第12話 運動会本番2


 今、運動会開催の宣言があったらしいけど、聞いてなかった。まぁ、開催された時の花火が上がったので、問題ないだろう。


 でも、花火がイベントであるなんて、この学校すごいなぁ。普通の学校ではできないから。


 ここ、桜緑花おうりょくか高校は、広島に建っている私立の学校。


 しかし、何がすごいかって、ここの生徒は招待制なのだ。つまり、無受験で入れる高校。最初は、そんな学校あるのかなくらいだったけれど、実在したから何も言えないよね。


 でも、この学校に呼ばれる人は、本当に一体感がない。だから、ランダムで選ばれるのかもしれない。


 でも、何らかの線引きはしているようで、その線引きを守っている。そんな印象を受けた。


 後、この学校特有の行事もある。この行事は何なのかまだ分からない。だって、先輩達と接する機会が極端に少ないのだ。


 とにかく、最初に準備体操をする。賢くんはどうか分からないけど、鈴ちゃん大丈夫かなぁ。小学生の時、ラジオ体操第1だけで、腕とか足つっている事日常茶飯事だったから。


 多分、賢くんこの様子見たら、驚くんじゃないかなぁ。一応、事前に見れば良かったかなと思っていたら、ゴキっとすごい音が、後ろの方から聞こえた。


 私はまさかと思って恐る恐る振り返ると、音の正体であろう、フリーズした鈴ちゃんがいた。鈴ちゃんと目が合って数秒後。鈴ちゃんは、横向きに倒れた。


 もちろん、先生達は驚いていた。だって、まさか準備体操でこんな事になるなんて思わないはず。私も鈴ちゃんのゴキっの音を聞くまで、先生側だった。


 でも、まごうことなく見てしまったよね。これは、鈴ちゃんは言い訳できません。


 仕方がないから、鈴ちゃんは救急車で病院に運ばれた。先生がどんなに必死にありのままを話しても、救急隊員は納得してくれない。


 そりゃそうだよね。「生徒が準備体操したら聞こえちゃいけない骨の折れたような音が出ました。病院に連れてってください」って、連絡あったら、まともに取り合わないかもしれない。


 とにかく、電話で話が平行線になりながら15分。ようやく、救急隊員が動き出した。先生、根比べ強すぎでしょ。


 まぁ、そんな事もありながら、無事(?)競技が始まりました。最初は、サッカー。突如としてサッカーはおかしくない?と抗議が1部であったけど、これが桜緑花学校クオリティ。


 しばらく、観戦していたら、ボールが観客の方に飛んでいって、その先にいたのは、くるみちゃんだった。



「くるみちゃん、危ない!」


「えぇ?」


 ゴンッ


「おい、2人目の聞こえちゃいけない音聞こえたぞ!」


「これ以上犠牲が出る前に早く帰りてぇよ……」


「お前ら、やじ飛ばしている暇あったら、担架もってこい!」


「あー、痛かった!」


「「「「え?」」」」


「ごめんね。私が倒れたせいでゲーム途切れちゃったでしょ?続けていいよー」


「「「お、おう……」」」


「いや、あなた、大丈夫なの?思いっきり、聞こえちゃいけない音だったけれど。本当に何も無いの?」


「うん!バッチリ大丈夫!さ、ゲーム続けていいよー」



 と、ここで餡子先生がやってきた。



「藤堂、念の為に保健室行くぞ。ちょっと休んだらどうだ」


「あの、じゃあ、私ついて行きます……」


「えっと、確か……」


「1年3組の神崎くるみです」


「じゃあ、神崎さん、付き添い任せた。名前が出てこなかったのはうちのクラスもまだ覚えきっていないから、すまんな」


「わかりました」



 こうして、私はくるみちゃんと一緒に保健室に行く事になった。解せぬ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る