第15話 お疲れ様です

 今日は長い1日だった。


 異世界に来て女の子を助けて、その後お店をもらい……売名行為のために国最強の騎士団長と戦い、国王からお願いをされた。


 お城を出たことには、すっかり夜になっていた。

 

「疲れましたね……」さすがに疲労が大きい。「レイくんは、もっと疲れてますよね」

「……まぁ、そうかも……」レイはあくびをして、「グレイブさんが強かったから……かなり全力出さないといけなくて……」


 それは見ればわかった。レイはほぼ全力だったが、グレイブにはもう少し余裕があったようにも見える。


 とはいえレイの全力はひめも見たことがないので、どちらが強いのかはわからないけれど。


「今日のところは、帰って寝ようか」フラフラと、レイは歩き始める。「眠い……」

「お疲れ様です」相変わらず、レイはお子様である。コーヒーも飲めないし夜更かしもできない。「明日から、どうしましょう」

「そうだね……」それからレイはお腹を鳴らして、「……お腹へった……そういえば、今日は何も食べてないね……」

「そうですね……パルパロさんから食料くらい貰えばよかったかもしれませんね」

「そうか……そんな手段もあったのか……」


 寝ぼけているレイは、それに気が付かなかったらしい。ひめも疲れていたので、その発想はなかった。


「どこかで残飯とかもらえないかな……」レイは通りのお店を見回して、「……まぁいいか。1日くらい」


 そうやって食事に無頓着だから背が伸びないのだろうけど。とはいえ、今日のところは食料を得る方法も思いつかないので、仕方がない。


 1日くらい食べなくても、死にはしない。なら大丈夫だ。


 それから歩いて、自分たちのお店に戻る。


 そういえば、お店の名前をレイが決めていたな。


「ああ……それと、ごめん。勝手にお店の名前、決めちゃった」

「良いと思いますよ。ゼロ……何でも屋ゼロ」レイという名前から取ったお店の名前。「シンプルですし、カッコいいですし」

「ありがとう。じゃあ……お店の名前も決定したし、明日から本格的に始動だね」

「といっても、掃除とかありますけどね」

「そうだね……まぁ接客部分だけ取り繕って、早いところ営業開始しよう。そうじゃないと餓死してしまう」


 お金を稼がないと物が買えない。食べ物がないと死んでしまう。だから早く稼がないといけないのだ。


 なんにせよ……楽しみである。レイと一緒に異世界でお店を持てるなんて考えてもいなかった。


 さて、そんな会話をしているうちに、お店に戻ってきた。


 鍵を開けて、2階に上がる。そして前の持ち主が置いたままにしていたベッドを見て、


「洗濯くらいすれば良かったかな……」

「まぁ、今日一日は辛抱しましょう」布団があるだけありがたい。「じゃあ……もう今日は寝ますか」

「そうだね……」レイはベッドに潜り込んで、「……おやすみ……」

「おやすみなさい」


 言いながら、ひめも同じベッドに潜り込む。レイもそれが当然とばかりに受け入れていた。


 ベッドはこの家に1つしかない。だけれど、それで問題ない。

 だって、2人はいつも同じベッドで寝ているのだから。少し狭いけれど、密着できて好都合である。


 ベッドに入って目をつぶるやいなや、レイのほうから寝息が聞こえてきた。


 本当に、よほど疲れていたようだ。いつも寝付きが良いレイにしても早い入眠だった。


 ひめも目をつぶって、そのまま眠りにつく。ひめは寝付きが悪いほうだが、今日は疲れていたのかあっさりと眠りについた。


 明日から、ついに何でも屋ゼロ……始動である。


 果たしてどうなることやら。

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