第13話 王
しばらく廊下を歩いて、
「ここだ」
案内された部屋を見て、驚いた。
応接室に案内されるとばかり思っていたら、
「……やけに豪華な部屋だね……これが応接室?」
「どこだと思う?」
「……」冗談めかして、レイは言う。「1番豪華な部屋に見えるからね……王様の部屋?」
「そうだ」
「えぇ……?」正解してしまった、とばかりに、「……僕たちは、王様に会うの?」
「そういうことになるな」グレイブは自信家な表情をのぞかせて、「安心しろ。キミたちが王に危害を加えるのなら、私が切り捨てる」
「……それは安心だね……」王に危害を加えることはないけれど。「……そんなに、重大なの?」
「……まぁ、それは国王から聞いてくれ」
部屋をノックして、グレイブは言う。
「グレイブです。客人をお連れしました」
「どうぞ~」中から聞こえてきたのは、間の抜けた女性の声。「前から言ってるけど……ノックなんかいらないよ~。適当に開けて入ってきて~」
「……」グレイブは扉に力を込めて、呆れたように、「何度も言いますが……鍵はかけてください。あなたは国王なんですから……」
「はーい」
なんとも変わった国王がいるらしい。グレイブも苦労していそうだ。
ともあれグレイブが扉を開けると、
「おお……」部屋を見て、レイが目を輝かせる。「なにこれ……かわいい……」
部屋の中には、大量のぬいぐるみがあった。地面も壁も見えないほどの量のぬいぐるみ。
そのどれもがフワフワでかわいらしくて、レイの好みである感じだった。
しかも、そのぬいぐるみたちは……
「おやおやぁ……?」そのぬいぐるみたちの山の頂点にいる女性……いや、少女がレイを見て。「キミもいけるタイプ? 気に入ったなら、いくつか持って帰っていいよ~」
「ホント?」レイは近くのウサギのぬいぐるみを手にとって、「じゃあ、これもらってもいい?」
「どうぞどうぞ。ちなみに、なんでそれを選んだの?」
「なんでって……」フワフワした空気が、一瞬にして張り詰めた。「盗聴器が入ってるから?」
そう。この部屋のぬいぐるみは……もれなく仕掛けがある。
盗聴器だけじゃない。おそらく爆弾や魔法……いろいろな仕掛けが施されたぬいぐるみたちだった。
その仕掛けを警戒させないためにぬいぐるみに入れているのだろう。レイには効果がなかったようだが。
「お見事」盗聴器が見抜かれたというのに、少女は悪びれる様子もない。「いやぁ……なかなか気づく人は少ないんだけどね。カンが良い少年だ」
「どうも。とりあえずぬいぐるみはもらうね。緊急時はこれに話しかけたら、つながるんでしょ?」
「そうだよ。うちの魔法隊が受信してるから、良い情報があったら教えてね」
というわけで、ちょっとした駆け引きを終えて、
「とにかく、よく来てくれたね」堂々たる口調の少女だった。「私はオリヴィエの国王やってるパルパロっていう人間さ。フレンドリーにパルって呼んでおくれ」
「王様……」素性を聞いて、レイは、「敬語を使ったほうがいいんだっけ?」
「あー……まぁ、公の場では使ってくれると助かるかな。今はいいよ」
「ありがとう。敬語は苦手で」
「私も~」なんだか似た者同士なのかもしれない。「さてグレイブくん……要件は?」
「はい」グレイブが、「この2人に、例の1件の協力をしてもらおうかと考えております」
「へぇ……」少女――パルパロはレイと
「訓練で、彼と手合わせしました。実力は私とほぼ互角……戦力的には問題ありません」
互角かどうかは不明だけれど。
「ふぅん……戦力的に頼りになるのはわかった。じゃあ、機密保護的には?」
「彼らには信頼がありません」
「ほう……」
「仮に秘密を漏らしたとしても、謎の人物の戯言としてしか捉えられません。それに……おそらく信頼できる人物ですよ」
「なるほど……」パルパロはあっさりと、「いいよ、わかった。グレイブくんが言うのなら、信用する」
どうやらグレイブはかなりの信頼を得ているようだ。
そしてそのグレイブが信頼した人間だから、パルパロも信用する。
部下を信用するというのは、なかなか難しいことだ。だけれど、それが上に立つものに必要な資質。
誰を信用するのか……それを考えるのはとても面倒で難しくて、重要なことなのだ。
まぁ今回の場合は……レイたちの社会的信用が低いというのも理由なんだろうな。
グレイブの言う通り、レイたちがなにか重大な情報を漏らしても、信頼する人は少ないだろう。グレイブさんが「それは嘘だ」と言ったら、そちらが信用される。
だからこそ、レイたちが適任なのかもしれない。簡単に……切り捨てられるだろうし。
「さてお2人さん。お名前は?」
「レイ」
簡潔なレイの自己紹介に続いて、
「
「あ、そうなんだ」別にいらん情報だっただろうな。「じゃあレイとヒメ……これから話すことは、他言無用だよ」
「わかってますよ」レイがちょっと疲れ始めていたので、
「うん……この国を崩壊させる可能性がある、不届き者がいるって話」
想像していたよりも、大きなお願いだったようだ。
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