうやもそうだが、変な奴だと思ったのだろう。
もともと変な奴と言うことで、けっこう有名になっていた男だから、やっぱり変な奴だと言うことを、とうやが再認識しただけだ。
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