(一人読み)洋食店店主の開店準備
店主が市の職員と対話します。
年齢不詳、性別不問。一人称変更可。
ぶっきらぼうな雰囲気であれば軽微な口調変更可。
過度な改変はご遠慮下さい。
上演目安時間5~10分前後です。
話の内容をよくご確認の上、
上演や録音の判断をお願いします。
---------お話はここから---------
-S区K町四丁目十三番地地下五階
「いらっしゃいませ、洋食店「ピンキーメルルーサ」へようこそ
お客さん、うちの営業時間は十七時からだよ。申し訳ないが出直してくれ。
ん?…あんた区役所の人間か…区の職員さんが何の用だ?…」
「区のグルメマップサイトに載せる店の取材…なるほど…うちは食材は、超一級品しか使わないし、味には絶対の自信を持って店を開けているが、
そのグルメサイトに載ることで常連さんがうちへ来づらくなっちゃうと困るんだよな…
ということだから、取材は断るよ…せっかく来てもらったのに悪いな」
「…ん?どんな料理が出されてるか個人的に気になる…と、まあ、今日の仕込みは終わってるし店の清掃も終えてるから少しなら話してもいいか…」
「立ち話もなんだから店内へ入ってくれ」
-店内へ
「いいにおいがするから腹が減る、健康的な人間の感覚だ
最近の飲食業界は菜食主義を訴えているが、やはり「肉」に勝るタンパク源は無いと思うんだよな」
「世の中が世界食糧危機に入ってから数年経って哺乳類である人間が同じ哺乳類の「肉」を食べることに関して野蛮とか言い出すコメンテーターとかもでてきたりして…」
あんたら世界食糧危機以前から牛や豚、鶏とかの「肉」を食べたことないのか?って…あんたもそう思わないか?」
「それに「肉」そのものを食べないにしてもコンソメとか調味料に入ってたりするし、完全に「肉」を食から排除するなんて相当な神経を使うし、何よりも膨大なコストがかかる」
「個人の食の嗜好にケチをつける訳じゃないが、「肉」をメインにしてるうちの料理食べてから菜食主義を決め込むかどうか、選んで欲しいもんだ」
-首を傾げる職員
「あー、初対面なのに愚痴もらしてごめんよ」
「話に付き合ってもらったし、賄いとしてしか出さない料理だすよ
この部位の「肉」はうちのお客さんには出せないが、独特の旨味がある」
「店主特権ってやつだ、この部位は雑菌が多いが、滅菌処理をしてしまえば食感が癖になる賄いに早変わりだ
家に持ち帰ると家族に冷蔵庫へ入れるなって怒られるんだよ…うまいのにな」
「この部位は両手両足についてて一体から二十本も堪能出来る」
「ん?これ「指」じゃないかって?
ああ、この部位は「指」だよ
ちょっとあんた、食べ物粗末にするなよ
これだから素人は…真の美食を
追い求めない、つまらない人間…」
「あんた、一回眠ろうか」
-間
「目が覚めたか」
「痛みを感じないのは打つサプリメント?とかいう食品のお陰らしい
ってか、あんた!首だけで意識があるうえに会話まで出来るとはな…
ははは!!(笑)最高だよ!!
さっきの賄い、細かく刻んだから食ってみろ
あんたも「肉」の味を知ると前の食生活には戻れなくなるだろうな」
-賄いを飲み込む職員
「まあ、前の食生活どころかあんたの生活はもう時期終わる…首だけで生きてる人間なんて、この時代じゃあ…まだいない」
「遠い未来を自分の目で見たい、とかいう金持ちが科学者共に金を積んで首だけを凍結させてる国も一部あるが…
未来まで凍結したままの首が無事かどうかも分からねえよな」
「そもそも大日本帝国では違法だから、いくら金持っててもそいつは出来ねえ」
「あ、もう目が見えるのは嫌だよな?眼球、外してやるよ」
-間
「外した眼球を縦にこうやって切って
…ついやっちまうんだよな
お客さんに出す前に味見ってことで…うちの人気メニューのひとつ、レッドアイは最高だ」
-電話が鳴る
「予約の電話か、うちのお客さんは美食家しかいないからな
なんだかんだであと三十分で開店か、今日も最高の美食を届けるよ」
-完-
S区K町4丁目13番地地下街 ねこやま @nekoyama0312
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