第14話 爆弾人間

 レイとひめが転生してきた国オリヴィエ。

 その国の国王、パルパロは言った。


――この国を崩壊させる可能性がある、不届き者がいる――


「といっても……」パルパロは頭をかいて、「まだ情報だけなんだけどね……それも信憑性もない。だから、騎士団も表立って動けない」

「だから私たちの出番ってことですか」

「話が早くて助かる」


 国の騎士団が大きくは動けないが、突如現れた謎の何でも屋なら動ける。だからレイとひめの2人にする。

 依頼じゃなくて、お願い。あくまでもレイとひめは独断で動いている。決して、国からの依頼じゃない。


 そんな形にしておくのが、お互いに良いのだろう。

 依頼されたら、レイとしても仕事になってしまう。責任が生まれてしまう。それは、避けたほうがいいのだろう。


 逃げ道を、用意しておいたほうがいいのだろう。


「じゃあ……国を崩壊させる不届き者、というのは何者なんでしょうか。魔王はすでに討伐されたと聞きましたが」

「それがわかってれば、私達も動いてるよ」

「……ではなぜ、そんな不届き者がいると推察されるんですか?」


 相手はわからないけれど、悪いやつがいる……なぜそんな考えに至るのか。


「最近ねぇ……変な報告が連続しててね……」

「変な報告、ですか」

「うん。たとえば……眼の前で人が消えた、とか」それは変な報告だ。この世界でも、変という認識らしい。「楽しくおしゃべりしていた相手が、突然奇声を発して走り出したとか……知り合いだと思ってた相手が別人だったとか」

「最後のは……人を間違えただけでは?」

「3年間も?」

「失礼しました。続けてください」


 さすがに3年も人違いが続くわけもない。


「他にも……最近は治安も悪くなってるんだよ。そんで捕まえて取り調べてみたんだけど……」

「なにかおかしなことがあったんですか?」

「取り調べの最中に、みんな死んじゃった」あっさりと、パルポロはそう言った。「別に拷問とかしたわけじゃないんだけどね……突然爆散したの。ボカーンって爆発したの」

「……」自爆魔法、じゃないのだとしたら。「……人間じゃない……?」

「そうみたい」ちょっと悔しそうな口調のパルパロだった。「どっかの誰かが……人間みたいな何かを作ってるんだ。からくり人形なのか泥人形なのか、わからないけどね」


 誰かが人の形をした爆弾を作っている。


 そしてそんな人間が……


「爆弾人間が、街で生きている……?」

「可能性があるんだ。人が消えたってのも、別人だったってのも……知らないうちに爆弾人間と入れ替わってたって可能性がある。それで、最初は人間として生活してたんだけど、少しずつボロが出た」


 いきなり消滅してしまったり走り出してしまったり、本人じゃないとバレてしまったり。


 それは、本当は人間じゃないから、ではないだろうか。人間に似せて作られた存在だから、人の形が保てなくなったのではないだろうか。


「ニンゲンモドキを作ってるのか……それとも存在する人間を操ってるのか……それはわからない」完全に国王モードに入っているパルパロだった。威厳があってカッコいい。「でも……国としては見過ごせないね。気がついたら……国民がすべて爆弾人間になってる可能性だってあるの」

「なるほど……」ちょっと冗談を言ってみる。「今話してる私が、爆弾の可能性だってありますよね」

「そうだったらお手上げだ。でも、もし爆弾人間で私を暗殺しようとしてるのなら、外国からの旅行者なんて設定にはしないよ。私なら……そうだね。グレイブくんの偽物を作るかな」


 それもそうだ。信頼されているグレイブなら、簡単に国王であるパルパロに近づける。

 旅行者……という設定になっているレイたちがパルパロに近づけたのは偶然だ。暗殺する気なら、あまりにも運任せの計画になる。


「ちなみに……爆弾人間制作者に心当たりは?」

「まったくない……というより、心当たりはすでに潰した」確認したということなのか、壊滅させたということなのか。「これ以上ハデには動きづらくてね……だから、キミたちみたいな個人にお願いをしたかった」

「私達以外にも、この話を知っている人がいるんですか?」

「信頼できるのが何人か、いるよ」


 なるほど。レイたちにも話が来るくらいには、追い詰められているようだ。


 ともあれ、なかなか王様になんて会えないと思うので、質問を続ける。


「ハデに動けない、というのは?」

「……例えば国の騎士団を使って『爆弾人間を作った犯人を探しています』なんて言ったら、どうなると思う?」

「……ああ……なるほど……」なんとなく理解した。「大混乱が起きますね」

「そういうこと。『隣にいる人間が、もしかしたら爆弾かもしれない。すぐに爆発するかもしれない』と国民は恐怖することになる」


 抱きしめている我が子が、爆発するかもしれない。

 信頼している親が、爆発するかもしれない。

 道ですれ違った人が、爆発するかもしれない。


 そして最愛のあの人が……

 

 そう考えるだけで、恐怖が湧いてくる。安心できる相手と時間なんてなくなって、国民たちは大混乱に陥るだろう。


 だから国としては動けないわけだ。確実に犯人を止められると確信したとき以外は、動けない。


「なるほど……なんとなくわかりました」ひめは話をまとめる。「爆弾人間を作ってる首謀者を、私たちが見つければいいんですね?」

「それが理想だね。でも……本当は見つけなくてもいい」

「……?」

「これはあくまでもなのさ。もしも偶然首謀者を見つけたら、私たちに知らせてくれ。決して無理はしないでいいよ。たとえば……敵のアジトに乗り込んだりとか、そんなことはしなくていい」


 もう国民が死ぬのを見るのは嫌なんだ、とパルパロは憂いの帯びた笑みを見せる。


 どうしてパルパロが、この若さで国王になっているのかはわからない。だけれど……きっと苦労も多いのだろう。おちゃらけているように見えて、真剣なのだろう。


「さて……」パルパロは軽い調子に戻って、「説明は終わり。聞いてくれてありがとうね。そろそろ帰っていいよ。そっちの彼氏さんが……もう眠たそうだからね」

「ごめん……」レイが目をこすって、「ちょっと今日は疲れたから……」


 話の途中で、レイがウトウトしていたのはひめも気がついている。必死で起きていようとしていたようだが、眠気には抗えないようだ。


 レイはお子様なので、10時までには寝ないとポンコツになる。よっぽど怒ってない限り、アホになる。寝ぼけているレイもかわいいので、ひめとしては定期的に夜更かしをしてほしいものだった。


 しかし、もう話題も尽きてしまった。これ以上、王様と会話することもない。


 というわけで、レイたちは自分たちの家に戻ることにした。

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