第10話 墨田桜と藤堂花澄(side桜)


私達は、5月に入ってから運動会の練習があった。その練習で1年3組の神崎くるみが藤堂さんに絡んでいる様子を見た。


藤堂さんは、特に困った様子を見せていなかったけれど、藤堂さんと一緒に喋っていたメンツはげんなりしていた。


助けに行きたいけれど、助けるための材料ないから、どうしたものか。そう考えていると藤堂さんは、神崎さんに火に油を注ぐような行為をした。


もちろん、神崎さんは怒った。さすがに助けないとと思ったら、3組の先生が呼んでいる。


チャンスだと思い、藤堂さん達の所に行く。そして、神崎さんに「3組の先生が呼んでいた」と伝えた。


それで、神崎さんは去っていったけれど、神崎さんは、私を睨んでいた。


それはその反応するだろうなって思った。しかし、藤堂さん以外は助かったと言う顔をしていた。けれど、藤堂さんはもっと話したかったという顔をしていた。


私は、藤堂さんの危機感の無さに、思わず有村さんに小声で大丈夫かと聞いた。


そしたら、大丈夫じゃないかもと返事が返ってきた。有村さんは、私より藤堂さんと付き合いが長いから、有村さんが大丈夫じゃないと判断したなら、大丈夫じゃないと思う。


私と藤堂さんが関わるようになったのは、藤堂さんが私の名前を聞いてからだった。


その時、私達は委員の雰囲気をつかみつつある時だった。しかし、私はその時まで誰にも名前を言っていなかった。


まぁ、よくも悪くも印象が薄いんだと思った。その頃の私は委員長としては良かったけれど、友達なんていなかった。話し相手もいなかったから、寂しいと思っていた。


そんな感じに思っていた頃、藤堂さんが話しかけてきた。最初は、「墨田さんって、中学校どこ出身なの?」から始まって、だんだん話すようになってきた。


藤堂さんは1日1回は話しかけに来てくれるので、楽しみができた。そんな日が続いた頃名前を聞かれた。



「墨田さんって、名前なんて言うの?自己紹介の時に墨田って言っていたから分からないんだよね」


「私の名前?そういえば、言っていなかったわね。桜よ」


「桜よ?」


「桜までよ」


「桜ちゃんかぁ……。すっごく可愛い名前だね!」



私は、桜という名前が好きだったけれど、その名前が良かったらしい女子に恨まれた。


生まれたばかりの名前なんて、親がつけたくてつけるから、その名前になれない時もある。けれど、女子生徒は、八つ当たりと言わんばかりに、私に嫌がらせをしてきた。



「墨桜、桜は綺麗な花だよ?あんたみたいな人の名前に、合わないんだよ!」



その一言が原因で広島の学校に来たし、高校では、仲良くなっても言うのか分からなかった。


しかし、藤堂さんのおかげで自分の名前が好きになれた。さらに、藤堂さんは、嬉しい事まで言ってくれた。



「墨田川の桜が綺麗なように、桜ちゃんも綺麗な大人になるんだろうな。まさに、名前に恥じていないって感じ!」


「そうかな……?」


「そうだよ!もっと自信持とうよ!」



藤堂さんがあまりに力強く説得するので、私は藤堂さんを守ろうと思った。藤堂花澄を1人の友人として、敬意を払う。

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